*16:21JST ダイナムジャパンHD Research Memo(1):スマスロの導入を起爆剤として収益は再成長軌道に入る ■要約

ダイナムジャパンホールディングスは、店舗数で国内第1位の日本最大級のパチンコホール運営企業である。チェーンストア理論に基づいて練り上げられてきたローコストオペレーションに強みと特長がある。ビジョンとして「地域のインフラとしてパチンコを誰もが気軽に楽しめる“日常の娯楽”に改革する」ことを掲げている。顧客第一主義や情報開示、コンプライアンス経営の徹底など質の高い経営を実践し、業界初の株式上場を果たしたパイオニア企業でもある。

1. 2023年3月期は2期連続で増収、EBITDAも増加が続く
2023年3月期決算は、営業収入で前期比11.5%増の117,206百万円と2期連続の増収を確保した。新型コロナウイルス感染症の感染拡大(以下、コロナ禍)と沈静化が繰り返されるなか、感染対策を徹底したホール運営により来店客数も緩やかながら回復に向かい、また2022年11月に導入されたスマートスロット(以下、スマスロ)で人気機種が生まれたことも増収要因となった。営業利益は遊技機の減価償却負担増(同16,057百万円増)並びに水道光熱費の増加(同2,169百万円増)が響いて同36.5%減の6,764百万円と減益となった。ただし、本来の収益力を表すEBITDA※は同35.0%増の43,729百万円と2期連続の増加となり、コロナ禍による逆風を受けながらも回復に転じてきたことが窺がえる。なお、グループ店舗数は前期末比4店舗減の429店舗となった。

※EBITDA=当期利益+税金+金融費用+減価償却費(使用権資産償却費除く)+為替差損益


2. 2024年3月期の事業方針
2024年3月期は、集客力の高いスマート遊技機を積極的に導入し、新規顧客層の開拓を進めることで増収増益を目指す方針だ。スマスロに続いてスマートパチンコ(以下、スマパチ)の導入も4月より開始されたが、従来のパチンコ機と集客面で大きな変化は出ていない。このため、当面はスマスロの導入を重点的に進める方針である。全体の遊技機購入費用は中古機の有効活用を図ることで前期比10~15%程度絞り込む予定で、遊技機の減価償却費も2024年3月期上期がピークとなる見通しだ。水道光熱費の増加が続くものの、業務標準化による経費抑制で吸収していく。また、新規出店やM&Aにより店舗数も拡大する計画となっている。

3. パチンコ事業の成長戦略
パチンコ事業の成長戦略として、スマート遊技機への投資による収入増加、既存店の大規模リニューアルを通じた新規顧客開拓、社内中古機の戦略的活用によるコスト適正化、新たな出店形態の確立の4点に取り組み、成長軌道への復帰を目指す。新たな出店形態では、建築コストが高止まりするなかで居抜き物件の取得やM&Aによる取得、スマート遊技機の特性を生かした新業態の開発等の検討を進める。コロナ禍以降、遊技機業界では経営体力のない中小ホールを中心に年間800~900店舗のペースで閉店が続いており、今後もスマート遊技機の普及によって大手企業への集約が一段と進むものと予想される。同社にとってはシェア拡大によりパチンコ事業を再成長軌道に乗せる好機になると見られ、償却負担がピークアウトする2024年3月期下期以降は営業利益ベースでも力強い回復が期待できるものと弊社では見ている。

■Key Points
・2023年3月期は償却負担増で営業減益となるも営業収入とEBITDAは2期連続で増加
・スマート遊技機の積極導入で営業収入を拡大し、守りから攻めに転じる
・スマート遊技機の登場を契機に大手による寡占化が一段と進行、シェア拡大の好機に

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 ダイナムジャパンHD Research Memo(1):スマスロの導入を起爆剤として収益は再成長軌道に入る