■賃貸開発事業

1. 事業概要
賃貸開発事業は、首都圏を中心に用地取得から中小規模賃貸マンションの企画・建築・販売を行っており、期間としては1年半から2年程度の中期プロジェクトである。プロパスト<3236>は首都圏エリアを中心とした立地かつ最寄駅から徒歩10分圏内のマンション用地を取得し、40~50坪程度の土地に1棟15~25戸程度の中規模かつ中低層の賃貸マンションを建設する。そして、利便性の高い物件を一時的に自社保有し、同社のネットワークを駆使して空室率を最小限に抑制するとともに、優良なテナント付けを行うなかで賃貸業務を行っている。その後は外部環境を勘案しながら、売却時期を検討する。売却価格は、1棟で5~15億円程度を目標としているが、最近は15億円以上の大規模物件も売れており、都心の資産価値が高い優良物件に特化した戦略が奏功しているようだ。

賃貸開発事業の2022年5月期の売上高は11,533百万円(前期比16.2%減)、営業利益は2,461百万円(同9.2%増)と減収増益となった。前期に複数の大型物件を販売した反動に加え、物件売却が順調に進んだことにより保有する竣工済物件数も限られたため売却物件数が減少し、減収となった。一方で、売却物件の商品企画や地域優位性が評価されたことなどから収益性がさらに向上したことで、増益となった。売上高で会社全体の65.2%、営業利益でも77.2%を占め、引き続き同社の稼ぎ頭となっている。また、営業利益率も21.3%の高水準で、同社の中では最も収益性が高い事業でもある。

売却先は海外投資家や、相続税対策として銀行借入によって物件を購入する首都圏及び地方の個人投資家層が多い。また、企業の社宅ニーズも増えており、最近はファンドによる購入も増えている。2021年5月期からは大株主シノケングループのREITが加わり、今後も安定的な売却先として期待される。最近の円安に伴い、コロナ禍により活動を停止していた海外投資家への売却が増える期待もある。これら種々の投資家ニーズにマッチする物件を供給していることが、賃貸開発事業が好調の理由と言えるだろう。

2. 特長
分譲開発事業などで培った同社のデザイン力を生かし、コストを抑制しながら、ハイセンスな賃貸マンションを建築することで、最終的には投資家やファンド向けに売却を行う。小規模かつ中低層物件に特化することで、物件取得時以降の外部環境の変化や建築費用の上昇等の変動要因の影響を抑制する。

コンセプト重視の分譲開発事業とは違い、賃貸開発事業ではパターン化を行うことで低コストを実現している。外壁をコンクリートの打ちっぱなしにするなど、デザイン性を損なわない工夫もしている。「グランジット」シリーズは6階以上の物件でエレベーターが付くが、「コンポジット」シリーズは5階以下の物件でエレベーターはなく、初期投資を少なくできる。また、分譲開発事業と同じく、ローンが付きやすいRC造にこだわって展開している。比較的近年にスタートした事業ではあるが、戦略的に重要な位置付けとなっている。視覚的に訴求するような資料を作成し提案に使用しているが、建物や部屋のデザイン性を強調しながら、立地の良さや利回りも明記しており、仲介会社からも評判が良いと言う。

3. 実績例
賃貸開発事業の最近の主な実績例は以下のとおりである。
(1) コンポジット白金高輪(東京都港区白金、2022年7月竣工)
(2) コンポジット南雪谷(東京都大田区南雪谷、2022年6月竣工)
(3) グランジット千代田秋葉原(東京都千代田区神田佐久間町、2022年3月竣工)
(4) コンポジット上野毛通り(東京都世田谷区上野毛、2022年2月竣工)
(5) グランジット両国ノース(東京都墨田区本所、2022年2月竣工)
(6) グランジット早稲田(東京都新宿区早稲田町、2022年1月竣工)
(7) グランジット白金高輪(東京都港区白金、2021年12月竣工)
(8) GRAN PASEO日本橋箱崎町(東京都中央区日本橋箱崎町、2021年12月竣工)
(9) グランジット三ノ輪(東京都台東区三ノ輪、2021年11月竣工)
(10) GRAN PASEO両国(東京都墨田区両国、2021年11月竣工)

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 プロパスト Research Memo(4):パターン化でデザイン性と低コストを両立