■賃貸開発事業

1. 事業概要
賃貸開発事業は、首都圏を中心に用地取得から中小規模賃貸マンションの企画・建築・販売を行っており、期間としては1年半から2年程度の中期プロジェクトである。プロパスト<3236>は利便性の高い物件を一時的に自社保有し、同社のネットワークを駆使して空室率を最小限に抑制するとともに、優良なテナント付けを行うなかで賃貸業務を行っている。その後は外部環境を勘案しながら、売却時期を検討する。首都圏エリアを中心とした立地で、かつ最寄り駅から徒歩10分圏内のマンション用地を取得し、40~50坪程度の小さな土地を中心に、1棟15戸~25戸程度の中小規模かつ中低層物件をねらう。売却価格は、1棟で5~15億円程度を目標としているが、最近は15億円以上の大規模物件も売れており、都心の資産価値が高い優良物件に特化した戦略が奏功しているようだ。

賃貸開発事業の2021年5月期第2四半期累計の売上高は6,253百万円(前年同期比39.7%減)、営業利益は1,387百万円(同28.2%減)と減収減益となった。前年同期の実績が上期に偏重して高かったための反動減である。ただ、引き続き同事業は、売上高では会社全体の58.8%、営業利益でも74.1%を占める同社の稼ぎ頭となっている。また、営業利益率も22.2%の高水準を維持し、同社の中では最も収益性が高い事業でもある。

売却先は従来より海外投資家(コロナ禍により現在は活動停止中)や、相続税対策として銀行借入によって物件を購入する個人投資家層が多く、企業の社宅ニーズも増えており、最近はファンドによる購入も増えている。さらに、2021年5月期からは大株主シノケングループのREITが加わり、今後も安定的な売却先として期待される。これら種々の投資家ニーズにマッチする物件を供給していることが、賃貸開発事業が好調の理由と言えるだろう。

2. 特長
分譲開発事業などで培った同社のデザイン力を生かし、コストを抑制しながら、ハイセンスな賃貸マンションを建築することで、最終的には投資家やファンド向けに売却を行う。小規模かつ中低層物件に特化することで、物件取得時以降の外部環境の変化や建築費用の上昇等の変動要因の影響を抑制する。

徹底的なコンセプト重視の分譲開発事業とは違い、賃貸開発事業ではパターン化を行うことで、外壁をコンクリートの打ちっぱなしにするなど、デザイン性を損なうことなく低コストを実現している。「グランジット」シリーズは6階以上の物件でエレベーターが付くが、「コンポジット」シリーズは5階以下の物件でエレベーターはなく、初期投資を少なくできる。また、分譲開発事業と同じく、ローンが付きやすいRC造にこだわって展開している。比較的近年にスタートした事業ではあるが、戦略的に重要な位置付けとなっている。視覚的に訴求するような資料を作成し、建物や部屋のデザイン性を強調しながら、立地の良さや利回りを明記し提案に使用しており、仲介会社からも評判が良いと言う。

3. 実績例
賃貸開発事業の最近の主な実績例は以下のとおりである。
(1) グランジット白金高輪(東京都港区白金、2021年12月竣工)
(2) GRAN PASEO日本橋箱崎町(東京都中央区日本橋箱崎町、2021年12月竣工)
(3) グランジット三ノ輪(東京都台東区三ノ輪、2021年11月竣工)
(4) GRAN PASEO両国(東京都墨田区両国、2021年11月竣工)
(5) Harmony Gracia駒込(東京都豊島区駒込、2021年10月竣工)
(6) グランジット浅草吾妻橋(東京都墨田区東駒形、2021年9月竣工)
(7) Harmony Gracia住吉(東京都江東区扇橋、2021年9月竣工)
(8) Harmony Gracia蒲田(東京都大田区西蒲田、2021年9月竣工)
(9) ACCESS IKEBUKURO(東京都豊島区西池袋、2021年6月竣工)
(10) コンポジット王子(東京都北区王子、2021年5月竣工)

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 プロパスト Research Memo(4):パターン化でデザイン性と低コストを両立