■中長期の成長戦略

1. withコロナ時代に適応する施策
日本国内で新型コロナウイルス感染症が拡大し始めてから約半年が経過した。不動産賃貸仲介業界においては、3月~5月にかけて転居の需要が落ち込んだものの6月以降は回復基調にある。ハウスコム<3275>では、withコロナ時代が当面続くことが想定されるなか、直面するニーズや要請に対して順次対策を打ってきた。顧客の「非対面で部屋探しや契約をしたい」というニーズに対しては、前述の「オンラインお部屋探し」を提案しており、過去のノウハウの蓄積も手伝って業界をリードする存在となっている。今後は契約更新の電子化も強化する方針だ。これからは「先延ばしにしていた転居」や「テレワーク等による新しい働き方を前提にした居住空間への転居」の本格化が予想される。対策として、既存店舗での提案力を磨くとともに、需要が拡大する立地への新規出店も積極的に行う方針だ。同社は従業員を大切にする企業としても評価されている。「安心・安全な環境で働きたい」という従業員のニーズに対し、各店舗・オフィスにおける感染防止対策の徹底とともにテレワーク・時差出勤・時短勤務などの労務環境面の工夫を行っている。経営面では、「需要抑制期における効率的な事業運営の工夫」が必要となる。同社では、「広告宣伝の内容や費用の見直し」などでコストダウンを行うのに加え、オーナー向けの新規商品の導入などにより「収入源の多様化」を推進する。withコロナ時代にいち早く適応することで、需要の回復の流れをがっちりつかみたい考えだ。

2. 新管理サービス「ハウスコム スマートシステム」をスタート
同社は2020年7月、入居者(賃借人)とオーナー(賃貸人)の双方を部屋単位で一括サポートする新サービス「ハウスコム スマートシステム」の提供を開始した。このサービスによって、入居者・オーナーとも、個別で契約する場合に必要となる煩雑な手続きが一度で済み、かつ全体の費用も抑えることができる。具体的には、入居者は保証人が不要となり、24時間コールセンターや緊急駆けつけサービスが利用できる。月額利用料は税込550円。オーナーは、滞納保証や原状回復費用保証、孤独死保険、早期解約違反の違約金等保証など様々なサービスがあり、月額管理料は税込1,100円。既に1,000部屋以上の登録があり、好調に滑り出した。オーナー向けのサービスの多様化の進展の一環としても注目したい。

3. リフォーム事業の拡大
2016年3月期から本格的にスタートしたリフォーム事業は、6期目を迎え成長を続けている。営業所は船橋や川口を皮切りに全国7営業所体制。2020年3月期通期の営業収益は、前期比45.5%増の1,343百万円、セグメント利益は166百万円となった。元々「大家さんへのお役立ち」を主目的として開始したサービスではあるが、案件が増えるにつれメニューも増え、運営も効率化された。全社営業収益の10%を超え、既に黒字化している。2019年7月には、ビルや住宅の内外装を手掛けるエスケイビル建材を連結子会社化した。相乗効果により同社リフォーム事業をさらに強化することが目的である。特にエスケイビル建材は、商業・オフィスビルの内外装や大きめのリフォーム(500万円以上の案件)が得意分野である。エスケイビル建材をグループに加えたことで、これまで主体であった“空室を埋めるための軽微なリフォーム”に加え、“資産価値を大幅に高めるための本格リフォーム”を増やす戦略を推進する。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 ハウスコム Research Memo(8):新管理サービス「ハウスコム スマートシステム」をスタート