■業績動向

1. 2020年3月期通期業績概要
EMシステムズ<4820>の2020年3月期通期業績は、売上高14,023百万円(前期比6.8%増)、営業利益1,583百万円(同39.6%減)、経常利益2,179百万円(同32.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,393百万円(同29.3%減)となり、期初の計画通り増収減益の決算となった。期初予想からは、売上高で6.4%増、営業利益で16.5%増と、上回る結果となった。

売上高が好調に推移したのは、介護サービス事業者向けのシステム事業の拡大及び消費税増税やWindows7のサポート終了によるハードリプレイスの駆け込み需要の影響が大きかった。また、調剤システム、医科システム、介護/福祉システムともに課金売上が順調に増加した。営業利益に関しては、当初からの戦略通りハードウェア提供方法の変更に伴う粗利の減少、介護事業の販管費の増加などにより減益となった。

2. 事業別概要
(1) 調剤システム事業及びその関連事業
調剤システム事業及びその関連事業は、売上高は10,823百万円(前期比3.3%増)、営業利益は1,667百万円(同30.2%減)と増収減益となった。ハードウェアの保守をメーカー保守に切り替えることに伴う原価の増加による粗利の減少が営業減益の要因である。サービス別に見ると、初期売上4,149百万円(同5.3%増)、課金売上4,004百万円(同2.9%増)、サプライ売上1,985百万円(同3.5%減)、保守売上683百万円(同16.8%増)とサプライ売上以外は前期を上回った。初期売上は、ハードウェア提供方法変更による初期費用の減少が予想されたが、消費税増税などに起因する駆け込み需要や大手チェ—ン店獲得による販売件数の増加により増収となった。

(2) 医科システム事業及びその関連事業
医科システム事業及びその関連事業は、売上高1,881百万円(前期比10.4%増)、営業利益161百万円(同32.7%減)と増収減益となった。サービス別に見ると、初期売上929百万円(同16.2%増)、課金売上565百万円(同16.5%増)、サプライ売上93百万円(同4.4%減)、保守売上292百万円(同8.7%減)である。MRNの新規導入、他社リプレイスによる顧客数の着実な増加により、課金売上が順調に伸びている。

(3) 介護/福祉システム事業
介護/福祉システム事業は、売上高497百万円(前期比482.1%増)、営業損失348百万円(前期は129百万円の損失)となった。2社のM&Aを行ったことで積極的な事業戦略の展開が可能となった。サービス別に見ると、初期売上65百万円、課金売上62百万円、サプライ売上0百万円、保守売上368百万円となっている。現在は保守売上が中心だが、新規顧客が増加するに従い、課金売上が増加することが見込まれる。


現金及び預金は87億円と余裕あり。無借金経営に近く極めて高い財務の安全性

3. 財務状況と経営指標
2020年3月期末における総資産は前期末比1,055百万円増の23,451百万円となり資産規模が拡大した。そのうち流動資産は同626百万円増の11,556百万円であり、現金及び預金の増加が主な要因である。固定資産は、同429百万円増の11,894百万円であり、無形固定資産(ソフトウェア)の増加が主な要因である。クリニック向け診察支援システム「MAPs for CLINIC」の本稼働に伴いソフトウェアが増加した。現金及び預金の残高は同1,283百万円増の8,770百万円であり余裕がある。

負債合計は前期末比1百万円減の5,775百万円。そのうち流動負債は同150百万円増の3,816百万円であり、保守サービスに係る前受収益等が増加したことにより「その他流動負債」が同482百万円増加したことが主な要因である。固定負債は同152百万円減の1,959百万円であり、製品保証引当金の減少が主な要因である。純資産は、同1,057百万円増の17,676百万円であり、堅調な業績により利益剰余金が増加したことが主な要因である。

経営指標について見ると、自己資本比率が75.0%と非常に高く、中長期的な財務の安全性は高く評価できる。有利子負債残高は34百万円であり、有利子負債比率は0.2%と極めて低く、ほぼ無借金経営である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 EMシステムズ Research Memo(6):2020年3月期増収。ハードウェア提供方法変更による粗利減少は計画通り