■業績動向

1. 収益構造
Kudan<4425>の収益は、顧客が「KudanSLAM」を研究開発目的で利用する開発ライセンスと、顧客の製品が市場投入された後の販売ライセンスから構成される。現状中心となっているのが開発ライセンスによる収益で、契約締結後のアルゴリズムの引渡しを起点に開始され、引渡時にライセンスにかかる収益を一時に認識する方法や、技術進化のマイルストーン達成に合わせて認識する方法などがある。中長期的には幅広い産業での応用と普及を見込んでおり、顧客数が年30%で増加、その顧客の30%程度が製品化へ進むと期待されている。


戦略どおり進捗も新型コロナウイルスが影響

2. 2020年3月期の業績動向
2020年3月期業績は、売上高456百万円(前期比21.3%増)、営業利益9百万円(同92.4%減)、経常損失12百万円(前期は103百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失29百万円(前期は103百万円の利益)となった。事業開発やプロダクト開発の人員を増強したことで、多数のプロジェクトを積極的に推進するようになった一方、ロボティクス事業や低速モビリティなどへと同社技術の活用範囲も広がった。また、機能拡充やプロダクトパッケージ化を進めたことで、新たなセクターの開拓・拡大が進んだ。さらに、先端的な事業開発へ向けて長期案件の取得を目指したことで、受注から納品までの期間が長期にわたる大型契約が増加、ライセンスフィーのほかマイルストーン収益をベースにした取引も増加した。このように販売チャンネルや技術ラインナップの拡大を背景に、開発案件は件数・金額ともに着実に増加した。

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響によって人々の往来がストップしたため、中国での実証実験をにらんだ技術開発を始め世界中でプロジェクトの縮小や延期が相次いで発生することとなった。一方で、グローバル規模での体制構築・強化に伴い、人件費を中心に販管費が売上高の伸びを上回って前期比76.0%増と増加した。さらに、新型コロナウイルスの影響により、ポンド・ユーロ安に起因する為替差損18百万円、国内の業務資本提携先への投資有価証券評価損15百万円も発生した。同社技術の浸透や取引の順調な拡大は想定どおり進展したものの、国境の枠組みを超えて技術展開を行う同社にとって、新型コロナウイルスが少なくとも短期的に不利になったことは否めず、売上高で193百万円、営業利益で203百万円、経常利益で225百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で242百万円の未達となった。


新型コロナウィルスの影響で利益予想は未定

3. 2021年3月期の業績見通し
2021年3月期については、2020年3月期に獲得した複数の長期案件の継続に加え、半導体メーカーや技術商社・インテグレータを含む国内外の先端テクノロジー企業との提携や、LiDAR SLAMの市場提供開始による技術ラインナップ拡大の効果などにより、グローバルで新規案件の増加を見込んでいる。また、Artisenseとは子会社化に先立ち、国内外での共同事業開発や次世代アルゴリズム開発のための技術連携を推進する。米国子会社Kudan USA, LLCでは、事業開発人員の更なる増強により米国内LiDARメーカー・半導体メーカー・ロボットメーカーの開拓を進めるとともに、西海岸に集積する先端テクノロジー企業の研究所やスタートアップなどとパートナシップを組み、北米での事業開発を推進する方針である。

しかしながら、2021年3月期業績予想について同社は、新型コロナウイルスによる感染症の拡大により、遅延・中止となったプロジェクトだけでなく、継続案件の今後の進捗やグローバルでの新規案件の獲得に不確実性が生じていることから、売上高を465百万円~675百万円(前期比1.9%増~47.9%増)と幅を持って予想している。一方、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益については現時点で、新型コロナウイルスが事業開発など今後のコストに与える影響が読めない上、中国や米国、欧州において拠点拡大や新規採用などを機動的かつ柔軟に実行するプランが複数あるため、具体的な金額予想を開示しない方針とした。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 Kudan Research Memo(7):「KudanSLAM」のソフトウェアライセンスフィーが収益源