■業績動向

1. 2019年12月期第2四半期累計業績の概要
アンジェス<4563>の2019年12月期第2四半期累計の事業収益は前年同期比1.9%減の172百万円、営業損失は1,709百万円(前年同期は1,205百万円の損失)、経常損失は1,733百万円(同1,206百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失は1,973百万円(同1,147百万円の損失)となった。

事業収益は、ムコ多糖症6型治療薬「ナグラザイム®」の売上が前年同期比3.4%減の170百万円となったほか、研究開発事業収益2百万円(前年同期は無し)を計上した。事業費用では、売上原価が「ナグラザイム®」の販売減に伴い同3.0%減となった一方で、研究開発費が同40.6%増の1,130百万円、金額で326百万円の増加となった。前渡金として計上していた外注費が219百万円増加したほか、原材料の評価替等に伴い研究用材料費が113百万円増加した。なお、研究所機能を移転したことに伴う人員減少により給料手当は21百万円減少した。販管費は同36.0%増の668百万円、金額で176百万円の増加となった。主にHGF遺伝子治療用製品の販売に向けた準備費用の発生や新規事業へのコンサルタント契約に伴い、支払手数料が62百万円増加したほか、ストック・オプションの付与により株式報酬が53百万円増加した。

この結果、営業損失は前年同期比で504百万円拡大した。また、営業外収支がやや悪化しているが、これは新株予約権の行使により株式交付費が24百万円増加したこと等が要因となっている。また、特別損失として投資有価証券評価損243百万円を計上している。

なお、同社は2019年3月にイスラエルを拠点とする米国のバイオベンチャー、Emendoへの投資を実施している。Emendoはゲノム編集を安全かつ高精度に行う技術を開発しており、武田薬品工業も2019年4月に同技術に関してEmendoとライセンスオプション契約を締結したことを発表している。同社がEmendoに投資した目的は、Emendoの最先端のゲノム編集技術を活用することで、今後の遺伝子治療薬開発において優位性を確保し、更なるパイプラインの拡充につなげていくことにあり、「次世代型」キメラデコイの開発においても活用できるかどうかを含めて検討を進める予定だ。

2. 2019年12月期の業績見通し
2019年12月期の事業収益は前期比45.1%減の335百万円、営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失についてはいずれも2,800百万円と期初計画を据え置いた。事業収益については前期に計上した研究開発事業収入227百万円がなくなるほか、第3四半期以降は「ナグラザイム®」の売上も無くなること(前下期の売上は206百万円)が減収要因となる。一方で、国内でHGF遺伝子治療用製品の販売が開始されれば、田辺三菱製薬からのマイルストーン収入及び販売ロイヤリティ収入が計上されることになる。

事業費用については、HGF遺伝子治療用製品の国内における市販後調査にかかる費用等の発生により販管費が前期比で増加するものの、研究開発費が前期の2,539百万円から減少する見込みとなっており、営業損失は前期比で265百万円縮小する見通し。

なお、戦略的事業提携先である米Vicalが2019年9月に皮膚科領域の治療薬を開発する米Brickell Biotech(以下、Brickell)(未上場)に吸収合併されることになり、Vicalの既存株主は合併後にBrickellの株式を保有する格好となる。同社はVicalの株式を205.8万株(8月12日株価0.8ドル)保有しており、今後も継続して保有するかどうかは慎重に検討していくとしている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 アンジェス Research Memo(5):2019年12月期は研究開発費の減少により、営業損失縮小を見込む