■今後の見通し

2. 中期経営計画と長期目標
早稲田アカデミー<4718>は2020年3月期を最終年度とする中期経営計画で、当期間を将来の成長を実現していくための事業基盤を構築する期間と位置付け、「既存事業の強化」「新規事業の創出・発展」「グループシナジーの強化」の3点を重点課題として取り組んできた。当初の経営数値目標(売上高242億円、経常利益21億円)に対する進捗について見ると、売上高はM&Aを実施したこともあり目標を上回る可能性が高くなったが、経常利益についてはやや未達となりそうだ。池袋本社の移転費用や働き方改革に対応した社員の処遇改善等、運送コストの上昇などが要因だが、これら要因を除けばおおむね順調に進捗していると言える。

また、長期目標として「2028年に難関中学・高校・大学受験の進学塾として、すべての指標でNo.1を実現する」ことを掲げており、2024年以降校舎展開を積極化し、収益成長を加速していく構想を描いている。このため、引き続き「既存事業の強化」「新規事業の創出・発展」「グループシナジーの強化」の3つの戦略に取り組んでいく。

(1) 既存事業の強化
既存事業の強化施策としては「人材採用・育成強化」「指導ツール・指導システムの改善」「合格実績の飛躍的伸長」「業務効率の改善・働き方改革の推進」「コーポレートガバナンスの強化」の5つをテーマに取り組んでいる。

特に、人材採用・育成については2017年4月に人材開発部を新設し、非常勤職員(アルバイト講師等)の採用及び研修を同部門で一括して行うようになったことで、従来よりも採用状況が改善するなどの効果が出始めている。卒塾生採用プロジェクトやアルバイト紹介制度等の取り組みを強化したことが要因で、2019年3月期の非常勤職員の採用は順調に進み、当初計画よりも採用募集にかかる広告費も低く抑えることができた。2020年3月期は前期よりもやや採用ペースは遅いものの順調に進捗している。その他、中途社員のグループ採用についても2019年3月期より開始しており、子会社で課題となっていた講師の確保に寄与する取り組みとして期待される。

「合格実績の飛躍的伸長」としては、難関私立中学での合格者数トップを目指すことに加えて、都県立難関校の合格者数でのNo.1を目指しているほか、2028年に東京大学現役合格者数300名を目標に掲げている(2019年春の合格者数は75名)。大学受験部に関しては現在、10校舎あるなかで池袋校、渋谷校を除いては比較的都心から離れた場所に点在しているため、高い水準の教育サービスを提供する側から見れば効率が悪かった。同社はこれを都心に近い場所にある程度集約し、1校舎当たりの規模を拡大することで効率を高め、難関大学への合格者実績を伸ばすことで、生徒数をさらに拡大していく戦略となっている。

(2) 新規事業の創出・発展
新規事業としては2017年より開始した「多読英語教室 早稲田アカデミー English ENGINE」の育成に注力していく。2020年度からスタートする次期学習指導要領で小学校での英語教育の拡充が進むほか、大学入試制度でも4技能(読む、聞く、書く、話す)をバランスよく評価していくシステムに変更され、特に、「聞く、話す」の技能が今まで以上に重視されるようになったことで、小学生段階から英語のコミュニケーション能力の養うニーズが高まっていることが背景にある。実際、現在運営している2校については好評で定員に既に達している。

(3) グループシナジーの強化
子会社の野田学園や水戸アカデミー、集学舎について、同社が持つ教務ノウハウや指導ツール等を共有していくことでシナジーを強化していく。野田学園については、高校既卒生中心のビジネスモデルから現役生の医学部合格者を伸長させるビジネスモデルに転換していく過渡期と位置付けている。一方、水戸アカデミーや集学舎については同社との教材・カリキュラムの共有や夏期合宿連携等をより一層強化していくことで、シナジー効果を高めていく考えだ。特に、同社は首都圏の都県立難関高校で合格実績トップを目指しており、公立難関校で高い合格実績を持つ水戸アカデミーや集学舎とのノウハウを共有していくことで、目標の達成を目指していく。

同社の長期目標としては英語塾部門全体で2028年度に売上高30億円を掲げている。英語教育に関しては、地域に関係なく均一の学習コンテンツを提供することが可能なため、FC展開も進めていきやすいと見られる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 早稲アカ Research Memo(7):中期経営計画はおおむね順調に進捗、長期目標の達成に向けた事業基盤の構築進める