■会社概要

2. 事業の概要
(1) 化学品事業
化学産業は化学というプロセスに着目して区分けされているため、そこに投入される原材料及びそこから産み出される製品は、非常に多種多様だ。そうしたなかで、昭栄薬品<3537>が主として取り扱う化学品の領域はオレオケミカルと称されるものだ。

現在の化学産業では、原油を原料とし、そこから様々な化学製品を合成するペトロケミカルが主流となっている。それに対して、主として植物由来の天然油脂を原材料として化学製品を合成するのがオレオケミカルだ。具体的には、ヤシ油やパーム油などの植物性油脂を原料として、脂肪酸、脂肪族アミン、脂肪族アルコール、グリセリンといった化学品が生産される。オレオケミカルはプロセスの名称であると同時に、そのプロセスで生産される製品の総称としても使用される。

オレオケミカルの領域における有力なメーカーに花王があり、同社は花王の主要販売代理店としての地位を築いている。具体的には、同社の仕入額の約40%は花王のケミカル事業部からのオレオケミカル製品が占めている。反対に花王の側から見ると、ケミカル事業部の販売代理店として同社はトップクラス(僅差ながら第2位と推定されている)の位置にあり、オレオケミカル品の取扱額ではトップの位置にある。

化学品商社として同社は、オレオケミカル製品を主として花王から仕入れ、それを主として界面活性剤メーカーに販売している。界面活性剤とは互いに反発する性質を有する2つの物質の界面張力を下げる性質を持つ物質の総称だ。具体的な例には石鹸や洗剤がある。水だけでは油汚れはなかなか落ちないが、石鹸や台所洗剤を使用すると簡単に油汚れが落ちるのは、石鹸や台所洗剤の主成分である界面活性剤の作用だ。

水と油のように異なる性質のものを混ぜ合わせる作用を生かして、界面活性剤は石鹸・洗剤以外にも食品や化粧品、医薬品、繊維製品、染料・顔料・塗料、などに幅広く使用されている。同社はオレオケミカル製品を販売した界面活性剤メーカーから、彼らの製品である界面活性剤を仕入れ、化粧品や食品、医薬品などの最終製品メーカーに販売している。界面活性剤メーカーを中心に置くと、そこへの原料(オレオケミカル製品)の供給と、製品(界面活性剤)の販売の両方を行っていることになる。

(2) 日用品事業
日用品事業には1987年に家庭用洗剤を商品化して参入した。当時はグループ内に生産子会社を有していたが、2014年にすべての生産活動から撤退したため、現在は化学品事業との連携等で外部の協力工場に生産を委託し、企画・立案に力を入れたファブレスメーカーとして活動している。

生産品目はあらゆる生活消耗材を軸として、例えば洗濯機の洗濯槽用洗剤、冷蔵庫脱臭剤、靴脱臭スプレー等多岐に渡っている。これらを相手先ブランド(OEM)供給を行うのが主力事業となっている。近年は自社ブランドでの販売にも注力しているが、自社ブランドのブランド力はまだ弱くEC(eコマース)と、ホームセンターなどの販路に限定されているため、売上構成比は数パーセントにとどまっている。

OEM供給先を含めたベースでの販路別内訳は、通販・生協ルートが約60%、100円均一・ドラッグストア・ルートが約35%などとなっており、これらの販売ルートに強い日用品メーカーに対して同社がOEM供給していることが読み取れる。

(3) 土木建設資材事業
土木建設資材事業は、大きく、地盤改良、コンクリート構造物の補修・補強、汚染土壌の改良の3つの領域に分かれており、それぞれの領域で使用される薬液類を供給するのがその内容となっている。これらのうち、前2者を土木建設資材関連、汚染土壌改良を環境関連として分けて表示する場合もある。2019年3月期実績では土木建設資材関連の売上高が72.2%、環境関連の売上高が27.8%という構成だった。

土木建設資材事業では、同社は工事を行わず、工事を請け負った施行会社からの注文を受けて、工事で使用する薬液を供給(化学メーカーからの仕入販売)する。施工会社と化学品メーカーとの間に立つ同社は、豊富な情報量と情報収集力を生かし、製品情報や素材・工法開発に関する顧客ニーズ、フィードバック等の提供を付加価値としている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 昭栄薬品 Research Memo(3):オレオケミカルチェーンにおいて花王などキー・プレーヤーを取引先に事業展開