■業績動向

4. 2019年3月期の業績見通し
2019年3月期の業績見通しについて、澁澤倉庫<9304>は営業収益63,500百万円(前期比0.3%増)、営業利益3,400百万円(同1.4%増)、経常利益3,500百万円(同40.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,090百万円(同30.1%増)を見込んでいる。

物流業界では、国内貨物、輸出入貨物とも緩やかな増加が見込まれるものの、物流コストの負担増などが懸念されている。一方、不動産業界については、都市部の空室率に改善は見られるものの、賃料相場が回復基調に至らないとの予測もある。同社は、顧客の新商品開発に伴う一時収益が解消されるものの、動きの良い消費財を中心とした倉庫業務や輸送業務の拡大と、不動産事業での賃貸料の増加を見込んでいる。営業利益は、不動産事業は償却負担減などから増益を見込むが、物流事業は横浜の再開発に関連する費用が発生するため減益を予想、全体でも微増益にとどまる見込みとなっている。なお、2018年3月期に営業外費用に計上した持分法による投資損失が減少するため経常利益は大幅増益が予想され、物流施設の建替えに伴って発生する解体費など特別損失を吸収して親会社株主に帰属する当期純利益も大幅増益が見込まれる。


新拠点、横浜再開発、合弁会社設立と積極経営
5. 2019年3月期の主な取組み
現在展開中の中期経営計画「Step Up 2019」の事業戦略にのっとって、2019年3月期も新たな取組みが計画されている。

(1) 消費財物流拡大に向けた拠点拡充
同社は消費財の取扱いが拡大していることから、拠点を拡充する方針である。物流倉庫の新設というと近年は大型自社となる傾向が強いが、同社は初期負担の軽い賃借物件を運営するほうが有利と考えている。確かに、取引先の物流に合わせてフレキシブルに拡幅移転ができるし、万が一取扱量が減るような局面が来ても、改廃が容易である。伊勢崎倉庫は、メーカーの販売施策による在庫水準の増加に対応して、保管と輸送の能力拡大を目指す。相模原倉庫は、厚木の飲料拠点がフル稼働となったための新設で、メーカーや配送拠点の多い同地区で3つ目の賃貸拠点となる。各務原倉庫は、日用雑貨などを取扱っている小牧の既存拠点が、メーカー数のわりに近隣倉庫が少ないため、慢性的にオーバーフロー状態となっていることへの対応である。3拠点とも新規賃借で、顧客の目途が立っているため、開設直後から収益に貢献する予定である。

(2) 所有土地の再開発推進
横浜市の所有地に関して、従来、物流倉庫や配送センターとして活用していたものを、老朽化のため「横浜市恵比須町第2期」として再開発を推進することとなった。設備投資減税の制度がある神奈川県にあり、羽田に近く、若者に人気の繁華街・横浜駅から2駅、京浜東北線新子安駅から徒歩10分という地の利と、オフィス並みの空調、高い天井高、耐荷重、レイアウトフリーといったハイスペックを生かした、高い付加価値のある研究開発施設兼倉庫(実際には半々の占有になると思われる)に建て替える計画である。2014年に第1期再開発を行ったが、人材が確保しやすいなどと入居企業に好評でフル稼働となっている。第2期は敷地面積22,584m2の残り半分10,860m2を再開発し、5階建て、延床面積23,363m2で、着工が2018年10月、竣工が2020年2月の予定である。投資額は4,900百万円で、資金は借入金と自己資金でまかなう方針である。

(3) ダイドードリンコとの物流合弁会社設立
自動販売機向け飲料メーカーのダイドードリンコと合弁会社ダイドー・シブサワ・グループロジスティクスを2018年6月に設立する予定である。10月には業務を開始し、国内飲料物流を一括して取扱う計画になっている。ダイドードリンコは、同社の食品物流における経験を評価、同社のノウハウ・ネットワーク・システムを活用して物流の合理化を狙っている。一方同社は、将来的に往復輸送や共配倉庫などをプラットフォーム化し、ダイドードリンコ以外のメーカーも取扱う考えで、飲料物流業界のリーダーを目指す。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 澁澤倉庫 Research Memo(5):2019年3月期経常利益は前期比40%増の大幅増益へ