■アエリア<3758>の業績動向

1. ヒストリカルな収益動向
創業以来営業利益は堅調に推移していたが、2008年12月期にリーマンショックなどによる金融事業(当時)の苦戦で大幅赤字に転落した。2010年12月期には金融事業から撤退しオンライン事業(PCゲーム)に注力したことで業績が急回復したものの、今度は2012年12月期以降、スマートフォンゲームの競争激化と開発費の回収遅れにより営業赤字が常態化した。黒字化は2017年12月期の「A3!」の大ヒットまで待つことになったが、「A3!」によって営業利益はピーク利益を突き抜け黒字を回復、2018年12月期はさらに伸びる予想になっている。

波乱の多い業績であったが、これまでに言えることは、堅調なITサービス事業と浮き沈みの多いコンテンツ事業ということだろう。当初、エアネットによるITサービス事業は比較的安定、オンライン事業(PCゲーム)も利益を稼ぎ出してくれた。しかし、リーマンショックの裏で2008年にiPhone、2009年にAndroidフォンが登場、ゲームのプラットフォームがコンソールやPCからスマートフォンへと劇的に変化すると、環境は様変わりした。黎明期のスマートフォンゲーム市場は新興企業の独壇場だったが、市場が十分大きくなるのを見計らって、大手ゲームメーカーが資金力と強力なキャラクターを背景に2012年頃から続々参入、競争が激化したのである。本来開発力に優れる中小ゲームメーカーの中には、戦線を縮小するところも少なくなかった。

同社も2013年にスマートフォンゲームを発売したが、前述のとおりコスト負担をカバーするに至らなかった(オンラインPCゲームは2015年まで続いた)。このように、2000年代~2010年代のゲーム業界は大きく波打っていたが、同社は、ITサービス事業という安定収益源があったため、秀逸な作品を市場に投入していくことができた。そして、我慢の甲斐あってようやく日の目を見たのが、2017年1月に発売した「A3!」の大ヒットである。「A3!」の効果は今後もしばらく続くと思われるが、一方で同社は2017年に民泊を念頭にアセットマネージメント事業に参入した。リスク分散の意図が大きいと思われる。


2017年iOSセールスランキング最高2位となった「A3!」

2. 2017年12月期の業績動向
2017年12月期の業績は、売上高15,871百万円(前期比168.7%増)、営業利益2,691百万円(4,296百万円増益し黒字転換)、経常利益2,760百万円(4,189百万円増益し黒字転換)、親会社株主に帰属する当期純利益2,080百万円(4,228百万円増益し黒字転換)となった。2017年は、インターネット市場は引き続き堅調に成長、モバイルコンテンツ市場も成長を続けている。しかし、企業間におけるユーザー獲得競争がますます激化していることから、差別化できる魅力的なコンテンツやアプリケーションを確保するため、サービス内容が複雑化・高度化し、各社とも開発費用や人件費などコスト負担が増しているような状況である。なお、同社が重視するEBITDAは3,431百万円(前期比584.0%増)と大幅に増加した。

ITサービス事業は売上高が4,616百万円(前期比19.1%増)、営業利益が440百万円(前期比39.2%増)となった。ファーストペンギンは引き続き、インフォトップを中心に安定して収益を確保する一方、売上拡大を目指して事業の多角化も進めた。エアネットもデータセンターを中心に引き続き安定した収益を確保することができた。ちなみに、MVNO事業の「AIRSIMモバイル」は格安SIMが評判のようである。

コンテンツ事業は、売上高が8,874百万円(前期比336.8%増加)、営業利益が2,420百万円(前期比4,321百万円増益で黒転)となった。大幅増益の最大の理由は、前述のとおり、イケメン役者育成ゲーム「A3!」の大ヒットである。2017年8月には早くも400万ダウンロードを突破、iOSセールスランキング最高2位、Google Playでは「ベスト オブ 2017」ユーザー投票部門TOP20にノミネートされた。また、主題歌CD「MANKAI☆開花宣言」がオリコンデイリーアルバムランキング1位を獲得、キャラクターグッズの販売も好調と、既にリアルの周辺関連商材に波及している。また、2015年にリリースされた「アイ★チュウ」も人気が継続しており、2017年には「A3!」に一足早く舞台化されるなど収益貢献が続いている。

アセットマネージメント事業は、スタートしたばかりだが、売上高2,380百万円、営業損失は94百万円となった。

中間決算時の同社予想との比較では、売上高が1,871百万円過達、営業利益が808百万円未達となった。売上高の過達は、「A3!」の好調とM&Aによる連結子会社の増加が要因で、営業利益の未達は、コンテンツ事業の売上高増加に伴う回収代行手数料と広告費の増加が想定を上回ったためである。ただし、広告費については2018年以降につながる先行費用と解釈できる。また、売上総利益率の悪化はM&Aにより収益構造の異なる連結子会社が増加したこと、販管費率の改善はコンテンツ事業におけるコスト増以上に売上高が伸びたことが背景にあると思われる。なお、特別損失として減損損失32百万円、特別退職金12百万円、債権放棄損50百万円が計上された。


2年目も「A3!」に期待だが、2018年12月期予想は保守的な印象

3. 2018年12月期の業績見通し
同社は、2018年12月期の業績を、売上高23,000百万円(前期比44.9%増)、営業利益4,000百万円(同48.6%増)、経常利益4,000百万円(同44.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,000百万円(同44.2%増)と見込んでいる。ITサービス事業では引き続き既存顧客との取引関係の強化と新たな顧客の獲得、コンテンツ事業ではプラットフォームの多様化に対応するとともに既存タイトルの改良や新規コンテンツの開発、アセットマネージメント事業では不動産の賃貸・売買、民泊サービスなどを本格的に推進するもようである。

2018年12月期の業績をけん引するのはコンテンツ事業と考える。リベル・エンタテイメント、アスガルドの女性向け人気タイトルによって女性をターゲットにしたニッチ市場を強化、さらにアリスマティックのプラットフォームや海外展開ノウハウを生かすことで、国内外の市場でニッチトップを目指す。コンテンツの展開では、リアル関連商材や舞台化など「A3!」の本格展開と利益獲得の加速が見込まれる。加えて、中国で「A3!」を配信する予定のbilibiliは、既に「アイ★チュウ」中国版ほか日本のヒットタイトルを多数運営するなど、日本のゲーム運営を熟知しており、しかも、中国において恋愛シュミレーションゲームが人気になりつつある。このため、「A3!」は中国でもヒットすることが予想される。

2017年に新たに子会社になった企業のタイトルも期待されるが、それ以上に近い将来の新たな技術への対応がより一層興味深い。スマートフォン向けゲームの企画・開発・運営を行うエイタロウソフトは、「タイムボカン24ボカンメカバトル!」を配信中だが、一方で3Dオンライン技術の研究開発に注力しているところである。グッドビジョンはバーチャルリアリティー(VR)事業への投資により事業を拡大する計画である。オンラインカジノ/ランドカジノ向けスロットゲームの企画・開発などを行うサクラゲートは、「エヴァンゲリオンスロット」などを主にヨーロッパ市場に向けて展開するとともに、世界最大級のライブポーカーブランド「PokerStars」と日本国内におけるPR契約を締結し、国産カジノ開設に備えてポーカーのブランディング活動を実施中である。

さらに民泊事業の本格化など、中期的に楽しみな取り組みも多くなってきた。しかしながら、それ以前に2018年12月期の業績予想が保守的に過ぎるという印象である。というのも、一般にスマートフォンゲームのヒット作は3年ほど人気が続き、2年目以降はリアルにおける関連商品や舞台・イベントでの収益も乗ってくるとされる上、「A3!」の場合、中国での展開が予定されている。一方、2017年12月期第2四半期の決算説明会資料などによると、2018年12月期の業績予想にはアセットマネージメント事業による増収増益への貢献は織り込まれているものの、「A3!」の付加的材料が織り込まれていないように思われるからだ。いずれにしろ、2018年12月期は同社予想を上回る業績の達成を期待したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 アエリア Research Memo(6):長い波乱を乗り越え、2017年はピーク利益を突き抜けた