■業績動向

1. 2017年3月期の業績概要
(1) 損益状況
極洋<1301>の2017年3月期の連結業績は、売上高で236,561百万円(前期比4.4%増)、営業利益で3,723百万円(同53.0%増)、経常利益で3,709百万円(同31.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益で2,422百万円(同34.6%増)と大幅増益を達成した。セグメント別では、珍味製品の原材料であるイカの価格高騰に苦しんだ常温食品部門と冷蔵運搬船事業から撤退した物流サービス部門が減益となったが、主力の水産商事部門、冷凍食品部門、鰹・鮪部門が大幅増益となり全体の営業利益を押し上げた。

(2) セグメント別状況
a) 水産商事
水産商事部門の業績は、セグメント別売上高で121,420百万円(前期比9.7%増)、営業利益で2,918百万円(同61.8%増)となり、大幅な増収・増益となった。鮭鱒の市況が堅調に推移したこと、チリ産の銀鮭やエビ等の販売が好調であったことに加え、赤魚やカラスガレイ等の凍魚加工品や定塩サケ製品、むきエビ等付加価値製品の販売が伸長し増収増益となった。さらに環境の変化に対応して、海外加工製品の取り扱いを増加させたことも増収に寄与した。

b) 冷凍食品
冷凍食品部門の業績は、セグメント別売上高で68,304百万円(前期比2.0%減)、営業利益で655百万円(同294.3%増)となり、減収ながら大幅増益を確保した。

生食商品は全体的に引き続き好調であったが、特に同社が強みとする大手寿司チェーン向け中心の寿司種商品の売上高(鰹・鮪事業分も含む)は、292億円と前期比3%増となった。さらに2013年7月に発売した業務用商品「だんどり上手」シリーズが事業所給食向け及び高齢者施設向けに順調に拡大し、同商品を含めた加熱用食品も1%増となった。さらに利益面では、2016年3月期に足を引っ張った海外工場(タイ)の収益性が改善したこと、刺身類や加熱用製品のマージンが改善したこと、物流コストの削減に努めたこと等からセグメント利益は大幅増益となった。また2014年1月に参入した家庭用冷凍食品は、まだ売上規模は小さいものの、販売はイオン、イトーヨーカ堂等の大手量販店も含めて順調に伸びている。

c) 常温食品
常温食品部門の業績は、セグメント別売上高で18,816百万円(前期比4.8%増)、営業利益で102百万円(同73.7%減)と増収を確保したものの減益となった。サバやイワシ等の水産缶詰が順調に拡大したことに加え、珍味類も大手コンビニ向け製品を中心に順調に推移したことから増収を確保したが、珍味原料のイカの価格が高騰し利益を圧迫し、前期比では減益となった。

d) 物流サービス
物流サービス部門の業績は、セグメント別売上高で1,604百万円(前期比45.8%減)、営業利益で138百万円(同36.0%減)となった。

冷蔵倉庫事業では、入庫貨物の確保を図り、営業力を強化したことに加え、2014年末に稼動を開始した城南島事業所がその後も順調に稼動していること、一部競合会社の倉庫建替えもあり庫腹量は好調に推移した。しかし一方で冷蔵運搬船事業は、海運市況の影響を大きく受けることから事業の見直しを行い、運航する3隻すべてを第2四半期に売却して事業から完全に徹退した。この結果、セグメント全体では大幅な減収・減益となった。

e) 鰹・鮪
鰹・鮪部門の業績は、セグメント別売上高で26,009百万円(前期比4.5%増)、営業利益で696百万円(同96.5%増)と増収・増益となった。

海外まき網事業では、水揚重量は前期比微減であったが、魚価(平均単価)が200円/kg(同+14円/kg)と引き続き高値で推移したことから、水揚金額は前期比で増加した。さらに、より高付加価値製品の生産に注力したことから採算は一段と改善した。

養殖事業は全体ではまだ損失を計上しているが、出荷量は着実に増加している。上半期は病気の発生等で苦戦したが、引き続き種苗の新規仕入れルートの開拓及び歩留まりの維持向上を図り、完全養殖クロマグロの出荷量拡大に向けて沖出し尾数は順調に増加しており、中長期的には今後の展開が期待できる分野である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)



<NB>

情報提供元: FISCO
記事名:「 極洋 Research Memo(5):17/3期は主に水産商事部門、鰹・鮪部門の寄与で前期比53.0%増の営業増益