■会社概要

1. 事業概要
ユニリタ<3800>は、金融や製造を始め、幅広い業種向けに基幹業務システムの運用管理等を行うパッケージソフトウェア(以下、製品) の開発、販売、サービスを主力とし、独自のノウハウを生かした運用コンサルティングや人材育成等の周辺業務のほか、運用代行サービスも手掛けている。また、2016年3月期からは、データ活用によるソリューション提供にも注力している。

金融機関や大手企業を中心としたメインフレーム向けの製品が創業以来の安定収益源となっており、高い収益性を誇っている。顧客のジョブ管理や帳票管理など、ITシステム運用の自動化、効率化に貢献することで同社の業績も着実な成長を遂げてきた。

しかしながら、システムのオープン化やダウンサイジング化の進展、クラウドの普及、ビッグデータの活用など外部環境の急激な変化を受けて、中長期的な視点から将来を見据えた事業構造変革に着手。これまでのITシステム運用の自動化、効率化に貢献する分野(生産性向上等)に加えて、顧客の企業価値向上に直接貢献する分野(市場拡大や競争力の向上等)へ事業領域を拡充することで成長を加速する方針を掲げている。

事業構造変革の一環として、2015年4月には連結子会社のビーコンITを吸収合併するとともに、会社名を「株式会社ビーエスピー(BSP)」から「株式会社ユニリタ」へ変更。BSPの得意領域である「システム運用」とビーコンITの得意領域である「データ活用」が一体となった事業体制の確立を進めることで、環境変化への対応とシナジー創出の実現に狙いがある。また、2017年4月には事業構造変革を加速するための世代交代として、代表取締役の異動を伴う経営体制の変更を行った。

前期までの事業セグメントは以下の4つに区分される。セグメント別の売上高構成で見ると、「データ活用事業」、「システム運用事業」、「メインフレーム事業」、「その他事業」の4本柱となっているが、現状においては、営業利益のほとんどが「メインフレーム事業」によるものとなっている。

(1) データ活用事業
「プロダクト」と「ソリューション」によって構成される。ビーコンITとの連結化(2014年1月) により新たに取得した事業であり今後の注力分野である。

a) 「プロダクト」は、データ連携の高速化やセキュリティ機能の強化など、データ活用のためのソフトウェアの開発・販売・サポートを行っている。また、新規・成長事業分野として、ビッグデータやIoT等を活用したソリューション提案も行っている。

b) 「ソリューション」は、連結子会社である(株)データ総研がデータ活用に関するコンサルティング等を行っている。

(2) システム運用事業
「プロダクト」と「ソリューション」、「アウトソーシング」によって構成される。

a) 「プロダクト」は、基幹業務システムの運用管理のうち、オープン系の製品を取り扱っている。1)運用自動化、2)帳票、3)ITサービスマネジメント(ITSM)、の3つの領域における自社製品の開発・販売・サポートを行うとともに、他社製品も一部取り扱っている。製品の使用権の許諾料(ライセンス料)及び製品価格の一定割合の保守サービス料が収益源である。また、需要が拡大しているクラウドサービス「Be.Cloud」にも注力している。

b) 「ソリューション」は、ITサービス領域におけるソリューションサービス(システム構築のコンサルティング、人材育成サービス等)や、会員制サービス「シスドック」(ITシステム運用に関する専門的なアドバイスを定期訪問により提供)、経営に貢献する運用部門の構築に向けたメソッドである「ASMO」を用いたソリューションサービス(企業価値分析や組織改革、人材育成等)などを行っている。

c) 「アウトソーシング」は、同社のベテラン技術者のノウハウを生かし、メインフレームでの運用からクラウド活用までをカバーする新しいストックビジネスである。具体的には、ITシステム運用に関する改善提案、システム構築・移行、サービスデスク構築などの支援を顧客常駐型あるいは非常駐型でサービスを行う。

(3) メインフレーム事業
基幹業務システムの運用管理のうち、金融機関や大手企業を中心としたメインフレーム系の自社製品を取り扱っている。メインフレーム系製品の利用者からは、保守サービス料として製品価格の一定割合を受け取っている。同社創業以来の主力事業であり、安定収益源となっている。

(4) その他事業
ビーコンITグループの連結化により新たに取得した事業である。ビーコンITグループのデータ活用事業以外の事業であり、BCPサービス※(事業継続計画)の構築・運用・保守のサポートや人材派遣業界向けの勤怠管理用のSaaSなどが含まれる。連結子会社である(株)ビーティスや(株)アスペックスが手掛けている。また、2016年5月には、新たに開始したバス事業活性化支援サービス(バス路線検索サービス、バス位置情報検索サービスなど)を切り口として、IoT型ビジネスを本格展開するために新子会社ユニ・トランドを設立した。

※BCP(ビジネス・コンティニュイティ・プラン)とは、災害や不祥事などの緊急事態が発生した際、特定の重要な事業(業務)を中断しないこと、または万一活動が中断した場合でも、事業の中断によるロスを最小化するために策定される計画。


2017年3月末現在の顧客数(同社製品の導入企業数)は900社を超えるが、大手企業による導入実績が多くみられる。業種別売上構成比では、幅広い業種に対応しているが、製造、小売・流通、金融・保険の比率が高い。

販売チャネルは、主力事業においては直販が中心であるが、競争が厳しく、製品の種類が多い「データ活用事業」を始め、新規・成長事業分野においてはパートナー(代理店)政策※も重要な位置付けとなっている。

※2017年3月末のパートナー数は88社(前期末比15社増)。


連結子会社は、IT サービスコンサル事業(現システム運用事業の一部)を展開する(株)ビーエスピーソリューションズと中国の販売拠点である備実必(上海)軟件科技有限公司(以下、BSP上海)のほか、アスペックス(人材派遣業界向けの勤怠管理用のSaaSビジネス)、ビーティス(BCPサービスの構築・運用・保守のサポート)、データ総研(データ活用に関するコンサルティング事業)、ユニ・トランド(IoT 型移動体向けソリューションの提供)、の計6社で構成されている(2017年3月末現在)。なお、同社は2017年4月に西日本地域の顧客への販売強化及びパートナー企業との連携により、同社製品の販売拡大を図るため(株)ユニリタプラスを100%子会社として設立している。

2. 新セグメント区分への移行
同社は、従来のセグメント区分には、プロダクト、ソリューション(コンサル)のように収益構造の異なる事業が同一セグメント内に含まれていることや、クラウド型サービス事業が的確に反映できていないことなど、事業構造改革の進展に伴って課題が浮き彫りになってきたことから、新たに開示セグメントの変更を行った。新セグメントは、「プロダクト」(製品販売、保守)、「ソリューション」(コンサル、技術支援サービス)、「クラウド」(利用料モデル、月額サービス)、「メインフレーム」(同事業に関わるすべて)の4つに区分される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 ユニリタ Research Memo(2):顧客事業の「攻め」と「守り」の両面を支援できる体制を確立