■成長戦略

6.『Maruko Reborn Project』計数目標とその考え方
この成長戦略の計数目標についてマルコ<9980>は、2018年3月期の業績予想として売上高15,000百万円(前期比11.9%増)、営業利益1,200百万円(同785.9%増)を掲げるにとどまっている。今後、施策がある程度進捗した段階で改めて中長期の業績計画を公表してくると弊社ではみている。

同社がこだわっているのは収益の額もさることながら営業利益率に代表される収益性だ。同社の体型補整下着は高価格帯が中心であり、機能やデザイン性のみならず丁寧な装着指導など、その価格に見合った価値を顧客に提供できているため、値下げ販売はしていない。したがって本来的に同社の収益性は営業利益率で10%程度は確保できると考えられる。

弊社では、2018年3月期の業績予想の数値、特に営業利益率8%というのは、同社の持つ潜在的な収益力に照らせばアーリーステージの通過点に過ぎないと考えている。RIZAPグループ入りしてコラボレーションが進捗し、シナジー効果が十分に出てくれば同社のピーク時の業績を更新することも十分可能だとみている。具体的には、売上高で25,000百万円~30,000円、営業利益率10%は現実的な中長期のターゲットとなってくると考えている。ただし、この収益水準に達するのはそれなりに時間を要すると考えている。早くとも3、4年後(2021年3月期−2022年3月期)ではないかというイメージだ。

弊社が同社の中長期の成長ポテンシャルを高く評価するのは以下のような理由からだ。

まず、同社が新規顧客獲得策において広告宣伝の積極的な投入を打ち出したことは、非常に説得力があり、効果が期待できる施策だと弊社が評価していることがある。同社が紹介営業にこだわってきたのは既に説明したとおりだ。一方、RIZAPグループは主力のRIZAP事業において積極的な広告投入によって急成長を果たしたが、現在はそのビジネスモデルを変えつつある。それは“広告に頼らない集客”へのシフトであり、具体的には広告営業から紹介営業へのシフトだ。

ポイントは、両者が目指していることは、広告営業と紹介営業を対立関係・代替関係に位置付けるのではなく、補完関係に位置付けてシナジー(集客コストの低減)を実現するということだ。広告宣伝による認知度向上が触媒となって紹介営業のサイクルが加速するイメージであり、一旦弾みがつけば、広告宣伝を削減していくことで収益性(利益率)の向上へとつなげることができるとみている。

もう1つの理由は、同社が低価格帯ブランド『m_fit』を投入したことだ。弊社では価格競争力と販売方法が、同社が新規顧客の獲得で伸び悩んだ最大の要因だと考えている。m_fitはそうした課題を一気に解決できる新商品であると同時に、(高価格帯シリーズと比較して)広告宣伝との相乗効果を生み出しやすい商品である点を弊社では評価している。m_fitはMARUKOブランド体験の最初の入り口として重要な役割を果たすものと期待している。

同社が長期目標で掲げる売上高営業利益率10%も十分達成可能だと弊社では考えている。前述のように、同社は紹介営業の基本線は崩さず、低下した認知度を広告宣伝で底上げして紹介営業のサイクルを加速させていくことを目指している。同社がかつて有していた高収益体質は依然として残っていると考えられることがその理由だ。過去には、ピークの1996年8月期に22%超の営業利益率を達成した実績もある。

長期目標の達成時期について2021年3月期−2022年3月期を予想するのは、広告宣伝と紹介営業のシナジーを安定的に産み出すまでには一定の時間が必要だと考えるためだ。RIZAP事業が遥かに速いスピードで高収益体質を確立したことを踏まえれば、同社の体形補整下着でも再現できるという考え方もあろう。また、RIZAPグループとのコラボレーションがどういうものになるかでも変わってくる可能性はある。とはいえ2018年3月期から広告宣伝戦略が本格化するという現状では、慎重にみておきたいと考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 マルコ Research Memo(12):2018年3月のV字回復は通過点。営業利益率10%の高収益体質の確立が目標