22日の後場の取引では以下の3つのポイントに注目したい。

・日経平均は3日ぶり大幅反発、半導体株やIPO賑わうも「自律反発」の域出ずか
・ドル・円は上げ渋り、米金利の低下で
・値上がり寄与トップは東京エレクトロン<8035>、同2位がファーストリテイリング<9983>

■日経平均は3日ぶり大幅反発、半導体株やIPO賑わうも「自律反発」の域出ずか

日経平均は3日ぶり大幅反発。591.38円高の29099.93円(出来高概算5億3000万株)で前場の取引を終えている。

21日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに反発し、316ドル高となった。世界的な新型コロナウイルス変異種の感染拡大で経済活動が抑制されることへの懸念から売りが先行したものの、米国内でのワクチン普及が先行きへの期待を支え、押し目買いが入った。日経平均もここ2日、連日で600円近い下落となっただけに、本日は米国株の反発を手掛かりに372円高からスタート。オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングの好決算を受けて値がさの半導体関連株が大きく買われたことも日経平均を押し上げ、この日の高値圏で前場を折り返した。

個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>といった半導体関連株が大きく上昇。米ファンドが買収案の策定を検討していると報じられた東芝<6502>は急反発し、本日決算発表を予定している日本電産<6594>も先回りした買いが入っているようだ。その他、売買代金上位ではソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、トヨタ自<7203>などが堅調。郵船<9101>や商船三井<9104>といった海運株は一部証券会社の目標株価引き上げを受けて上げが目立つ。また、住石HD<1514>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、任天堂<7974>は小安い。コロプラ<3668>は任天堂が同社に対する損害賠償請求額を引き上げたと発表しており、東証1部下落率上位に顔を出している。

セクターでは、海運業、鉄鋼、精密機器などが上昇率上位で、その他も全般堅調。石油・石炭製品のみ小幅に下落した。東証1部の値上がり銘柄は全体の91%、対して値下がり銘柄は7%となっている。

前日の米国株の上昇や半導体関連株の賑わいで、本日の日経平均は大幅反発している。日足チャート上では29100円台前半に位置する75日移動平均線近辺まで上昇。米国ではここ数日、ヘッジファンドの売り越しが続いていたため、短期的に買い戻しが入る可能性があると指摘されていた。これは直近2日の日経平均の下げ幅が1200円に迫った日本株も同様だろう。23日には東京、大阪、京都、兵庫の4都府県を対象に緊急事態宣言が発令される見通しとなったが、過去の発令時の株価推移からは前もって大きく下落したのち、実際の発令を受けて買い戻しが入るとの指摘もある。

新興市場でもマザーズ指数が+1.45%と3日ぶり反発。注目された転職サイト「ビズリーチ」のビジョナル<4194>は公募・売出規模がメルカリ<4385>以来の大きさとなるマザーズIPO(新規株式公開)だったが、結果的に公開価格を4割強上回る堅調な初値を付けた。弊社では5割程度のアップサイドを残した公開価格設定という評価だったが、おおむねその見立てに沿った動きだろう。また、同じくマザーズ上場のステラファーマ<4888>は公開価格を5割強上回る初値を付けたのちストップ高水準まで上昇。ジャスダック上場のネオマーケティング<4196>はまだ買い気配が続いている。直近上場の紀文食品<2933>やサイバートラスト<4498>が人気化したことで初値買い機運が再び高まったとみられるが、個人投資家の物色意欲も根強いのだろう。

ただ、日経平均は直近2日の下落幅の半値戻し、それに75日線水準までの戻りにとどまっているところを見ると、自律反発の域を出ないとの印象だ。本日ここまでの東証1部売買代金は1兆1000億円程度で、半導体株物色や日本電産の決算先回りの動きなどを除けば、株価指数先物の買い戻し主導の上昇なのだろう。

短期的な買い戻しの動きが想定される一方、かねて当欄で指摘している信用買い残の多さなどは上値の重しとして懸念される。東京証券取引所が20日発表した16日申し込み時点の信用買い残高(東京・名古屋2市場、制度信用と一般信用の合計)は3兆1976億円(週間で304億円増)となり、およそ2年9カ月ぶりの大きさになったという。ゴールデンウィークの5連休前には手仕舞いの売りが出やすいと考えられる。

個別株の信用取引状況にも注目しておきたい。本日賑わいを見せている東エレクは、信用買い残の水準にこそ過大感はないが、一方の売り残はヒストリカルで見ても低水準であり、これは先に決算発表した安川電<6506>に似たパターンという印象。また、本日の決算発表が注目される日本電産は売り残が継続的に少ない一方、買い残がかなりの規模に膨らんでいる。どちらのパターンもある程度の好決算を織り込んでいるとみられ、発表後の株価推移が気になるところだ。

一昨日の当欄で「GW連休前後に日経平均は28000円台まで調整する場面も出てくる」と予想したが、海外勢の売りで早々に調整が進んだ。ここからは従前よりやや目線が切り下がり、28000円~29000円レベルでのもみ合いになるとみておきたい。
(小林大純)

■ドル・円は上げ渋り、米金利の低下で

22日午前の東京市場でドル・円は上げ渋り、108円10銭台に上昇後は失速した。日経平均株価が前日までの大幅続落から値を戻し、円買いは後退。一方、米10年債利回りは大きく低下し、ドル売りが強まった。豪ドルなども対ドルで上昇し、ドル・円への下押し圧力となった。

ここまでの取引レンジは、ドル・円は107円98銭から108円14銭、ユーロ・円は129円83銭から130円14銭、ユーロ・ドルは1.2032ドルから1.2047ドル。


■後場のチェック銘柄

・ジー・スリーホールディングス<3647>、ロングライフホールディング<4355>など、4銘柄がストップ高

※一時ストップ高(気配値)を含みます

・値上がり寄与トップは東京エレクトロン<8035>、同2位がファーストリテイリング<9983>

■経済指標・要人発言

【経済指標】

・Nカナダ・3月消費者物価指数:前年比+2.2%(予想:+2.3%、2月:+1.1%)


【要人発言】

・マックレム加中銀総裁
「新型コロナウイルス第3波は新たな不確実性を生む」
「世帯、ビジネスには弾力性がある」
「財政策は成長に重要な貢献」
「QEの一段の修正は段階的なペースで」

<国内>
・4月政府月例経済報告

<海外>
特になし

<CS>
情報提供元: FISCO
記事名:「 後場に注目すべき3つのポイント~半導体株やIPO賑わうも「自律反発」の域出ずか