*07:45JST NYの視点:英仏政局不安でユーロ・ポンドはどうなる? 英仏両国が、奇しくも同じタイミングで政治情勢の大きな転換点を迎えている。フランス議会選は右派勢力拡大による財政運営が懸念され、ユーロは続落。一方、イギリスの総選挙は政権交代が期待され、ポンドは堅調を維持している。

ユーロ・ポンド相場は欧州議会選後に軟調地合いとなった。6月30日のフランス議会選に向けた直近の支持率調査によると、右派政党・国民連合(RN)が3割超と、3割弱の左派連合、2割弱の与党・再生を上回る勢い。党首のマリーヌ・ルペン氏はマクロン大統領との協力関係を強調したものの、同国の財政規律は不安視され、選挙直前までユーロ売りは続く可能性がある。

一方、英中銀は20日の金融政策委員会(MPC)で政策金利の据え置きを決定。直近のインフレ率低下を背景に利下げ主張の当局者が増え、ハト派的な政策運営を見込んだポンド売りが観測された。ただ、7月4日投開票の総選挙で労働党が保守党を破り、2010年以来の政権奪還が確実視されている。財政リスクでポンド暴落を招いた保守党政権は信任を失い、新政権への期待感が対ユーロでポンドを下支えしているようだ。

両国は1997年にも同時期に選挙が行われている。フランスでは当時のシラク大統領が不人気のユーロ導入の争点化を避けるため、任期を1年残した議会を解散。その後の議会選は左派や右派でルペン氏の父親ジャン=マリー・ルペン氏の国民戦線の躍進を許し、シラク氏を支える右派・共和国連合は惨敗した。今回の選挙でルペン氏が与党に勝利したとしたらどこか因縁めいている。

イギリスでは、サッチャー、メージャー両氏の保守党長期政権からの変革を訴えた当時40代のブレア氏が労働党を地滑り的大勝利に導いた。その後はブラウン氏に禅譲し、労働党は2010年まで政権を維持。今回14年ぶりの政権奪還を狙う同党が掲げた政策のなかで、1990年代に民営化した鉄道の国営化が目を引く。新自由主義から逆戻りしたスターマー氏の左派政策は、まさに「チェンジ」と言える。

ただ、イギリスでも右派勢力は健在。反移民を掲げるナイジェル・ファラージ氏は新たな政党であるリフォームUKを新たに立ち上げ、保守党の凋落を突いて保守層の支持を広げている。同氏はかつて欧州連合(EU)加盟に反対の立場から所属していた保守党を離党した経緯があり、ヨーロッパを席捲する右派の強風がイギリスでも吹き荒れるか注目される。為替については右派勢力が想定外に善戦すればポンドは急反落する可能性がある。

<CS>
情報提供元: FISCO
記事名:「 NYの視点:英仏政局不安でユーロ・ポンドはどうなる?