チーズを食べているつもりが実はチーズではなかった、そんな経験をしました。パッケージや見た目がこれまでと変わらないものの、原料高騰により成分変更が行われていました。商品名もよく見ると名称から「チーズ」が消えており、調べると省令上の分類変更に従った名称の対応のようです。少し水分が増えた気がしますが、これはこれで美味しかったです。

いわゆる実質値上げの一例になりますが、原料等の高騰による値上げが浸透しています。帝国データバンクによると今年の食品値上げは2万品目を超え(平均値上げ率14%)、2023年1−3月期は5000品目に到達する見込みと、今年を上回る値上げラッシュが到来するようです。

コストプッシュ型のインフレですが、今後気になるのは収入面です。日銀は2%の物価安定目標が達成されるには3%程度の賃上げが必要とみており、ディマンドプル型の物価・成長の実現に向け、次の春季労使交渉は大変注目されます。

現在日本の物価は40年ぶりの伸び率を見せています。多くの人がデフレに慣れている中で、今後インフレに向けて経済が動き出すのであれば、これまでとは考え方を変える必要があります。資産運用もその1つです。

物価の上昇は貨幣価値の下落です。持続的な場合にその累積的な効果は大きく、2.5%の物価上昇が20年続けば貨幣価値は40%も失われます。デフレの時期は現金に滞留させることが資産の保全になりましたが、今後物価上昇を前提とすればその恩恵を受ける株式等リスク資産運用こそが資産の保全となり、成長・物価安定への歩み出しと共に2000兆円の家計の過半を占める現預金が動き出すか注目されます。

資産運用は物価やライフプランを考慮した中長期的な運用計画をベースに、景気サイクルに合わせた短期的な運用方針を組み立てることが大事だと考えますが、年末にあたり今年の投資行動が運用計画や方針に沿ったものであったかという振り返りも大事ですね。

今年は予想外の展開だらけでした。昨年12月のFOMCで示された2022年末の物価予想値は前年比2.6%でしたが直近の数値は6.0%です。先日のFOMCでは来年末の物価予想値が3.1%でしたが、グローバル化の終焉や世界の分断が見られるなかで予断を持てません。景気後退も予想されており、リスク資産についても一方向への流れを決め打ちせず、分散を心掛けた運用が必要と認識しています。

前例なき展開を迎えるなかで、先入観無く何事にも囚われずに情報発信していければと思っております。よいお年をお迎えください。


マネックス証券 インベストメント・ストラテジーズ 塚本 憲弘
(出所:12/26配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【ポートフォリオのススメ】脱既成概念(マネックス証券 塚本 憲弘)