日々新たなテクノロジーが登場し様々な期待が寄せられる中で、それはハイプ(誇張)なのか?実用化されるのか?株式投資においても期待の段階はバリュエーションが拡大し、実用化→収益化は業績の拡大で株価上昇となるため、新技術の登場とその利活用は注目されます。

ではどのようなテクノロジーが現在注目されているのでしょうか?IT分野を中心に調査・助言を行う米上場企業ガートナー社から、そのヒントとなる先進テクノロジーのハイプ・サイクル2022年版が8月に出されました。

ハイプ・サイクルでは注目される先進技術が示され、またその技術の現在の普及度やトレンドの位置も紹介されます。技術革新幕開けの「黎明期」、初期の宣伝期にあたる「過度な期待のピーク期」、成果が行き詰まる「幻滅期」、企業の利活用事例が出始め理解が広まる「啓発期」、主流採用が始まる「生産性の安定期」の5段階に分け、各技術がどこに位置するか公表されます。

企業が次に備えるべき技術トレンドを示し、実用性があるのかハイプなのかを区別する助けとして25の先進技術が紹介されました。聞きなれない名称も多く詳細説明は省きますが、これらの技術は「(1)没入型体験の進化と拡大」「(2)AI自動化の加速」「(3)テクノロジストによるデリバリーの最適化」の3つに集約されています。

例えば(1)にはメタバース、NFT、Web3など8項目が入り、没入型の体験への進化がユーザーに新しい体験をもたらすとされ、(2)には5項目が入り、AIによる予測・意思決定の精度向上により成果実現までの時間短縮が期待され、(3)には12項目が入りシステム基盤の重要性が強調されました。

なおサイクル上は大半の技術が黎明期にあり、6項目が「過度な期待」のピーク期にあります。実用化が期待される啓発期〜生産性の安定期までは時間を要する印象です。

ではこれらの技術は株式市場でどう評価されているでしょうか?各技術を代表する銘柄があるわけではなく正確な計測は出来ませんが、NFTやメタバースなどは関連ETFを見る限りパフォーマンスは不振ですし、テクノロジー関連企業は今年概ね調整しています。なお、高まる期待から実用化に至るまで、各技術に対する評価として2-10年もしくは10年超の時間が予想されています。

当初期待から株価評価されたとしても、実用化するまで企業の赤字を容認できるのか?金利が上昇すれば企業にはコスト増となり、投資家には代替投資手段(高成長期待株より金利への投資)が出ることになります。金利は企業評価の際に割引率として分母に位置するため、金利上昇は企業評価上ネガティブです。バリュエーションの高いテクノロジー株への評価は金利正常化の動きと共に低下してきました。

一般的に投資テーマに着目した投資信託の評判があまり芳しくないのはバリュエーション主導で過度な期待に沿って売り出され、幻滅に至る過程にはまってしまうことが一因かもしれません。様々な技術・テーマが実用化に至るのを見極めるには相応の時間も必要です。

過去30年の株式市場を見ると、相場の主役は金融→資源→情報技術と不況を挟んで入れ替わってきました。技術革新を活用してイノベーションを達成できる分野が好況を主導し、その後不況に直面しますが、その要因を解決するために新たなイノベーションが生まれることもあるでしょう。このような動きが相場の主役入れ替えを促し、次の好況期に新たな分野で進歩が評価されるという流れがあるのかもしれません。

現在も気候変動や食料・資源問題など供給側中心に様々な制約に直面しています。世界的に物価高止まりの中、次の進歩はどの分野からどのような技術と共に現れるのか?景気サイクルや時代の変遷とともに必要とされる技術トレンドや業種の動向を把握し追跡していきたいです。


マネックス証券 PB事業部インベストメント・ストラテジーズ 塚本 憲弘
(出所:9/5配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【ポートフォリオのススメ】ハイプ・サイクル(マネックス証券 塚本 憲弘)