トランプが大統領に就くと「永遠に続く戦争」を終わらせるべく大きく舵を切った。多くの米兵の命が失われ巨額の資金が投じられた米軍駐留の正当性を疑う者は多かった。しかし米軍の完全撤退という決断を、アメリカの大統領はためらってきた。皆が見て見ぬふりをする重要な課題、まさに「部屋の中の象(the elephant in the room)」だった。米軍撤退を迷いなく進めたトランプの大統領就任は、タリバンにとって幸運だった。
タリバンといえばゲリラ戦とIED(即席爆発装置)、自爆テロで多くの民間人を含むアフガン政府軍に被害を与える攻撃手法が知られていた。しかし今回、タリバンは周到に準備していたであろう勝利の理論(theory of victory)に基づき、軍事および非軍事の戦術を統合し政府軍を急襲、一気にカブールまで進撃した。
【参考文献】 川端清隆『アフガニスタン』みすず書房、2002年。 川端清隆「タリバンの「勝利」がもたらすものは~米軍撤退に揺れるアフガニスタン2」『論座』、2021年8月21日付。 登利谷正人「アフガニスタン 米タリバン和平も平和の展望見えず」『外交』Vol. 60(2020年3月) 山本忠通「アフガニスタン紛争−和平と国連および日本」『中東研究』539号(2020年度 Vol. II) 山本忠通「論理的、洗練された一面も タリバンを熟知する日本人が見るアフガニスタンのこれから」朝日新聞GLOBE+、2021年8月19日付。 Benjamin Jensen, 『How the Taliban did it: Inside the ‘operational art’ of its military victory』, Atlantic Council, 15 August 2021. Sami Sadat, 『I Commanded Afghan Troops This Year. We Were Betrayed.』, New York Times, 25 August 2021. UNDP Statement on Afghanistan (20 Aug 2021) William J. Burns, The Back Channel, Random House, 2020.