先ずは、現在の「国家安全保障戦略(NSS)」を早急に見直すことである。現在のNSSは2013年12月に閣議で決定された。このNSSは、我が国で初めて成文化された戦略である。ただし、このNSSは策定されてから既に7年が経過している。この間、我が国を取り巻く安全保障環境が激変し、国内事情(平和安全法制の整備等)も変わり、米国もオバマ政権からトランプ政権を経てバイデン政権となり、日米関係も大きく変化してきている。この様な諸事情を勘案すれば、我が国は早急に現NSSを見直し、これに続く「防衛計画の大綱(以下「大綱」)」及び「中期防衛力整備計画(以下「中期防」)」を見直す必要がある。また、このNSS改定とともに、今までに何度も議論されてきている緊急事態法の制定や外交や経済、エネルギー、先進技術保全等も含め議論し、夫々の分野の戦略・計画等を作る必要がある。また、最近のグレーゾーン対応を考慮すれば、我が国の法執行機関である海上保安庁と警察庁の体制(態勢)強化・能力向上と、これらの機関と防衛省・自衛隊との法的位置づけを明確にし、これまで以上の強い危機管理体制の構築が望まれる。加えて、米国には台湾を支援する「台湾関係法」が存在する。そろそろ、我が国でも、外交方針としての「One China Policy」を維持しつつも、台湾をサポートする枠組みを作るべき時期に来ているのではと考えている。台湾との関係は、これまで国交がなかったことから、先ずは、海難事故や自然災害に対する協力体制構築から始め、今回の新型コロナウイルス(Covid-19)関連の協力体制、中国の経済圧力(2012年スカーボロ環礁占拠時のフィリッピンのバナナ不買運動、最近の台湾のパイナップル不買運動)への対応策構築などから始めることも一法であろう。そして、最終的には安全保障に関する枠組みまで発展させるやり方が推奨される。また、米国の政府高官等の台湾との交流等を規定している「台湾旅行法」も参考にしながら、積極的に人事交流を推進すべきである。