今日(14日)は自民党総裁選投開票日です。16日に発足する新内閣にはさまざまな焦点がありますが、まだ謎でもあり注目されるのが「デジタル庁」の創設でしょう。

新型コロナ禍もあり、この半年で「デジタルファースト」路線は案外進んだ印象です。例えば、初診を含むオンライン診療も始まりましたし、書面・押印・対面の抜本的な見直しも始動しました。

そして次に注目される分野の一つが「データ利活用」です。先月総務省が発表した情報通信白書では、流行の5Gに次いで、データ利活用に1章が割かれています。そこでは、例えば、住友商事<8053>や岡山県のスーパー・マルイのデータ活用事例が先行事例として挙げられています。しかし、目下売却が話題のTikTokの顧客嗜好分析アルゴリズムが、同社の2~3兆円の価値の大半を占めるというスケールとはだいぶ差がある印象です。

データ活用が遅れている背景には日本の特殊事情もあります。日本では全角・半角の混在や、海外名のカタカナ表記の揺れなどがあり、データとして分析しにくくなっています。それでなくても過去の書類のデータ化は半端でない作業量でしょう。昨晩TVで放映された「半沢直樹」でも膨大な紙の資料庫の中から書類を探す困難さが描かれていました。

ところが、日本企業はまだデータの問題に無頓着です。情報通信白書のアンケートでも、「データ利活用に関し特に課題や障壁はない」と答えている企業が50%超と、他国に比べて圧倒的多数に上っています。データ利活用をまだ真剣に考えていないことの裏返しかもしれません。

日本のデータ収集の一部は、戦後すぐに始まっており、相応に充実したものになっています。これらの利活用の初期段階のハードルを「デジタル庁」で超えてもらえれば、大きな価値を生む可能性もあるのでは…と夢を抱きつつ、今週の激動を見ていきたいと思います。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:9/14配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【アナリスト夜話】新総理誕生へ。『デジタル庁』は何を生むのか?(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)