世界銀行のレポート「Debt Intolerance: Threshold Level and Composition(以下、当レポート)」は、財政の脆弱性を、政府債務の水準と構成の両方に依存すると指摘している。先行研究であるEbeke and Lu (2015)は、新興国における海外部門による債務の保有が金利を低下させるものの、ラグ付きの債務比率(対GDP比)が90%を上回る、あるいはラグ付きの短期債務比率(対GDP比)が21.5%を上回ると、金利を上昇させる影響を持つことを示した。また、Brzoza-Brzezina・Kotlowski(2018)は、純対外金融資産(対GDP比)が約75%を下回ると、国のリスクプレミアムが顕著に上昇することを示した。当レポートは、これらの先行研究の延長線上として、2006年下期から2018年下期の先進国11ヵ国と新興国14ヵ国のデータを用いて、長期金利の非線形的な挙動をもたらす債務のしきい値と債務構成の役割が検証されている。