米商務省が発表した11月耐久財受注速報値は前月比‐2%と、改善予想に反して9月来のマイナスに落ち込んだ。前年比では‐5.7%と、2016年7月以降で最大の下落率を記録した。米国の大手航空機メーカー、ボーイングの737マックスの需要が停滞していることが主因。軍用機や民間航空機の受注が冴えず、全体指数を押し下げた。ボーイングの11月の受注は当初63機だったが、そのうち52機が月内にキャンセルされたため実質11機の新規受注となった。米国の大手自動車GMはストライキの終了で、自動車や自動車部品の受注が+1.9%に回復。(前月‐1.7%)

変動の激しい輸送用機を除いた速報値も前月比横ばい。伸びは予想+0.2%を下回りマイナスとなった9月来で最低。企業の設備投資の先行指標として注目される航空機を除く非国防資本財(コア資本財)の受注は前月比+0.1%。10月に+1.1%と大幅な伸びを示したのち、かろうじて2カ月連続のプラスを維持した。国内総生産(GDP)の算出に用いられる航空機を除く非国防資本財(コア資本財)の出荷は前月比−0.3%と、予想外に9月来のマイナスとなった。このため10−12月期のGDP成長が抑制される可能性が出てきた。

米中貿易協議「第1段階」合意により、米国のトランプ大統領は12月15日に予定していた中国の消費関連品を対象とした追加関税の発動を見送ったほか一部関税率引き下げを発表したが、コア資本財は依然抑制されており、第4四半期、2020年に向けて設備投資が低迷する可能性が懸念されている。資本支出を拡大させるためには貿易の緊張をさらに解消させ、世界成長の安定が確認される必要があると指摘されている。

「第1段階」合意で米中貿易問題が緩和しているにも関わらず世界の需要への懸念が完全に払しょくできずにいる。最新12月フィラデルフィア製造業指数は6カ月ぶりの低水準。NY連銀製造業指数も一けた台にとどまっている。ムニューシン米財務長官は来年1月初旬の米中貿易協議「第1段階」合意の署名の可能性を示唆したほか、トランプ大統領も先週、習中国国家主席と「良い」電話会談を行ったとしており、正式署名の準備が整いつつあるとした。来年1月に「第1段階」合意正式署名が実現し資本支出に改善が見られるかどうかに注目したい。





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情報提供元: FISCO
記事名:「 NYの視点:米11月コア資本財期待ほど回復せず、2020年にかけても企業の設備投資低迷か