米連邦準備制度理事会(FRB)は1月開催分の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録を公表した。12月会合で2018年4回目の追加利上げに踏み切ったのち、1月会合では利上げを見送った。議事録では、世界経済の成長鈍化や金融市場のひっ迫で、下方リスクが上昇したため、利上げを停止したと説明。見通しが明確化するまで、辛抱強く柔軟な方針が適切だとの判断にいたったとした。

パウエル議長が会見でも指摘したが、議事録ではまた、「金融市場のひっ迫」が、昨年12月から1カ月の間に、タカ派からハト派に一転した一因であることがより明らかとなった。

金融危機からの脱却を目指し、歴史上最大の量的緩和(QE)を実施した結果、FRBのバランスシートは4.5兆ドルに達した。その後、経済の回復に伴い、バランスシートを2017年から正常化している。実験的な試みであるバランスシート正常化の影響はしばらく見られなかった。昨年12月会合後の会見で、パウエル議長は今後も自動的な正常化を継続していく方針を示した。しかし、一部で警告されていたように、利上げと同時のバランスシート縮小の結果、流動性がかなり引き締められ、昨年末の金融市場の変動率を押し上げ。議事録では、ほぼ全メンバーが年内のバランスシート解消停止を望んでいることも明らかになり、FOMCは金融市場の変動率の上昇や「ひっ迫」をようやく認識した形。

経済の判断では、「持続的な成長が継続すると予想」「労働市場は強く、インフレは目標近くで推移すると予想」「最近の消費データは強い」と比較的楽観的な見方が示された。同時に、企業投資が抑制されていること、世界経済や中国経済の成長減速への懸念や貿易、財政策、政府機関閉鎖に関する懸念も認識していると指摘。下方リスクがいくらか上昇したとの判断を示した。2019年の経済も成長鈍化を予想している。本年の利上げに関して、多くのメンバーは2019年にどのような金融政策が必要か確信をもてないでいることも明らかになった。FOMCの見通しが市場の見通しに追いついた形。米国金利先物市場での本年の利上げ確率はゼロ。

クラリダ副議長はCNNとのインタビューで、現在の政策が「非常に良い位置」にあり、今後の政策が経済指標次第であるとの見解を繰り返し、「本年、利上げを見送るシナリオもある」とした。議事録を受けて、キャピタルエコノミックスは、FOMCの利上げ休止の判断は主に国際経済の成長見通しによるところが大きいと指摘。利上げを再開する壁は高く、インフレが基本的な見通しを上回った場合のみに限られると指摘した。




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情報提供元: FISCO
記事名:「 NYの視点:FOMC、本年の利上げ見送る可能性も