米労働省が発表した5月のJOLT求人件数は663.8万件と、4月から20.2万件減少したものの予想662.0万件を上回った。連邦政府、マイニング、石油の掘削、金融、小売りでの求人が増加。また、4月分は669.8万件から684万件へ上方修正され、過去最高を記録、労働市場のひっ迫が再確認された。

求人件数が失業者数を上回り、退職率が17年ぶりの高水準に達し、雇用者の労働市場への自信が強まった。より良い条件を求めて転職も辞さない姿勢が証明された。米6月雇用統計でも非農業部門雇用者数は予想外に2カ月連続で20万人超の伸びを示した。労働参加率も上昇、失業率を押し上げ、FOMCが理想とする雇用環境に近づいた。

マイナス材料としては、長期失業率や改善が見られたものの労働参加率が依然、金融危機前の水準にいまだに戻っていないことが挙げられる。バーナンキ元FRB議長は、長期失業者が失業者全体の4割を占めるのは「異常だ」と語っていたが、その後も状況の改善はあまり見られない。

労働市場はひっ迫しているものの、賃金の伸びは依然低調。労働市場はまだ、過熱状態になく、FOMCも必要以上に利上げペースを加速する必要はない。米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した議事録では、今後12カ月の間、3.4回の利上げを示唆している。一方、金利市場では2回の利上げを織り込んているだけで慎重。債券王として知られたジャナスキャピタルのグロス氏は、利上げペースで「金利市場の見解に同意する」とし、今後12カ月の間、利上げは最大で1,2回の利上げにとどまると見ている。さもなければ、景気後退入りすると警告した。

■雇用たるみダッシュボード

◎危機前に比べ状態が改善             危機前の水準と比較
6月雇用者数(Nonfirm payrolls):+21.3万人(5月+24.4万人) +16.18万人
5月解雇率(Layoffs/discharges rate):1.1%(4月1.2%)     1.4%
6月失業率(Unemploynent rate):4.0%(5月3.8%)        5%
5月求人率(Job openings rate):4.3%(4月4.4%)         3%
5月退職率(Quits rate):2.4%(4月2.3%)           2.1%
6月広義の失業率(U-6):7.8%(5月7.6 %)              8.8%
5月採用率(Hiring rate):3.9%(4月3.8%)           3.8%

◎状態が危機前より依然悪い
6月長期失業率:36.0%(5月35.2%、2016年38.5%)           19.1%
6月労働参加率:62.9%(5月62.7%)                    66.1%



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情報提供元: FISCO
記事名:「 NYの視点:米労働市場はひっ迫、グロス氏は過剰な利上げを警告