米国の3月の利上げがほぼ確実視となる中、ドルの上昇ペースは鈍い。理由はいくつか考えられるが、まず、連邦公開市場委員会(FOMC)が緩やかで辛抱強いペースを崩す可能性は低いことが挙げられる。ふたつめには、トランプ政権の政策がまだ不透明であることが挙げられる。投資家が期待している税制改革の詳細もまだ発表されていない。国境税の行方も不透明。さらに、貿易政策でもロス米商務長官がようやく上院で承認されたばかり。就任直後でチームスタッフも十分にそろっていない。同時に投資家の間では米国の貿易政策が保護主義的な政策にシフトするのではないかとの警戒感は根強い。

就任直後のロス米商務長官は先週メディアインタビューで、まず、北米自由貿易協定(NAFTA)に関して、「米国とメキシコが賢明な合意を結ぶことができればペソの回復につながる」と指摘した。見直し交渉を行う上で米国が優先する課題が「原産地規定を「相当に」引き締めること」とし、ペソ相場の安定確保や地域労働者の賃金と生活水準を引き上げる方策を探るメカニズムも議題に上ると続けるなど、ウィンウィンの協定が可能だとの楽観的見方も浮上。米国大統領選挙でトランプ大統領が勝利したのち、急落していたペソも本年に入り下げ止まっている。

そんな中、対中強硬派として知られる国家通商会議(NTC)ナバロ委員長は全国企業エコノミスト協会での講演で、持続的に高水準にとどまっている米国の赤字を警告。貿易赤字を縮小することにより成長に拍車をかけることが可能だと指摘した。さらに、「我々は貿易での不正行為を厳重に取り締まる」との方針を示したほか、外国資本による米国資産の購入に関して懸念を表明するなど、極めて悲観的な見通しを示した。

報道によると、今月17−18日にドイツのバーデンバーデンで開催が予定されているG20財務相中央銀行総裁会合の共同声明では保護主義に反対する明確な表明が削除される模様。かわりに、「公平で開かれた国際貿易システムを維持する」「経済成長を追求する中で、世界の過剰な不均衡や不平等の縮小、何人も排除されない社会の促進に努める」と草案では明記されると報じられている。この草案をもとに、最終声明がまとめられるようだ。




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情報提供元: FISCO
記事名:「 NYの視点:米国貿易政策、保護主義シフトへの警戒感がくすぶる