[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;29179.84;+143.28TOPIX;1924.31;+4.57


[後場の投資戦略]

 前日の米株式市場では、インフレ過熱懸念の後退と追加経済対策の成立見通しを背景にNYダウが過去最高値を更新した。日経平均も朝方こそ小安く始まったものの、外資系証券の強気の投資判断が見られた海運株を中心に買い優勢の展開となっている。
値がさグロース株が全般軟調だが、ファーストリテは日経平均の押し上げ役だ。日足チャート上で9万円台前半に位置する75日移動平均線水準まで調整が進んだことから、リバウンド期待が高まったとみられる。直近では傘下の「ユニクロ」「GU(ジーユー)」で実質値下げすると発表し、ネガティブ視する向きもあったが、一般消費者の節約志向が強まっているならむしろ今後も有望企業と捉えられるだろう。筆者の周辺はみな「GU」のヘビーユーザーだ。

 さて、とはいえ日経平均は前日の日中高値(29233.47円)を捉えることができず、
高値更新のNYダウと比べると上値が重い印象もある。週末の先物・オプション特別清算指数算出(メジャーSQ)を前にトレンドが出にくい面もあるだろうが、ここにきて日本株が米国株をアンダーパフォームしている感があるのは、2つの理由によるものと考えられる。

 まず、第1に経済協力開発機構(OECD)が9日発表した世界経済見通し。日本の2021年成長率見通しは従来の2.3%から2.7%に引き上げられた。ただ、追加経済対策が成立する公算となった米国は3.2%から6.5%に大幅上方修正。国際株式投資におけるカントリーアロケーション(国月配分比率)が再び米国に傾きそうなところだ。

 第2に、その米経済対策の成立に伴う米個人の資金フロー改善期待だ。今回の経済対策は1400ドル(約15万円)の個人向け現金給付を柱とし、早ければ今週から来週にかけて給付が始まるもよう。このところ長期金利の上昇とともにきつい調整を強いられたハイテク株も、個人の投資資金が再流入することで持ち直すのではと期待する声がある。需給的にも目先は米国株の方が妙味ありと受け止められているのかもしれない。

 また、前日はCPIの伸び悩みで米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和縮小(テーパリング)が遠のくとの期待も出てきた可能性がある。ただ、筆者が今回のCPIから透けて見えたのは「将来不安と資産インフレ観測から、支出を切り詰めて投資にいそしむ米個人の姿」だ。経済実態としてポジティブに受け止めていいものか疑問はある。それに生活物価の下押し圧力の影響を受けるCPIをベースに金融政策を決めるべきか。慢性的に金融環境が緩和的となり、生活物価とは裏腹に資産価格は上昇が続きそうだ。その意味で日本、米国とも個人が株式投資への関心を高めていることは極めて合理的で正しい。しかし、先行きを考慮すれば金融政策の舵取りは一層難しくなったとも言える。
(小林大純)
<AK>
情報提供元: FISCO
記事名:「 「米CPI抑制」はポジティブか?