日本のフィルムメーカーは、生き残りのための方策として、Film to Filmリサイクルに代表される「環境」にフォーカスした技術開発と提案を進めており、資源循環やカーボンニュートラル(CN)を新たな競争の枠組みとしていくことが考えられる。 環境対応は目新しい用途開発や新規需要の取り込みに直結するわけではないものの、あらゆる業界でCNやサーキュラーエコノミーが重要課題となっている現在、材料・部材・副資材のサプライヤーとしてユーザー企業の環境対応ニーズにどう応え、何を提案できるかは、フィルムメーカーの新たな競争軸となり得るだろう。
Film to Filmリサイクルは単に使用済製品を再溶融して樹脂に戻すだけでなく、厚み精度やフィルムの品質をユーザーの要求スペックに保ちながら製膜する必要があり、技術的難易度が高い。特に使用済フィルムを原料とするポストコンシューマーリサイクル(PCR)※では、回収されたフィルムの用途や施されていた加工によって異物が多いケースもある。偏光板用のプロテクトフィルム、リリースフィルムやMLCCの生産プロセスで使用されるリリースフィルムなど、高平滑・無異物・無欠陥といった高い品質管理が求められる製品をリサイクルするにはバージン材を使用する場合以上の製膜技術、品質管理技術が要求される。ここに日本のフィルムメーカーにとっての新たなビジネスチャンスがあると考える。
リサイクル製品の製造は、使用済製品の回収、洗浄・異物除去などにコストがかかるためもバージン製品よりもコストアップとなる。そのため、フィルムメーカーやコンバーターは、リサイクルコストとユーザーの許容価格とをすり合わせながらコストダウンに向けた技術開発を行っていく必要があるが、利益が確保できないほどのコストダウンは避けなければならない。 日本にしかないFilm to Filmリサイクルのスキームと技術、それを背景にしたフィルムの品質で「リサイクル品の相場(=新たな価値)を作りだす」意気込みでの展開が求められている。