株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のデジタル教育コンテンツ市場について調査を実施し、分野別の市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況

2022年度のデジタル教育コンテンツ市場規模(「映像授業」「デジタル教材」「授業・学習支援ツール」3分野の合計)は、事業者売上高ベースで前年度比11.1%増の632億円となった。調査対象3分野のうち、「映像授業」は競合状況の激化によるコンテンツの廉価化や、大学入試の形式の変容として総合型選抜や学校推薦型選抜が台頭し始めたこともあり、一般選抜に対応した学習需要の停滞などを受けて前年度割れとなったが、残りの2分野は経済産業省の「EdTech導入補助金」によるコンテンツ導入のハードル低減などが寄与し市場拡大となった。

当該市場は、コロナ禍で制限された対面教育の代替手段として、学校教育、民間教育ともにデジタルを活用した学習の提供を強力に推し進めた結果、2020年度を境にその規模を大きく拡大させた。特に文部科学省のGIGAスクール構想の前倒しによる小中学校の児童・生徒1人1台の端末整備の実現は、学校現場におけるICT環境を一気に進展させ、2021~2022年度にかけて「EdTech導入補助金」による導入の需要拡大を生じさせるなど当該市場の拡大に寄与した。ただ、学習者用端末の整備は実現したものの、学校ごとで端末の活用状況に対するばらつきが生じていることや、自治体によっては学習用ソフトウェアの導入に関する予算を捻出できずに活用が広がらないといった課題は依然としてみられる。

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2.注目トピック~メタバース(仮想空間)を活用した学習サービスのリリースが活発化

2020年前後より学習塾や英会話などでメタバース(仮想空間:インターネット上でアバターを用いて現実世界に近い状況で活動ができる3次元の空間)を用いた学習サービスが登場しており、2022~2023年にかけて関連サービスのリリース(提供開始)に活発化がみられる。

これらの学習サービスは、オンライン上でも対面での学習指導と同等のコミュニケーションを実現する目的で提供されるケースが多い。生徒はメタバース上に設けられた教室(学習スペース)にアバターとして通い、講師・指導者に気軽に質問をすることや、生徒同士の交流によって学習に対するモチベーションの維持、向上を図ることができる。また、メタバースを活用した学習サービスは、アバターで参加するため不登校の問題を抱える生徒も参加しやすいことや、対面での質問等が苦手な生徒も講師・指導者とのコミュニケーションがとりやすいこと、オンライン上で海外の世界遺産訪問や、安全面で難しい理科実験にも挑戦できるなど、現実世界では体験できないような学びを体感できることなどの特長があり、これらのメリットを求める学習者の需要を享受して、今後も関連サービスを増加させていくものと考える。

3.将来展望

2023年度は「EdTech導入補助金」の付与がなく、予算を捻出できない自治体・学校では学習用ソフトウェアの導入を制限する方向に進んでいることや、民間教育では大学入試の変容により一般選抜に対応した学習需要に停滞がみられていること、コロナ禍を境に活発化したデジタル教材の導入にも落ち着きがみられていることなどから、当該市場の伸び率は鈍化傾向で推移するものとみられ、2023年度のデジタル教育コンテンツ市場規模は前年度比0.5%増の微増で635億円を予測する。

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調査要綱
1.調査期間: 2023年2月~6月
2.調査対象: デジタル教育コンテンツ提供事業者
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2023年6月23日

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情報提供元: Dream News
記事名:「 【矢野経済研究所プレスリリース】デジタル教育コンテンツ市場に関する調査を実施(2023年) 2022年度のデジタル教育コンテンツ市場規模は前年度比11.1%増の632億円