株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、次世代機能性薄膜世界市場を調査し、7区分別や研究機関の動向、将来展望などを明らかにいたしました。ここでは、物理・化学機能薄膜世界市場の将来予測について、公表いたします。

1.市場概要
無機・有機材料など材料の種類に関わりなく、膜厚を数nmから数100nm程度の非常に薄い膜にすると、バルク(固体、かたまり状)とは異なる構造・物性を示すことがあり、最近ではそうした新たな取り組み、さまざまな特徴的な機能を持つ次世代機能性薄膜の開発・研究が盛んに行われている。
本調査では、性質の異なる相と相が接触している物質の界面において、特異な役割を果たす物理・化学機能薄膜である超撥水性薄膜やガスバリア性薄膜、水分離薄膜、超親水性薄膜などを対象とした。2020年の物理・化学機能薄膜世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)は1,413億円を見込む。
また、物理・化学機能薄膜を分類別にみると、超撥水性薄膜が最も大きく、全体の約38%を占めている。これに次ぐのがガスバリア性薄膜で約18%、以下水分離薄膜、超親水性薄膜の順となっている。

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2.注目トピック~ガスバリア性薄膜
一般に、1~5μm程度の孔が開いたフィルムでは液体である水を通すことはできないが、気体や水蒸気の大きさは0.3~0.5nm程度であるため、1nm程度の微細な孔でも溶解と拡散の原理で透過してしまう。
また、一般に工業生産されているポリエチレンであれば、通常、1立方センチメートルあたり4×10の21乗個程度の微細な孔が存在する。こうした微細な孔のあるポリエチレン製の袋は、水は漏れなくても空気は通すので、密閉状態にはならない。
もし、フィルムに微細な孔を含めて全く孔が存在しない状態であるなら、気体を完全に遮断する強力なガスバリア性能を付与することができる。プラスチックフィルムは透明で軽く、コストも安いうえ、形状変化にも優れるため、包装材料としては極めて優秀な素材である。このため、こうした素材にガスバリア性を持たせたいというニーズが存在することから、ガスバリア性能の高いフィルム状薄膜の開発は盛んに行なわれている。

3.将来展望
2030年の物理・化学機能薄膜世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)を2020年比294%の4,150億円になると予測する。分類別にみると、最も高い成長を示すのが水分離薄膜で2020年比640%、一方、2020年時に最も高い構成比を占めていた超撥水性薄膜は同240%と最も低い成長率となっている。

物理・化学機能薄膜は、物質の界面において特異な役割を果たす。バルク(固体、かたまり状)の界面について考慮した場合、バルクと薄膜の違いは歴然である。バルクにおいて、界面は全体のほんの一部でありその挙動が及ぼす影響も限定的であるが、薄膜における界面は圧倒的に多くの割合を占めており、その挙動が及ぼす影響は極めて大きいものとなる。したがって、薄膜の物理・化学機能を考慮する場合には常にその界面の挙動について十分に考慮する必要がある。

薄膜に期待される効果には色々あるが、もっとも分かりやすい効果は単純な厚みの減少である。例えば、エレクトロニクス分野は軽薄短小方向にベクトルが進んでおり、デバイスの小型化が加速化されてきた。部品を構成するモジュールの大きさもますます小型・薄型になり、ナノテクノロジーの領域に入っている。さらに、材料が持っている様々な物理・化学的性質自身がサイズの縮小とともに大きく変わってくる効果も期待されており、これが劇的な変化をもたらす。こうした著しい効果が発現するので、軽薄短小の試み(次世代機能性薄膜の開発)は、これからも止まることがない。

※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
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調査要綱
1.調査期間: 2020年8月~2021年3月
2.調査対象: 物理・化学機能薄膜関連の技術研究機関、生産販売または取扱企業等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2021年6月25日

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情報提供元: Dream News
記事名:「 【矢野経済研究所プレスリリース】物理・化学機能薄膜世界市場に関する調査を実施(2021年)~2020年の市場規模は1,413億円見込、超撥水性やガスバリア性、水分離、超親水性等の機能を発揮~