PODは、高齢患者に頻繁に見られる合併症で、短期および長期の転帰の悪化や長期的な認知機能障害を伴う場合が多くあります。研究者らは、PODの発現率が全身麻酔時のEEGバーストサプレッションの長期化と関連していることに着目し、術前から存在する特定のEEGシグネチャがPOD発現のリスク上昇に関連しているかどうかを究明しようとしました。
研究者らは、2014年11月から2016年12月の間に、シャリテー・ベルリン大学病院(キャンパス・フィルヒョウ・クリニクムおよびキャンパス・ミッテ)において、60分以上の待機的手術を予定している65歳以上の患者237人を登録しました。SedLine搭載Masimo Root®を使用し、麻酔導入前から意識が戻るまでの間の前頭部脳波を記録しました。研究者らはSedLineのデータを用いて、SEF(EEGパワーの95%が下に位置する周波数)、患者状態指標(麻酔薬の効果に関連する信号処理EEGパラメーター)、バースト・サプレッションの持続時間を含め、EEGから導出した種々のパラメーターを分析するとともに、マルチテーパースペクトル分析を行って、さまざまな周波数帯における前頭部の全体的なパワースペクトルを算出しました。PODのスクリーニングは、術後7日目(または退院)まで毎日2回、看護せん妄スクリーニング尺度(NU-DESC)やせん妄評価法(CAM)を含め、各種の標準的な基準に基づいて実施しました。スクリーニング結果が1つ以上陽性だった患者をPOD患者に、残りの患者をNoPOD患者に分類しました。
237人の患者のうち、41人(17%)がPODを発現しました。研究者らは、POD患者の術前のEEGで、2つの要素が低い値と関連していることを発見しました。すなわちSEF(POD群:13.1±4.6Hz、NoPOD群:17.4±6.9Hz、p=0.002)とγ帯パワー(POD群:-24.33±2.8dB、NoPOD群:-17.9±4.81dB)です。麻酔導入後の絶対的なα帯パワーも有意に低い値でした(POD群: -7.37 ± 4.52 dB、NoPOD群: -5 ± 5.03 dB)。POD患者では、術前と麻酔導入後のSEFの比は1以下でしたが、NoPOD患者では1を超えており、意識消失に伴うEEG減速を示していました。最後に、PODは術前のSEF(p=0.025、オッズ比=0.892、95%CI 0.808~0.986)、術前のγ帯パワー(p=0.029、OR=0.568、95%CI 0.342~0.944)、SEF比(p=0.009、OR=0.108、95%CI 0.021~0.568)と独立して関連していました。
研究者らは、次のように結論付けています。「術前のSEF低下、術前状態から無意識状態に移行する際のEEG減速がないこと、両状態に関連する周波数帯の脳波パワー低下が、PODの発現に関連している。これらの知見は、基本的な病態生理を示している可能性があり、POD発現のリスクがある患者を早期に発見するためのEEGベースのマーカーとして利用できるかもしれない。」
著者らはまた、次のように述べています。「術前のEEGスペクトルシグネチャと意識消失時のEEGダイナミクス低下は、高齢患者におけるPOD発現と関連しており、EEGシグネチャの変化は、POD患者におけるGABA作動性ニューロン活性化の低減と関連している可能性が非常に高い。これらの知見は、PODのEEG素因と表現できるもので、POD発現のリスクがある患者を早期に発見するためのEEGベースのマーカーとして利用できるかもしれない。」
スタンフォード・ヘルス・ケアの麻酔科教授であるデビッド・ドローバー医師(MD)は、次のように述べています。「今回の研究は、既存の知識をさらに裏付けるだけでなく、臨床医が高齢患者の術後転帰を改善する上で脳機能モニタリングを役立てる方法についての私たちの理解を広げるものです。」
術後せん妄とは、注意力や意識の変化、混乱した思考を特徴とする急性の精神錯乱状態です。一般的な重篤合併症であるPODは、大規模な手術を受けた患者の最大60%が罹患し2-5、高齢者で最も頻度が高くなっており2-5、重症患者の最大91%が罹患しています6。PODは、短期的および長期的な転帰の悪化とコストの増加に関連しており3,6-9、米国麻酔科学会(ASA)、英国国立医療技術評価機構、米国老年医学会、米国外科学会など、多くの医療団体がPODの予防を公衆衛生上の優先事項としています10-13。ASAのブレインヘルス・イニシアチブは、既存の認知障害の影響を最小限に抑え、65歳以上の成人が手術を受ける際の認知機能の回復と周術期の体験を最適化することに専心しており、PODを「公衆衛生上の主要な課題」と表現しています14。PODの発現率は、術前の脆弱性と、術中のEEGバースト・サプレッションの累積時間(今回のような研究で重要な意味を持つ)の両方に関連しています。数多くの研究で明らかになったように、手術中の信号処理EEGモニタリングにより、臨床医がバースト・サプレッションの時間を最小限に抑えることができれば、PODの発現率を下げられる可能性があります15-19。
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マシモ(NASDAQ: MASI)は世界的な医療技術企業として、革新的な測定法、センサー、患者モニター、自動化ソリューション、接続ソリューションを含め、業界をリードする多様なモニタリング技術の開発・製造に当たっています。当社の使命は、患者転帰を向上させ、ケアのコストを削減することです。1995年投入のMasimo SET® Measure-through Motion and Low Perfusion™(体動時・低灌流時モニタリング可能)パルスオキシメトリーは、他のパルスオキシメトリー技術より性能面で優れていることが100件を超える独立した客観的研究で示されています20。またMasimo SET®は医師が新生児における重度の未熟児網膜症を減らし21、新生児におけるCCHDスクリーニング値を改善し22、術後の病棟におけるマシモ・ペイシェント・セーフティーネット(Masimo Patient SafetyNet™)での連続的モニタリングで使用した場合、救急対応チームの実動、ICUへの移動、コストを削減する23-26ことが示されています。Masimo SET®は世界各国の主要な病院やその他の医療現場で推定2億人以上の患者に使用されており27、USニューズ&ワールド・レポート誌の2021-22年全米優良病院ランキング28において上位10病院中の9病院で最重要のパルスオキシメトリーとなっています。マシモはSET®の改善を続けており、2018年には体動時の状態におけるRD SET®センサーのSpO2精度が大幅に改善されたことを発表し、医師らが頼りにしているSpO2値は患者の生理状態を正確に反映しているとの信頼感を高めることとなりました。2005年、マシモはrainbow® Pulse CO-Oximetry技術を発表し、それまで侵襲的な手段でのみ可能であった血液成分モニタリングを非侵襲的、連続的なものとすることを可能にしました。測定できるのは、トータルヘモグロビン濃度(SpHb®)、酸素含量(SpOC™)、カルボキシヘモグロビン濃度(SpCO®)、メトヘモグロビン濃度(SpMet®)、脈波変動指標(PVi®)、RPVi™(rainbow® PVi)、予備酸素摂量指数(ORi™)です。2013年、マシモは患者モニタリング&コネクティビティ・プラットフォームRoot®を導入しました。本プラットフォームは可能な限り柔軟で拡張可能なものとなるようゼロから構築し、その他のマシモ製モニタリング技術やサードパーティー製モニタリング技術の追加を容易化しました。マシモの重要な追加技術には、次世代SedLine®脳機能モニタリング、O3®リージョナルオキシメトリー、NomoLine®サンプリングライン付きISA™カプノグラフィーが含まれます。マシモの連続モニタリング/スポットチェック製品ファミリーPulse CO-Oximeters®には、Radius-7®やRadius PPG™などのテザーレスなウエアラブル技術、Rad-67™などのポータブルデバイス、MightySat® Rxなどのフィンガーチップパルスオキシメーター、Rad-97®などの病院と自宅の両方で使用できる装置を含め、様々な臨床/非臨床シナリオで使用できるようデザインした装置があります。マシモの病院自動化/接続ソリューションはMasimo Hospital Automation™プラットフォームを中心に構成されており、Iris®Gateway、iSirona™、Patient SafetyNet、Replica™、Halo ION™、UniView®、UniView: 60™、Masimo SafetyNet™を含みます。マシモと当社製品の追加情報については、www.masimo.comをご覧ください。マシモの製品に関して発表済みの臨床研究の結果はwww.masimo.com/evidence/featured-studies/feature/でご覧いただけます。
ORiおよびRPViはFDA 510(k)承認を取得しておらず、米国では販売されていません。Patient SafetyNetの商標の使用は、ユニバーシティ・ヘルスシステム・コンソーシアムからのライセンスに基づいています。
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