『一生太らない魔法の食欲鎮静術 食事瞑想のススメ (Business Life)』
(クロスメディア・パブリッシング)
ビュッフェスタイルのお店へ行くと、ついつい食べ過ぎてしまうという人がほとんどではないでしょうか。
端から端までズラッと並べられた数々の料理に心奪われ、あれもこれもとよそってしまう。
最後の一品を取る頃にはすでにお皿は盛りだくさん……
なんて経験、あなたにもきっとあるのではないかと思います。
お得だからといつもの3倍も4倍も食べて、
「ああ、食べすぎてしまった。どうしよう、太っちゃう……」と、
後になってとてつもない罪悪感に駆られる、
というの は典型的な食べ放題あるあるです。
舌先と胃の感覚が研ぎ澄まされてくると、食事をすっぱりやめることができるようになります。
それだけでも十分に食欲をコントロールできているのですが、ここまでお伝えしてきたのは、すべて食事中・食後の食欲鎮静です。
私は、食事瞑想の目指すべきゴールは「食べる前を制覇すること」だと考えています。
なぜなら、食べる前とは一番食欲に支配されている状態であり、「食べたい」 という衝動が強くなっているからです。
食べる前の食欲をうまく鎮静できるようになってこそ、食欲との闘いが終わるのだと思います。
その食欲の原因は、ストレスからの甘いものなのか、
ラーメンの匂いからの衝動なのか、
それとも単にお腹が空いているだけなのか……。
本当に胃が欲しているかどうかを見極めて不要な食欲を食べる前に鎮められるようになること、それが私の理想とする食事瞑想のゴールです。
ここまでできるようになると、食前の段階で食欲の衝動に振り回されなくなり、心がとても平和になります。
「幸せ」というより「平和」のほうが表現としてしっくり きます。
食べることはあなたを幸せにするものですが、それが偏りすぎてしまうと
食べるために仕事する、
食べるために生きる、
になってしまいます。
しかし、本来は逆なはず。
生きるために食べるんです。
食べることはあなたの生きる目的にはなりません。
食に振り回されない状態こそ、あなたの人生に幸せをもたらす食事となるのです。
私は食事瞑想の幸せはそこにあると思います。
食で満たされたら、食事以外の時間に幸せと平和が訪れます。
お腹が減ったと思ったら、まずは胃に聞いてください。胃の重さを感じてみるのです。
胃は常に重さを発信しているので、それを確認します。
そのうえでもう一回、食べたいものを想像したり、目で見てみたりしてください。
多くの場合、これで自分が本当に欲しているのかがわかるようになってきます。
おなかが減っていない場合は胃が重いはずです。
しかし、それでもわからない場合は舌先に聞いてください。
少し舌先に唾液をあてたり丸めたりして舌先の感覚を探ります。
それでも食べたいと思うようならば、それは必要なエネルギーです。
ありがたくいただきましょう。
想像するとちょっと変態チックですが、食事瞑想をある程度経験してきたならば、必ず「なるほど」という、しっくりくる、舌先と胃の声がわかる瞬間が訪れます。
自分が何を食べたいかではなく、体が何を欲しているのか、それがわかったとき、食欲は不思議と落ち着くようになっているのです。
ちなみに、食べ放題やビュッフェスタイルの食事をするときには、すぐに列に並ばないのが得策です。
どんな料理があるのか全体を外からぐるりと一周してから並ぶと、食欲も落ち着きやすく、食べたいものの配分がうまくできます。
「それでもやっぱり食欲がおさまらない」と、
壁にぶつかってしまう人たちがいるのも事実です。
「間食のスナック菓子とか、袋入りのお菓子とか、そういうものを一度開けてしまうと、なくなるまでやめられないんです。」
たとえばこうした症状を食欲の強さと間違える方がいますが、実はそうではありません。
この方々が食べるをやめられない理由。
それは「一口目の噛む」がやめられないからです。
カウンセリング中、こうした症状を訴えるお客様は、最終的に「ストレスがたまると固いものが食べたくなる!」と言う傾向が強くなります。
ナッツやおせんべい、飴など、固いものがどうしても欲しくなるというのです。
つまり、彼らが食べることをやめられなくなる1つの理由は、「固いものを噛む」 に取り憑かれていることです。
前歯で食べ物をかじったら、一口目は奥歯で噛むのですが、食べるがやめられない方はその一番最初のガリッと噛む快感を求めています。
固いものを噛んだときの強い刺激を快感として感じるので、永遠に食べることを続けたくなってしまいます。
厄介なのが、一口目しかその快感を得られないこと。
舌先で味わっていると、食べ物はどんどん柔らかくなっていき、
いくら噛んでも快感として受け取れなくなります。
やがて噛み方も食べ方も適当になり、さっさと胃に放り込むことになります。
そして、まだ口の中に食べ物が残っているのに一口目の快感を求めて口の中にものを入れたくなるのです。
こうなるともう満腹感など関係ありません。
目の前にある自分に快感をくれるものがなくなるまで永遠に食べ続けます。
この一口目の快感に取り憑かれている方は、「食べることがやめられない」と言い ますが、そうではなく、「一口目の噛む」がやめられないのです。
また、普通の食事は問題なく舌先で味わえるのに、間食になると止まらなくなる、 という方は、この手の刺激に取り憑かれている可能性があります。
もし、あなたが「一口目を噛む」に思い当たる節があるなら、もしかしたらそれは、
「食べることが過去の出来事と結びついているから」
かもしれません。
あるお客様に、飴がやめられない方がいらっしゃいました。
その方は、ひたすら飴を噛むのです。ひどいときには1日3袋食べると言います。
自分でも異常だと思うけれども、どうしてもやめられないと悩んでいました。
彼女の話をよくよく聞いてみると、その癖が始まったのは3年前からで、ちょうど恋人が突然姿を消した時期と重なることがわかりました。
どうやら、そのときに受けた心の傷がきっかけで、彼女は孤独や不安、悲しみに襲われると、無意識のうちに飴を食べるようになっていたようなのです。
飴が彼女の心を癒していたのですね。
これは特別な例だと思われるかもしれませんが、実は誰にでもあることです。
あなたは「おふくろの味」と言われて何を思い出しますか。
お味噌汁なのか、肉じゃがなのか、カレーなのか。
ちなみに私の場合は、いりこの出汁とドーナツです。
今は母の手料理を食べる機会も少なくなりましたが、100%手作りのドーナツや、風邪で学校を休んだときにつくってくれたいりこ出汁のおうどんは、思い出すだけでも心を温めてくれる、思い出の味です。
食事は生まれてから一番最初に覚える行為です。
そして今まで1日3回、絶えることなく繰り返し行われてきました。
それが経験や記憶と結びついて、感情や食行動を引き起こしていることは多々あります。
発展途上国では、小さい頃に与えられる食事が発育・衛生上よくないものであることもあります。
そういうものを「母親の味」として育ってしまった子どもは、それを食べることで精神的な癒しを感じるようになります。
にもかかわらず、「これは体によくないものだから」と栄養面だけをみて取り上げることは、精神衛生上その子にとってよくないものになってしまうのです。
私はお客様の食欲と心の結びつきを知るために「おふくろの味は何ですか?」と聞くようにしています。
最近は「おふくろの味なんてない」と言われる方がとても増えました。
もちろん時代は変化しているわけですから、昔のような完璧な食卓を目指そうとは思いません。
でも、「朝食はお菓子、夜食は買っただけのお惣菜」という食生活を定着させることがいかに子どもにとってリスクがあることかは、おわかりいただけるのではないでしょうか。
食育は体の発達だけでなく、心や感情の発達、そして大人になってその子が何を選択できるかに非常に重要な役割を果たしているのです。
そして、この刺激の強い「噛む」がその刷り込みによりストレスを感じたときに欲することが多いことに気づきました。
もしかしたらあなたの食欲は食べたいではなく「噛みたい」かもしれません。
そんな方にこそ、食事瞑想は効果的です。
噛むことでしか感じられていなかった快感を「しっかりと味わう」に変えていけるのですから、心も満たせるし自然とやめられます。
自信を持ってお勧めします。
あなたのやめられない、は必ずやめられます。