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目を使った作業をし過ぎることで、目の疲労感だけでなく肩こりや頭痛など全身に不調が現れる状態が眼精疲労です。スマホやパソコンを凝視しがちな現代人は、知らず知らずのうちに目の疲労をどんどん蓄積させています。休憩や睡眠を取っても疲労や不調が改善されない方は、疲れ目の放置から慢性的な眼精疲労を引き起こしている可能性があります。
眼精疲労の原因は「凝り」、つまり一種の「血流障害」です。パソコンやスマホの画面を長時間見ている時、目のピントは近距離の狭い範囲の中で固定し続けられています。本来、人の目は近くを見るようにはつくられておらず、構造的には遠くを広く眺めるようにできています。そのため、視作業が長く続くほど、眼球を動かす筋肉内の血流は悪化、疲労物質が溜まってしまい、結果、ピントを調整する力が弱くなって目が疲れてしまうのです。
涙は瞳の乾燥を防ぐとともに、老廃物を洗い流し、酸素や栄養を眼に届ける役割を持っています。しかし、パソコンやスマホの画面を長時間眺めていると、まばたきの回数が減って涙の供給量が減ってしまいます。目の表面を覆う涙は光の屈折率にも影響しているので、目が乾燥すると疲れを感じるだけでなく実用視力も低下します。何かに集中していると瞬きの回数が極端に減るという方は特に注意が必要です。
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最近ではブルーライトカット機能を有したメガネやディスプレイフィルターが登場していますが、実はブルーライトを浴びることが視力低下や目の病気の直接的な原因になるのか、まだはっきりとわかっていません。そもそもブルーライトとは、光の波長がおよそ380~500nmで、角膜や水晶体を透過し網膜に到達する光の中では紫外線に最も近い強いエネルギーを持つ光です。この光は目の奥に届くため、人体への悪影響が懸念されているのです。
注意すべき点は、パソコンやスマホなどブルーライトを発する電子機器を就寝前に使用することです。2015年に発表されたハーバード大学の研究※では、ブルーライトが自律神経に作用し、寝つきが悪くなったり睡眠の質を低下させる影響が指摘されています。睡眠は目の疲労を回復させるために欠かせません。ドライアイを防ぐためにも、モニターを夜まで見続けることは避けるべきです。もちろん不安な方は日中もブルーライトカットメガネをつけるなどの対策をしても良いでしょう。
人の体では、自律神経(交感神経と副交感神経)がバランスを保ちながら消化器や循環器など様々な働きを調節しており、焦点を合わせる働きをもつ「毛様体筋」にも影響しています。目を酷使し続けていると、脳にストレス反応が起こり、体を緊張させる交感神経が優位に働きはじめます。モニターの見過ぎなどの視作業だけでなく、仕事の進捗に焦る・人限関係に悩むなどの精神的なストレスや、食べ過ぎ・睡眠不足などの生活習慣の乱れも自律神経のバランスを崩す原因です。こうなると、目の機能がさらに悪化するだけでなく、肩こりや睡眠障害、イライラしやすくなるなどの全身に不調が起こってきます。
自律神経のバランスが崩れると、顔面や首の筋肉は緊張し、脳への血流も悪くなります。栄養状態が悪くなった脳の働きは悪くなり、思考力、集中力に影響します。したがって、予防のためのアイケアをしっかり行うことは、作業効率を高める大きなカギになります。
ここからは、眼精疲労の予防・対策について紹介します。
Web上の資料を目で追う、スマホで動画を視聴するなどの行為は、同じ姿勢で長時間することが多く、だんだんと前かがみになって猫背やストレートネック状態になりがちです。悪い姿勢で作業すると、目を疲れさせるだけでなく首や肩などの筋肉にも「凝り」を生じさせ、眼精疲労を加速させてしまいます。
しかし、対策としてパソコンの利用時間を制限するというのはデスクワークを主とするビジネスパーソンには現実的な方法ではありません。重要なのは、正しい環境と姿勢で作業すること、そしてこまめに目を休ませることです。
厚生労働省は、VDT(Visual Display Terminals)作業に従事する労働者の心身の負担を軽減させることを目的とした「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を公表しています。この記事では、ガイドラインの中からデスク周りの作業環境に関するポイントを抜粋して紹介します。
■椅子
■机
■パソコン
■作業姿勢
机と椅子をセッティングする際には、正しい姿勢で座ったときに膝・腰・肘が90度になるように調整します。また、ディスプレイの位置が低かったりノートパソコンを使用していると、前のめりになりやすく首や背中が曲がってしまうので、上記の正しい姿勢で座った時に目線の正面に来るように置いてください。
昨今では新型コロナウイルス感染症の流行から在宅勤務を取り入れる企業も増えていますが、自宅でPC作業をする場合も今回紹介したポイントを押さえて環境整備をしてみましょう。また、会社側も、従業員が自宅で滞りなく業務ができるようにサポートする必要があります。
参考:テレワークのデスク環境そのままで大丈夫? ~在宅勤務手当だけでは不十分なテレワーク支援の必要性~
上下のまぶたには、マイボーム腺と呼ばれる分泌腺があります。マイボーム腺から出る脂質は涙をまんべんなく角膜上に広げ、かつ蒸発するのを防ぐ働きを持っています。まぶたを温めることで、分泌腺内の固まった脂が柔らかくなって開口部が開きやすくなるので、ドライアイを防いでくれます。目周りの血流をよくするにも効果的なので、目をたくさん使った日はホットアイマスクなどで5分程度まぶたを温めてみましょう。ただし、目の充血や痛みがある場合は、かえって炎症を悪化させてしまうので控えてください。
「ブルーベリーが目に良い」とよく耳にしませんか?
ブルーベリーが目の健康に良いとされるのは、抗酸化成分・アントシアニンが豊富に含まれているからです。この「抗酸化成分」は近視や老眼、白内障、加齢黄斑変性などを引き起こす「活性酸素」を抑えています。
人口光に晒されながら日々作業しているデスクワーカーは、バランスのとれた食事だけでは目の疲労を解消しきれないことがあります。目に良いとされる食材を摂り、足りない部分はサプリメントも利用するなどして意識的に目の栄養補給をしましょう。この記事では『はたらく人の目の強化書』から、アントシアニンを含む4つの抗酸化成分とそれらを含む食材を紹介します。
■アントシアニン
ポリフェノールの一種。抗酸化作用のほかに、「ロドプシン」という網膜内のたんぱく質の再合成を助け、目の神経伝達をよくする働きを持っています。
多く含む食材:ブルーベリー、ビルベリー、ぶどう、ナス、紫芋、しそ、赤キャベツ、黒豆
■ルテイン
緑黄色野菜などに含まれる色素で、脂溶性成分(水に溶けにくく油に溶けやすい性質)を持っているので効果的に摂取するには油と一緒に調理することがおすすめです。ブルーライトや紫外線などの有害な光から目を保護するほか、加齢による目の病気に対する効果も期待されています。
多く含む食材:ほうれん草、ブロッコリー、葉レタス、ケール、グリーンピース、芽キャベツ、とうもろこし
■ゼアキサンチン
ゼアキサンチンとは体内の代謝によってルテインが作り変えられたもので、構造や働きはほとんど同じです。
多く含む食材:ほうれん草、ブロッコリー、パプリカ、とうもろこし、マンゴー、パパイヤ
■アミノ酸・ビタミン
アミノ酸には、免疫力を高めたり、披露した筋肉を修復するといった効果があります。
多く含む食材:肉、魚、卵、乳製品、大豆製品(たんぱく質を多く含む食べ物)
ビタミンAには目の粘膜を強くし、目の疲れや乾燥を防ぐ働きがあります。不足すると、明るい場所から突然暗い場所に移ったときに目がなかなか暗さに慣れず物が見えにくくなることも。とくに目の疲れに有効とされるビタミンB1を含むビタミンB群も積極的に摂取したい栄養素です。
多く含む食材:にんじん・ほうれん草などの緑黄色野菜、レバー、うなぎ、卵黄
手軽に目の「凝り」を緩和できるおすすめの方法が、目のツボを指圧するマッサージです。疲労感やストレスを溜めないために、目の疲れを感じた時は「目ツボマッサージ」ですぐにリフレッシュしましょう。
パソコン作業の合間や入浴中などのスキマ時間にぜひ試してみてください。
いやいや、自分が作業しやすいようにデスクは整えている。こまめに休憩もしているし、アイケアもできるだけ試した!それでも不調がとれない…すぐ目が疲れる…
そんな慢性的な眼精疲労に悩んでいる方は、目が疲れる原因②のストレスや自律神経の乱れが解決していない可能性があります。紹介したように、目の疲れ、またそれによって引き起こされる身体の不調は色々な要因が重なって引き起こされています。アイケアだけでなく生活習慣の改善やストレスの解消にも取り組んでみましょう。
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※https://hms.harvard.edu/news/e-readers-foil-good-nights-sleep
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