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下肢静脈瘤のよくある症状として、足のだるさやむくみなどに加え、コブや細かい血管が生じるという外見の変化があります。これらの症状は進行の程度によってどういった症状がでるかがある程度決まっています。どこまで進んだらどういった症状がでてくるのかを知ることは、自分が治療するかを決める大事な目安となりますので、ご説明していきたいと思います。
命に関わらない病気とはいえ、最後まで進行してしまうと足の黒ずみや皮膚に穴があく潰瘍といった病状にまで進行してしまうこともありますので、ぜひ自分がどのステージであるかを知って、手遅れにならないうちに治療を検討することをおすすめします。
ここでは、8つのステージ別の症状を大まかに説明します。
ステージ1は初期症状です。見た目では、ほとんど変化がありません。「かくれ静脈瘤」もこの段階であることが多いです。 運動不足や疲れ、加齢による症状と区別がつきにくいので、下肢静脈瘤だと気づく方は少ないのが実情。しかしこの初期段階の方たちも含めると、30歳以上の半数が発症しているという状況なのです。
見た目の変化として、いきなりコブができる方は少ないです。その前に、静脈の流れが少し悪化した状態は、まず細い血管が目立つようになります。特に太ももの外側やひざの内側、足首の内側に多いです。
ステージ2からは目で見える症状なので、自覚のある方はご自分の足をよくご覧になってみてください。
なお、かならずしも(ステージ1)→(ステージ2)の順序で起きるとはかぎりません。逆の順番で起きたり、気が付いたころには両方の症状があったりすることも多いのです。
ステージ1、2の段階を放っておくと、徐々に逆流する血液の量が増え、血管が膨らんできます。はじめのうちはコブにならないまでも、ふと気が付くと血管が太くなって目立つようになっていたり、見た目ではわからないけれど、皮膚に触れてみると皮膚の下に太くなった血管がわかったりすることがあります。これはコブになる前段階です。ここまでくると、しっかり検査をされたほうが良いでしょう。
発症時期については、ステージ3と前後することがありますが、血液のうっ滞によって、汚れた血液が足にたまることで、湿疹(皮膚炎)を起こしやすくなります。ほとんどの場合、頑固なかゆみを伴うので本人にとっては非常にストレスになります。
コブがない時期ですので、単なる皮膚のトラブルと思って、まず皮膚科へ向かってしま う方が多いのです。 皮膚科で処方されたステロイド剤などをぬることで一時的にかゆみは引きますが、 下肢静脈瘤を治療しないかぎり、湿疹やかゆみは再発します。なぜか治らない足の皮膚炎は「かくれ静脈瘤」が原因の可能性がありますので注意してください。
ステージ5まで進行すると、血管が膨らんで皮膚を持ち上げるようになります。ここまでくると誰が見てもコブとはっきりわかるようになります。このコブはだんだん大きくなり、数も増えていきます。ふくらはぎだけにできていたコブが太ももにも広 がってくることもあります。
ここでご注意いただきたいのが、見た目には目立つようになってもそれ以外の症状が ないことが多いという点です。症状がないため、この段階まで進んでも大して気にかけずに放っておいてしまう方が多くいらっしゃいます。特に男性に多いです。 そのコブは加齢によって生じる単純な変化ではなく病気ですので、このステージまで進行した場合は放っておかず、かならず医療機関を受診してください。
さらに進行すると、ふくらはぎや足首、くるぶしなどに変化があらわれます。黒ずんだり赤黒くなったりするのです。これは、血液のなかの鉄分が肌の表面までにじみ出て、色素が沈着してしまって起きる症状です。
下肢静脈瘤によって肌の一部が黒ずんでしまった場合に治療で治るかどうかに関しては、症状が出ていた期間などによって、改善する方としない方にわかれます。
まだ黒ずみの範囲がせまい方は、治療すれば元の皮膚に戻る方が多いです。手術によって下肢静脈瘤を治して血行がよくなると、黒ずみも時間をかけて薄くなっていきます。その一方、長期間放置して皮膚一面が黒くなっている場合は、治療をしても黒ずみが残る可能性が高いです。
黒ずみになってもさらに放っておくと、皮膚がカチカチに硬くなって部分的に痩せたような状態になるケースがあります。これは、「脂肪皮膚硬化症」といって、血液がたまり静脈高血圧の状態になって炎症を起こし、皮膚だけでなく皮下脂肪までが変性して縮んだことによる症状です。ここまで進行すると、前はあったコブが皮膚でフタをされてしまって、見えなくなります。これも「かくれ静脈瘤」のひとつで、医療機関を受診しても下肢静脈瘤と診断されないことがあります。
この状態に至ってしまうと皮膚だけの問題ではないため、外見を完全に元に戻すことはできません。しかし、手術によってうっ血状態をなくすことで周囲の健康な皮膚や組織からの細胞再生が起こり、色素沈着や硬化の範囲がある程度小さくなるという ことは期待できます。ステージ8の潰瘍に進行してしまうことを予防するためには、急いで治療を受けることが望ましいという段階です。
症状が最も進行したステージ8になると、いよいよ血管や皮膚が耐えられなくなって潰瘍(皮膚や粘膜の一部がただれ、穴があいた状態)になり、ときには出血、痛みや発熱が伴うこともあります。
コブになってしまった下肢静脈瘤がどんどん悪化しても放っておくと、周辺の皮膚がどんどん悪くなり、先ほど述べた色素沈着や皮膚硬化・湿疹にとどまらず、皮膚がただれていきます。出血や痛み、発熱などにいたると、命に別状のない病気であっても日常生活で常に悩まされるでしょう。
また、細菌に感染しやすい状態でもあります。 潰瘍にまで進行してしまうと、毎日軟膏を塗ったりガーゼ交換が必要になったりと、 普段の生活に大幅に支障をきたすようになります。まさかと思われるかもしれませんが、ここまで進行してからやっと来院される患者さまもいらっしゃるのが実情です。
下肢静脈瘤はたとえステージ8まで進んでいても治療は可能ですが、早い段階で治療するほど、健常な状態に戻りやすくなります。
実はこれは患者さまだけの問題ではなく、ひと昔前はコブの段階になっても治療に積極的でない病院も多かったのです。皮膚の色が変わってようやく手術をする、それが下肢静脈瘤治療のスタンダードでした。
しかし、日本の高齢化に伴い老年になっても元気な身体でいることの意義が高まってくるにつれ、なるべく早期に治療したほうが健康寿命をのばすために良いという認識に変わってきたのです。また、昔は入院しての大手術が当たり前だったのですが、身体への負担が少ない日帰り治療が普及してきたことによって、医療者側にも患者さまにとっても早い段階で手術をすることのハードルが下がったともいえます。
あなたの足、かくれ静脈瘤ではありませんか?
足のむくみがつらい。いつもなんとなくだるい。足がつってなかなか寝付けない。このような症状に悩まされているとしたら、あなたは「下肢静脈瘤」かもしれません。少し詳しい方であれば、「静脈瘤といえばコブがあるはず」と思うかもしれませんが、実は見た目ではほぼわからない静脈瘤(本書では「かくれ静脈瘤」と呼びます)もあります。そして日本人の10人に1人は発症すると言われているのです。
本書では、下肢静脈瘤を専門とするクリニックを開院し、2年にわたりミス・ワールド日本大会の公式ドクター兼審査員も務めた著者が、下肢静脈瘤の治療の方法や悪化を防ぐための対策をご紹介します。
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