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下肢静脈瘤は30代以上の半数に発症する可能性があり、かつ徐々に進行するので自覚しにくい病気です。どのような方が下肢静脈瘤になりやすいか、そしてどのような症状があれば下肢静脈瘤が疑われるかをこれからお話しします。「私にはコブはないよ」と言う方も、のちにご紹介するような症状に心当たりがないか考えながら読み進めてみてください。
出産経験のある女性の2人に1人が下肢静脈瘤を発症する(※1)と言われています。妊娠したときのホルモンの影響で静脈がやわらかくなることに加えて、腹圧の上昇が弁に負担をかけるため、静脈内の弁がダメージを受けやすく、発症リスクが高まるのです。
また、男性よりも女性の方が下肢静脈瘤になりやすいということが、データや全国の医院にかかっている患者さまの傾向からわかっています。ほかにも理由をあげるならば、女性の方が男性に比べて弁がもろくて弱かったり、筋力も弱く、筋ポンプ作用が働きにくかったりするためだと一般的に言われています。
運動不足だと足の静脈の流れがとどこおります。筋肉が衰えると、筋ポンプ作用も弱まってしまいます。肥満そのものも、血中コレストロールが多く血液の粘度が高くなるため、下肢静脈瘤の原因になる可能性があると言われています。
下肢静脈瘤は、年齢を重ねるほど発症しやすい。これは、先ほどデータでお見せしたなんぶとおりです。その理由は、加齢によって全身を構成している軟部組織(コラーゲンや弾性線維など)の強度が弱まるため、軟部組織でできている静脈の逆流防止弁が減ったりこわれたりするからです。また、筋肉量が減ることで筋ポンプ作用が弱くなるのも原因のひとつです。
下肢静脈瘤の原因は、静脈の弁が機能不全をおこすからだとお伝えしましたが、この弁の強度には遺伝性があります。両親が発症している場合は、その子どもも弁が弱い傾向にあり、9割が発症する(※2)というデータがあります。両親は下肢静脈瘤じゃないから大丈夫、とは思わないでください。ご両親が足を見せないだけかもしれませんし、ご両親自身も下肢静脈瘤だと気づいていないだけかもしれません。
スーパーのレジ打ち担当や、狭い厨房やカウンターで調理する仕事、教師、警備員など、あまり動きまわらずに長時間立ちっぱなしの仕事をされている方は要注意です。足を曲げ伸ばしする動きがあまりないため筋ポンプ作用は働かず、立ちっぱなしなので重力の影響で静脈を流れている血液も心臓に戻りにくい状態になります。1日10時間以上立っている方は、重症化しやすいので特に注意してください。
座ってさえいれば安心、というわけではありません。座っていても、足をほとんど動かさずに、ずっと同じような姿勢で仕事をしている方は注意が必要です。座っていても、重力の影響で血液が心臓に戻りにくいのは立っているときと同じ。足を動かしていないため、筋ポンプ作用が働きません。
いつもズボンをはいている男性は自覚しにくいと先ほど述べました。足に少し違和感があっても、足の外観が多少変わっていたとしても、気づかなければどうしようもありません。気づいていたとしても、仕事が忙しくて病院へ行かない方もいらっしゃいます。ゆえに下肢静脈瘤となり、悪化させてしまう男性の方が多いのです。
ここで、セルフチェックをしてみましょう。最初の「外観チェック」で確認すべき部位をならべています。次の「症状チェック」と「生活・行動・環境チェック」 では、当てはまるものが多いほど、下肢静脈瘤の可能性が大きくなります。
立ち上がってすぐのときはコブやむくみが現れにくいため、1〜2分ほど立ってから鏡でチェックしましょう。姿鏡や手鏡を使って確実に観察するようにしてください。
・ふくらはぎ
・くるぶし
・膝の裏側
・足の外側
・太ももの内側
・お尻と足の境界部分
・血管がコブのように浮いている
・細い血管がやたら目立つ
・くるぶしなどが黒ずんでいる
・足のむくみに左右差がある
・足の皮膚の色に左右差がある
・すねなどを押してできた凹みがすぐに戻らない
・アキレス腱がくっきり見えない
①立っていると足がだるくなる
②足がむくみやすい
・午前中は平気だった靴が夕方になるときつい
・靴下のゴム跡がなかなか消えない
③夜中から明け方に足がつる(こむら返り)
④足にしつこいかゆみや湿疹が出る
⑤座ると足を組みたくなる
①仕事で長時間立ちっぱなし、または座りっぱなし
②運動不足、もしくは肥満である
③両親や近親者に下肢静脈瘤の人がいる
④妊娠・出産の経験がある
⑤脂っこい食事、味の濃い食事、スナック菓子などを好む
⑥週に3回以上アルコールを飲む
※1出典 平井正文、牧篤彦、早川直和 妊娠と静脈瘤 静脈学 255-261 1997
※2出典 Gundersen J, Hauge M. Hereditary factors in venous insufficiency. Angiology. 20:346-55 1969
あなたの足、かくれ静脈瘤ではありませんか?
足のむくみがつらい。いつもなんとなくだるい。足がつってなかなか寝付けない。このような症状に悩まされているとしたら、あなたは「下肢静脈瘤」かもしれません。少し詳しい方であれば、「静脈瘤といえばコブがあるはず」と思うかもしれませんが、実は見た目ではほぼわからない静脈瘤(本書では「かくれ静脈瘤」と呼びます)もあります。そして日本人の10人に1人は発症すると言われているのです。
本書では、下肢静脈瘤を専門とするクリニックを開院し、2年にわたりミス・ワールド日本大会の公式ドクター兼審査員も務めた著者が、下肢静脈瘤の治療の方法や悪化を防ぐための対策をご紹介します。
・下肢静脈瘤とは
・ 30歳以上の約半数が下肢静脈瘤の事実
・こんな体質・生活・職業の方は要注意…他
・ 筋ポンプ作用がなぜ弱まるのか
・ 8つのステージでわかる、下肢静脈瘤の進行・重症具合…他
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