『はたらく女性のコンディショニング事典』
(クロスメディア・パブリッシング)
月経前の時期に、肩こりやむくみ、イライラ、気持ちの落ち込みなどの症状が現れることを「月経前症候群(PMS)」といいます。PMSは、はたらく女性の大敵です。
この記事では、『はたらく女性のコンディショニング事典』【監修:岩崎 一郎(脳科学者・医学博士), 松村 和夏(管理栄養士), 渡辺 卓(産業カウンセラー), 松尾 伊津香(プロボディデザイナー)】より、PMSを乗り越えるための「食事」のポイントを紹介します。
月経が始まる1週間くらい前から、イライラや倦怠感、眠さや頭痛などさまざまな体調の変化が現れます。この「月経前症候群(PMS)」の程度には個人差があり、ちょっとイライラするだけの人から、日常生活に支障をきたすほどの強い症状が出る人もいます。
PMSの症状は、精神面に現れるもの、体に現れるものの両方があります。
肩こりやむくみ、イライラ、気持ちの落ち込みなどを感じていても、その症状がPMSによるものだと気づいていない人もいます。まずは、「自分の体や心に現れる症状が、月経のサイクルと関連しているか」を意識してみることが大切です。原因がPMSにあり、期間限定のものなのだということがわかれば、対処法もわかり、気持ちも楽になるものです。
それでは、PMSのとき、女性の体ではどのようなことが起きているのでしょうか。
女性の体内では、月経周期にあわせて「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が分泌されます。月経後から排卵まではエストロゲンが多くなり、排卵後から月経前はプロゲステロンが増加します。
エストロゲンは自律神経を整える「セロトニン」の量を調節しており、エストロゲンが多い時期は心身ともに健やかに過ごすことができます。一方、月経前になるとエストロゲンが減るので自律神経が安定しなくなります。また、プロゲステロンの作用によって、むくみや痛み、皮脂の分泌が多くなるなどの不調が起こりがちです。
まず、「塩分の多い食事」はPMSを悪化させると考えられているため、なるべく避けましょう。PMSのときはプロゲステロンが多く出るため水分を溜め込みやすく、そこに塩分が加わると、手足や顔のむくみにつながってしまうのです。
イライラを抑えるために「甘いもの・糖分が多い食事」に手が伸びがちな時期でもありますが、これも要注意。砂糖は一時的には血糖値を上げて気分を落ち着かせてくれるものの、その後の急激な血糖値の低下によって、かえって不安定な気分になってしまいます。PMSで気持ちが不安定になってしまうという人は、気をつけてみてください。
また、コーヒーのようなカフェインの多いものや、アルコール・辛いものなどの刺激物もPMSにはおすすめできません。
反対に、PMSの緩和に役に立つ食品も存在します。
その1つが「大豆」です。大豆イソフラボンはエストロゲンと似たはたらきをすることが知られていて、PMSの緩和に役立つと考えられます。
エストロゲンが減ってくる月経前の時期には、納豆や豆乳、きな粉などの大豆製品を積極的にとるようにしましょう。サプリメントやソイプロテインのドリンクなどでも摂取することができますが、大豆はイソフラボンのほかにも良質なタンパク質やカルシウム、食物繊維などを含むので、基本は食事からとることを心がけましょう。
また、女性ホルモンの変化は自律神経の調節とも関わっています。自律神経には体温の調節機能もあるため、夏でも冷えが起こりやすくなって、そのために肩こりや腰・関節の痛みを感じることがあります。そのため、自律神経を整えるための食事を意識することもPMSの改善に効果的です。
最初に説明したように、女性ホルモンの影響を受けて、女性の体は一定のサイクルを繰り返しています。これを活かせば、ダイエットもより効率的に行うことができます。
月経前はプロゲステロンの分泌が増え、体は水分を蓄えやすい状態になっています。また自律神経の調節機能も弱まっているため、食べたものを代謝する機能も低くなってしまいますし、PMSによる体の不調で、運動することが困難になる人もいます。月経前の時期から月経が終わるまではダイエットはお休みして、リラックスして過ごしましょう。
反対に、月経が終わってエストロゲンが増えているときがダイエットのチャンス。代謝も活発になっていますし、体の調子もいい時期なので、運動もがんばれるはずです。
自分のサイクルを知って、無理なく効率的なダイエットをするようにしましょう。
自分の月経周期を理解して、PMSによる負担を和らげていきましょう。
PMSによって起こる、イライラや体の不調をうまく対処できれば、きっと日々の生活が今よりも楽しいものになるはずです。