『一生太らない魔法の食欲鎮静術 食事瞑想のススメ (Business Life)』
(クロスメディア・パブリッシング)
ダイエットトレーナーとして多くの方々を指導してきた中で、気づいたことがあります。
それは、「食欲」についての話をしたときに共感を得られるのは、ほぼ女性だということ。男性に同じ話をしても、「何がつらいのかがよくわからない」というような反応をされることが多いです。
クライアントさんの数自体も、女性のほうが多めです。食欲コントロールがうまくいかず、過食症や拒食症、過食嘔吐などの病気になってしまうのも、女性のほうが多いかもしれません。
しかし、最近は新たに男性にも起こる新型の摂食障害が出てきているのをご存知でしょうか?
この記事では、女性の摂食障害と、男性にも起こる新型の摂食障害についてお話しします。
まず、摂食障害は精神疾患のひとつと考えられています。つまり、心の病気ですね。そしてそれは、厚生労働省の難治性疾患(難病)に指定されています。
食べることは生きていくために必要な当たり前の行為です。一方で、国の難病に指定されてしまうほど、私たちを苦しめる威力も持っている……。なんとも感慨深い話です。
摂食障害といわれる症状のなかでも、とくに有名な「拒食症」と「過食嘔吐」に関して説明します。
病的にやせた体を持ちながらも、うまく食事がとれない症状です。具体的には以下の2種類の行動を起こします。
①徹底的に食べない = 拒食症
②食べたものをなかったことにするために代償行為を行う = 過食嘔吐型
②の「代償行為」とは、嘔吐や便秘薬の多量利用などを指します。この群の方々は、栄養失調で体が悲鳴を上げているにもかかわらず、栄養が体に吸収されることを拒んでしまっている状態です。
一方、摂食障害を患っているけれども体がやせておらず、標準体重の80%以上である場合、こちらに属します。
これは先ほど【A】でお伝えした「②過食嘔吐型」と一緒で、食べたという事実をなかったことにするために代償行為を繰り返す症状なのですが、体に病的なやせが出ていないことが特徴です。
「え、同じ症状なのに体つきに違いがでるの?」と思われるかもしれませんが、実はそうなのです。
脂肪や筋肉がついたり落ちたりするのは、ホルモンと自律神経による作用のため。「何を食べるのか」「どの代償行為を行うのか」、あるいは病歴やメンタル状態などの影響を受け、同じ食事や代償行為を行っていても、体つきには差が出てきます。こちらの場合、体つきが健常者と変わらず、代償行為を本人が隠す傾向もあるため、他人から見て病気の症状がわかりにくいという問題点があります。
そして、A・Bと比べてあまり知られていないのが、こちらの摂食障害です。
世界では「EDNOS」といわれており、拒食症や過食嘔吐のどちらともとれる行為や、どちらにも当てはまらない症状があらわれます。
たとえば「チューイング(噛み吐き・噛み砕き)」といわれる行為。一定時間、食べ物を口に入れて咀嚼し、飲み込まずにビニール袋などに吐き捨てるという行動を繰り返します。このような症状が「特定不能な摂食障害(EDNOS)」と区分されています。
EDNOSの中で多く見られる症状として、「むちゃ食い障害」というものがありました。しかし、2013年5月、アメリカの精神医学会による精神疾患のマニュアルが更新され、過食症・拒食症・特定不能の摂食障害と別の枠として、「むちゃ食い障害(BED)」という項目が、 新たに独立して追加されたのです。
これがまさに冒頭で述べた、男性にも起こりえる新しい摂食障害なのです。
むちゃ食い障害とは、どのような症状でしょうか?
症状の特徴としては、
「自制心を失っていると感じながら大量の食べ物を摂取する(むちゃだと思われる量を一度に摂取する)」というものです。
「食べるのが好きなら、それは単なる大食いでは?」
と思われそうですが、このむちゃ食いが摂食障害と認定されるのは、精神的苦痛を伴う行為だからです。食べるのが好きでたくさん食べることには幸福感を伴いますが、むちゃ食いの場合は、むしろ罪悪感や羞恥心を伴います。
むちゃ食い障害が先ほど述べた拒食症や過食嘔吐と違う点は、「明らかに異常な量を食べるにもかかわらず、代償行為(嘔吐や下剤の服用)を行わない点」です。そのため、「非嘔吐過食症」とも言われています。
さらに、これらの患者に関して、過食症・拒食症と大きな違いがあります。過食症や拒食症は男女比が1: 20という驚異的な性差があり、患者の95 %が女性です。しかし、このむちゃ食い障害の場合、「ほぼ半数が男性」という研究結果が出ているのです。
今、「食べる」に悩んでいる男性は増えているのです。むちゃ食い障害は太っている人に起こりやすく、肥満患者の3分の1に発症し、白人にも黒人にも起こるということがわかっています。
アメリカの精神医学のマニュアルによると、次の項目を満たす場合、むちゃ食い障害と診断される可能性があるということです。<参考:DSM–IV–TR(研究用基準案)>
むちゃ食いのエピソードは以下の両方によって特徴づけられる。
・他とはっきり区別される時間の間に(例:2時間内に)、ほとんどの人が同じような時間に、同じような環境で食べる量よりも、明らかに多い食べ物を食べること
・そのエピソードの間は、食べることを制御できないという感覚がある(例:「食べるのをやめることができない」、または「自分が何を、またはどれほど多く食べているかを制御できない」という感じ)
・普通よりもずっと早く食べること。
・お腹がいっぱいで気持ちが悪くなるまで食べること。
・生理的な空腹を感じていないときに大量の食べ物を食べること。
・自分がどれほど食べるかを恥ずかしく思っているために、1人で食べること。
・過食した後、自分に嫌気がさしたり、抑うつ的になったり、強い罪悪感を抱いたりすること。
注:頻度を決める方法は、神経性大食症で用いられるものとは異なっている。
閾値の頻度を決めるのに、むちゃ食いが起きた日数と、むちゃ食いのエピソード数のどちらを使うのがよいかは、今後の研究によって示されるべきである。
私は医師ではないので診断はできませんが、私のクライアントさんの中にも、むちゃ食い障害の疑いがある方はいらっしゃいます。彼らの特徴として、食欲に悩むのであれば過食症・拒食症の傾向が出てもおかしくはないのですが、嘔吐の気があるのかを聞くと、それはまったくない、というのです。
これだけ聞くと、単に
「食べるのが好き」
「胃が大きくなっただけ」
かな、と思っていたのですが、やはりそうではなく、「食べているときの無心」が特徴なのと、彼らの持つ「精神的苦痛」は明らかに単なる大食いのそれとは異なっています。
このむちゃ食い障害が、アメリカの精神医学書において、過食症・拒食症と並んで新たに追加されたということは、それだけ全世界で悩む人が増えたということです。まだ日本での認知率は高くなく、自分がこの障害であることに気づけていない方は、とても多いのではないかと思っています。
むちゃ食い障害は、診断や治療方法においても、まだまだ開拓が必要な分野です。むちゃ食い障害の疑いのある方は、まずしかるべき医師の指導を受けていただくことが必要ですが、私は、私が提唱する「食事瞑想」もなにかお役にたてるのではないかと感じています。
「食事瞑想」は食欲に振り回されている方のために考案したメソッドです。もし、食欲についてお悩みであれば、男女問わず、「食事瞑想」を試してみていただけたら、と思っています。