『一生太らない魔法の食欲鎮静術 食事瞑想のススメ (Business Life)』
(クロスメディア・パブリッシング)
私が提唱する「食事瞑想」のプロセスはとても簡単です。
舌先に食べ物をあてる
↓
胃の重さと温度を感じとる
これだけです。
たったこれだけで自然と噛む回数が増え、間食がやめられたり、食べる量が減ったりします。
そして、やせることができます。
食事瞑想を実践いただくと、お客様の多くは「1日2.5食」に落ち着きます。「3食までいらない」ことが自分の体でわかるのです。「夜は炭水化物を抜いたほうがいい」ということが、他人からの知識でなく自分の体でわかるようになるのです。
瞑想なので、あまりにも短期で爆発的な結果を求めることはお勧めできません。ただ、この食事瞑想を用いてお客様の食欲を落ち着かせていく過程で、驚くことがわかってきました。
それは、食事瞑想の持つ「即効性」です。
1食目から食べる量に変化が出るのです。
私が行っているコンサルティングでは、長年の食事の癖や心のブロックによって食欲コントロールが難しくなっている方が多いので、「食欲を抑えるにはある程度の時間が必要」という前提でお客様と向き合います。が、いざ食事瞑想をやってみていただくと、予想以上に早く効果を実感いただけるケースが多いのです。
早い方は1食目で、遅い方でも2週間かかりません。
最初は偶然だと思っていましたが、過食症などの症状をお持ちの方にも同様の結果が起こり得ることに気づいたとき、「食事瞑想には即効性がある」ことがわかりました。
お客様のひとりに、長いあいだ間食グセに悩んでいる女性がいました。
年齢は40代半ば。子どもの頃からどうしても間食がやめられず、自分が望んでいる以上の分まで食べてしまうことに嫌気がさしているというのです。「食べ過ぎだ」と自分でもわかっているのにどうにも我慢できず、食べる度に罪悪感を感じる、という生活を送っていました。
この方に食事瞑想を試してもらいました。3日後、電話でやり取りをしたとき、彼女は言ったのです。
「やめられた」と。
しかも、たった3日で。
私は、この驚くほど早い反応に、食事瞑想の「即効性」を確信しました。
ただし、この方にも確実に守っていただいたことがあります。
それは、「焦らず信じる」こと、そして「最初の1回だけは最後までやってみる」ということです。
たった一度、しっかり食事瞑想のロジックを頭に入れて実践してみていただければ、絶対に食欲はコントロールできます。どんなに頑張ってもやめられなかった間食だって、スッパリやめることができるのです。
まるで魔法みたいだと思いませんか?
そしてその効力は、私は「食欲」に対してだけではないと思っています。食事瞑想には、さらなるうれしい効果が期待できます。多くのダイエッターたちが意識しているであろう「血糖値」にも効果があるのです。
「血糖値を上げ過ぎないために野菜から食べる」ダイエット方法を実践している方も多いと思います。しかし、「一生太らない魔法の食欲鎮静術 食事瞑想のススメ」の冒頭では、その努力こそが食欲に火をつけ、リバウンドを引き起こす可能性があるとお伝えしました。
実は、食事瞑想によって「舌先で素材の味をしっかりと味わい、胃の反応を敏感に感じる」ことができるようになると、結果的に血糖値も落ち着いていきます。
そう、野菜づけの食生活など送らずとも、血糖値の上昇を防ぐことができるのです。
血糖値コントロールが難しくなるのは、先天性のものを除けば、ほとんどが食べ過ぎによるホルモン分泌の乱れが原因です。肥満も生活習慣病も、多くの場合、結局は食べ過ぎが原因なのです。
食事瞑想で「腹八分」が可能になると、血糖値が過剰に上昇することがなくなり、精神的に安定してきます。
ある研究では、お菓子ばかりを食べていて血糖値の急上昇急降下が激しい子供は、キレやすく精神的に不安定になることが分かっています。糖分の量を安定させることは、私たちの精神衛生を守るために非常に重要なのです。
食事瞑想は、生理学的に良くないとされる血糖値の上昇を自然に防げるので、ストレスなく心が安定してきます。
生きていると、毎日いろんなことが起こります。時には、自分の思い通りにならず、悲しんだり落ち込んだりすることもあるでしょう。そんな時は、食事瞑想の感覚を思い出してください。
食事瞑想は食欲をコントロールする手法ですが、それは同時に「心をコントロールすること」でもあります。
今は誘惑の多い時代です。ちょっと街を歩けば、ファーストフードの看板に出くわし、店内からは美味しそうな匂いが漂ってきます。コンビニに駆け込めば、甘いお菓子やパンもすぐに手に入ってしまうといった、食欲を脅かす外的な誘惑がとても多いのです。
食事瞑想の根本は、自分の欲や感情と向き合い、コントロールしていくこと。
それらに振り回されず、上手く付き合っていくための方法でもあります。
悲しいことにも腹立たしいことにも、振り回されない自分をつくっていきます。決して感情がなくなるのではありませんし、生きることが楽しくなくなるのでもありません。感情に左右されることなくすべての事柄に感謝ができるようになり、むしろ心穏やかに生きやすくなります。ぶれない自分づくりといってもいいでしょう。
お正月の特番で、芸能人を各分野の総合点で格付けする番組があります。その中のコーナーのひとつ「味覚」を競う場面では、毎年タレントのGАCKTさんが正しい味を判断されています。これを観ていると、この人はきっと一流の舌をもっているのだろうなあと、いつも感心してしまいます。
「どちらが高級な味か?」
この問いは、過去の自分の味わい方を問われているのと同じことではないかと思います。
どんなに美味しいものを食べても、それを雑に食べたらあなたの舌は鈍感なままです。せっかくの美味しさが記憶されません。高級・安物に限らず、どんな食べ物でも、その瞬間、その味に最大限集中したときにこそ、あなたの記憶にしっかりと味覚が刻まれるのではないでしょうか?
食事瞑想に出会った多くの方は、一瞬のその味やその時間をとても大事にするようになります。
物や情報にばかり求めていた正解を、自分の感じ取り方で変えることができるようになるのです。私は、あなたの環境や生活を変えることはできません。でも、感じ方を変えるだけで幸せになれるとしたら、こんなに素敵なことはないと思いませんか?
「果たしてこれはリバウンドでしょうか?」
食欲に悩む方のコンサルをしていると、このようなお声をいただくことがあります。
はっきり言いますが、食事瞑想は「食欲が一生安定する食事法」ではありません。なぜなら、食欲は落ち着いてもあなたの環境や生活のストレスが落ち着くかは別問題だからです。
あなたに、もし思いもよらないストレスがかかったら、あなたの食欲は必ず影響を受けます。
呼吸と一緒です。怒りで鼻息が荒くなるように、緊張で呼吸が止まるように、あなたの精神状態で食欲は波を打つのです。
食欲・睡眠欲・性欲は人間の三大欲求であり、人のストレスを代謝させてくれる働きを持ちます。いわゆるストレスのはけ口ですね。仕事で感じたストレスやモヤモヤが、ぐっすり寝ると翌朝にはすっきりした気持ちに変わっている、というような話はよく聞きます。
だから、ストレスが溜まると、食欲が勢いをつけてあなたを助けに来ます。
「さあさあ、たくさん食べれば気がおさまるわよ」
「そんなに落ち込まないで。甘いものを食べれば元気も出るわ」
という具合に、食べることで乱れた心を必死に修正しようとするわけです。
食欲はあなたを単に苦しめるものではなく、むしろ、あなたをストレスから守ろうとする正義の味方なのです。
この食欲の思いやりと上手につき合っていくための有効な方法、それが食事瞑想です。ここまで読み進めてくれたあなたなら、もう大丈夫。もしも心を揺るがすようなショッキングな出来事が起こったら、また整えればいいのです。
深呼吸をすると呼吸も感情も落ち着くように、食事瞑想をすれば食欲も心も落ち着くようになっています。食事瞑想は、食事の深呼吸といってもいいかもしれませんね。
食事瞑想を続けていると、不思議なことに、逆に前向きになっていきます。イライラしたり落ち込むことがあっても、心は乱れるものだということを受け入れることができるようになるからなのか、どんなときでも食事を通して自分自身の心と向き合い、その波を落ち着かせる術を身につけたからなのかはわかりません。
ただ、本当の味わい方が習慣化してくると、明らかに思考が前向きになります。これは確実です。
それまでは食べてしまった罪悪感や敗北感に駆られ、自分にバッテンをつけていた人が、自信をもって花マルをつけられるようになるのです。
食事瞑想は、単に食欲を落ち着かせるだけのものではありません。
ダイエットとか、「やせたい!」という気持ちに応えながら、さらにメンタル面でも多くの幸せをもたらす、まさに魔法のようなものなのです。