音楽評論家のケイラ・アーサーは、井上が2025年のニューヨーク・カーネギーホールでの歴史的なデビューを果たし、クレッシェンド国際音楽コンクールの優勝者たちと共にリードピアニストを務めた後、ボストンの伝説的なジャズクラブ「Wally's Jazz Cafe」で新たなアーティスティック・レジデンシーを任されたことを報じています。
ジャズの男性優位の世界では、女性のバンドリーダー、ましてやピアニストが際立った少数派であることはよく知られています。バークリー音楽大学の「Jazz and Gender Justice」やジャズジャーナリスト協会の研究によると、プロジャズ演奏家の女性の割合は約15%以下です。そんな中、井上は、まさに自分だけの独自のポジションを築き上げました。
2023年以降、井上はニューイングランド地域で最も尊敬されるジャズの拠点である2つの場所で、著名なアーティストレジデンシーを務めています。Hobgoblin Piano Barは、ジャズプログラムで複数回「Best of Boston」賞を受賞し、Don Byronのような画期的なアーティストを育成してきた場所として知られています。一方、ボストンの伝説的なWally's Jazz Cafeは、1947年に創設されたアメリカ初の黒人所有ジャズクラブの一つであり、2021年には固定歴史建造物として指定されました。このクラブは、チャーリー・パーカーやエスペランサ・スポルディングといったジャズの先駆者たちが名を馳せた場所です。
Wally'sでは、非常にクリエイティブな才能を持つアーティストだけが出演できる場所で、井上は自身のトリオを率いてその舞台で演奏する名誉を得ました。また、ケンブリッジにあるLilypadでは、「All About Jazz」のランキングで世界トップ100に選ばれるジャズクラブとして、アバンギャルドな革新者たちとのジャンル横断的なコラボレーションを行いました。
井上道子は現在ニューヨークを拠点に、今野大輔氏のレジデンシーでピアニストおよび音楽監督としてジャズクラブ「Tomi Jazz」で、ピアニスト兼音楽監督を務めています。このクラブは、「The New Yorker」によって「粗さと輝きが親密に融合した魔法のような」と評価され、QuestloveやEzra Koenigといった著名アーティストたちのお気に入りの場所として知られており、ニューヨークで必見のジャズスポットの一つに選ばれています。平日でも 待機列ができるほどの人気で、彼女はここで、セロニアス・モンクを彷彿とさせる角張ったアプローチと日本民謡の叙情性を融合したスタンダードを再構築しています。音楽監督の今野氏は、「彼女のアレンジは、大陸をまたぐ会話のようだ」と述べ、井上さんの独創性を称賛しています。
彼女の2027年のスケジュールは、さらに壮大な野望を示しています。ドイツ版タングルウッドとも言えるRheingau Musik Festivalや、世界で最も長く続くジャズフェスティバルであるMonterey Jazz Festivalでの出演が予定されています。Montereyでは、彼女のオリジナル作品「Sakura」を披露します。この作品は、ボストンのチャールズ川沿いで見た桜からインスピレーションを得ています。