ANK療法によるNK細胞増殖


ANK細胞の強い細胞傷害活性

NK細胞を用いるがん免疫細胞療法の普及を推進するリンパ球バンク株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:原田 広太郎)は、ANK免疫細胞療法の保険適用と普及を目指し、株式会社ユニコーンが運営する「Unicorn」の株式投資型クラウドファンディングで目標額の191.25%、1,530万円の資金調達を成功させました。
https://unicorn-cf.com/info.php?type=items&id=I0000038&tab=contents

先ずは、成人T細胞白血病(ATL)を対象疾患として保険適用を目指しています。日本血液学会のガイドラインによると、近年では進行が早いタイプのATLの生存期間中央値は13カ月、進行が遅いタイプも急性型へ転化すると1年とされています。ATLは化学療法などの標準治療が確立していないため、効果的な治療法に対する社会的な要請が強い病気です。そのような中、ATLに対するANK免疫細胞療法の効果を示す論文が世界的な医学雑誌に複数発表されました。

保険承認申請には莫大な費用がかかるため、医薬品メーカーと連携しながら進めていくのが現実的です。そのひとつのステップとして本年度中にNK活性測定装置という機器を刷新して「NK活性測定サービス」という新たなサービスを立ち上げる予定です。これによる測定データを医薬品メーカーと共有しながらアライアンスを進め保険承認申請の準備を行い、そこから3年を目安に承認を取得したいと考えています。


■ATLに対するANK免疫細胞療法の効果を示す論文
Teshigawara K, Nagai S, Bai G, Okubo Y, Chagan-Yasutan H, Hattori T. MDPI Reports 1(2):13, 2018. doi.10.3390/reports1020013
Case report
Successful Amplified-Natural-Killer Cell (ANK) Therapy Administered to a Patient with Smoldering Adult T-Cell Leukemia in Acute Crisis

Nagai K, Nagai S, Hara Y. BMJ Case Rep 2021;14:e244619. doi:10.1136/bcr-2021-244619
Case report
Successful treatment of smouldering Human T cell Leukemia Virus Type1 associated bronchiolitis and alveolar abnormalities with amplified natural killer therapy

Kenjiro Nagai MD PhD and Sho Nagai MD PhD. CMJ Review Article Vol. 5 Issue S5
PMCID:PMC8986168
Effectiveness of Amplified Natural Killer (ANK) Therapy for Adult T-cell Leukemia/Lymphoma (ATL) and Future Prospects of ANK Therapy.


■ANK自己リンパ球免疫療法(ANK免疫細胞療法)
患者さんご自身の血液を5~8リットル、成分採血等に用いる装置で体外循環させ、血液に含まれるリンパ球を選別して、採り出します。その中のNK細胞を高度に活性化すると同時に選択的に増殖させます。高度に活性化されたNK細胞は、がん細胞を傷害する爆弾のような小胞体を細胞内に大量に抱えるため、細胞分裂の際に爆弾が破裂し、自爆しやすい傾向があります。

そのため、臨床上の実用として意味のあるレベルの活性化と増殖の両立は難しいとされてきましたが、京都大学の研究者2名がこの難題をクリアし、活性と増殖、両方の意味を込めて増強された=Amplified NK(ANK)と名付けました。この治療で進行がんを克服した患者と、研究者らが、2001年にリンパ球バンク株式会社を創業しました。

治療では、培養されたANK細胞を点滴で体内に戻します。がん細胞を攻撃するのが本職のNK細胞の機能をそのままに、直接がん細胞を傷害する上、大量の免疫刺激物質を放出することで、体内のNK細胞の活性化も促します。この時放出される免疫刺激物質はほとんどが発熱を誘導する性質を持つため、点滴後一過性ですが悪寒や高熱などの副反応が出ます。

【FCM分類による一般法との比較】

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/319802/LL_img_319802_1.jpg
ANK療法によるNK細胞増殖

■免疫細胞療法の背景と特徴
強力な免疫刺激によりがんが消失することがある、あるいは免疫抑制剤の大量投与によりがんが異常増殖する、といった様々な現象から、私たちの体内にはがん細胞を強力に傷害する免疫細胞が存在すると考えられてきました。1970年代、T細胞や樹状細胞、マクロファージ等は、既に知られていましたが、がん細胞への反応はそれ程でもなく、もっと強い細胞の探索が精力的に行われた結果、活性が高ければどのようながん細胞でも出会ったその場で直ちに攻撃するリンパ球が見つかり、ナチュラルキラー(NK)細胞と名付けられました。がん細胞を認識する専用センサーを多種大量に備え攻撃力も強く、体内の存在数も1,000億個レベルと非常に多い腫瘍免疫の主役が発見されたのです。
今日では、がん患者体内のNK細胞は活性が低下しており、がん細胞の増殖を許してしまっていることが知られています。

米国国立衛生研究所(NIH)では、数十リットルという大量の血液からNK細胞を体外に採り出し、強く刺激してから患者体内に戻す免疫細胞療法の大規模臨床試験を実施、抗がん剤が奏効しないがん患者数百名全員に何らかの効果を示しました。3日以上培養すると増殖に伴って活性の高いNK細胞が自爆を起こしやすくなるため、培養期間を3日間に制限しました。また、大量の活性化されたNK細胞を体内に戻すと、大きな腫瘍が壊死を起こし、腫瘍内部のカリウム等が大量に放出され、心停止などのリスクがありました。そのため、治療はICUを占拠し体液コントロールを行いながら実施され、非現実的なコストがかかり実用化は無理でした。

NK細胞は培養が非常に難しく、活性を高めないと役に立ちませんが、増殖が始まると強い攻撃力ゆえに自爆を起こし易いという問題があります。京都大学の研究者二人が、米国法の限界を超えて、NK細胞の活性化と増殖を同時に実現するANK自己リンパ球免疫療法(ANK免疫細胞療法)を開発し、小規模な臨床試験を経て一般診療を始めました。ANK免疫細胞療法1クールは、NK活性においても、NK細胞数においてもNIH法を上回るため、一度に体内に戻すと大きな腫瘍が壊死を起こすリスクがあります。そこで、培養細胞は凍結保管され、1クールを12回に分け融解・再培養を行いながら、原則、週2回ずつに分割投与することで、クリニックでの通院治療が可能な安全性を確保しました。
但し、今回論文発表されたケースでは患者の状態等も考慮し、通常投与量の半分の細胞数に分割し治療を行ったため、論文に記載のある1回当たりの投与細胞数は標準量の半分となっています。

【NIH法、国内一般法との細胞傷害活性比較】

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/319802/LL_img_319802_2.jpg
ANK細胞の強い細胞傷害活性

国内で広く普及している「一般法」による免疫細胞療法では点滴後に若干の微熱等を除き強い免疫副反応は見られませんが、ANK免疫細胞療法は、強い免疫刺激の結果として、40度前後の発熱を伴います。なお、近年、遺伝子改変を伴うCAR-T療法が承認取得し保険適応となっていますが治療対象となるがんの種類が限られ、また激しい副作用を伴います。

標準治療では、がん細胞が飛び散ってしまうと一般に予後不良です。体内に分散するがん細胞を追いかけ、一つずつ仕留めるNK細胞をがん治療に活用することは、進行がんの治療において重要な鍵を握ると考えられています。


■リンパ球バンク株式会社の概要
○本社 : 東京都品川区西五反田1-25-1 KANOビル8階
○代表者 : 代表取締役会長 勅使河原 計介、代表取締役社長 原田 広太郎
○資本金 : 103百万円
○設立 : 2001年1月 京都大学発ベンチャーとして設立
○事業内容: ANK自己リンパ球免疫療法総合支援サービス
○URL : https://www.lymphocyte-bank.co.jp/
○企業理念:
リンパ球バンク株式会社は、ANK免疫細胞療法を開発した医師と治療を受けた患者を中心に創業され、経営している企業です。
一人でも多くのがん患者にとって治療の選択肢が広がる状況を築いていきます。
科学的根拠に基づいたオーソドックスな考え方で治療システムを開発・提案します。
高度で複雑な生命システムを謙虚にみつめ、細胞加工技術や免疫制御技術を過信せず、細胞本来がもつ能力をありのまま引き出すことを工夫します。
がんの予防や治療における免疫の重要性への認知を広めることで、免疫細胞療法が社会システムに組み込まれ、より多くの患者が治療を受けられる機会を広げます。
情報提供元: @Press