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左から、川村久恵氏(旭川アイヌ協議会)、菅原浩志監督、吉田美月喜氏(主演俳優)、松岡市郎東川町長
北海道東川町では、1903年に生まれ19歳の若さで亡くなったアイヌ文化伝承者、知里幸恵(ちり・ゆきえ)さんをモデルにした映画(『カムイのなげき』改め、)『カムイのうた』の製作を進めています。本映画は、アイヌ文化と共に、大雪山国立公園を有する東川町が「大雪山文化」を次世代に伝えることを目的に、ALL北海道の連携で本作を作り上げ2023年秋の公開を目指しています。5月19日、本映画の製作発表会を下記の通り開催いたしました。
■日時:2022年5月19日(木)15:00~16:00
■場所:東川町複合交流施設せんとぴゅあⅡ 多目的室
■登壇者:
監督・脚本 菅原浩志氏
主演俳優 吉田美月喜氏
東川町長 松岡市郎
製作協力 川村久恵氏/旭川アイヌ協議会
■製作: シネボイス
■製作協力:
写真文化首都「写真の町」北海道東川町
川村久恵氏/旭川アイヌ協議会
■アイヌ語・アイヌ文化監修:藤村久和氏
・吉田美月喜(よしだ・みづき):テル役
・望月 歩(もちづき・あゆむ):一三四(ひさし)役
・阿部進之介(あべ・しんのすけ):トッカラム役
・島田歌穂(しまだ・かほ):エンネッコン役
・加藤雅也(かとう・まさや):兼田教授役
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この映画は、知里幸恵さんをモデルに映画化しようと2年間準備をして参りました。2年前は、「アイヌの映画」に取り組むことへの批判、冷ややかな目が多くありました。しかし、実際に準備を進めていくと、役者たちが「こういう映画は作らなければならないんだ」と言ってこの映画に参加してくれたり、「アイヌのためだったら自分は映画に参加したい」と4時間運転して東川町のオーディション会場に来てくださったり、多くの方々が熱い思いでこの映画に参加してくださっています。
アイヌの映画だから参加したい、アイヌのことを勉強したい、こういう方々がこの映画に集まっている。そのことが、私にこの映画を作る力を与えていただいていると感じています。
川村カ子トアイヌ記念館の川村カ子トさんが「アイヌ民族を知ってもらいたい。この北海道の開拓に、ささやかであるが努力してきたつもり」と仰っていました。知里幸恵さんが『アイヌ神謡集』の序文で、「私たちを知ってくださる多くの方に読んでいただく事ができますならば、私は、私たちの同族祖先と共にほんとうに無限の喜び、無上の幸福に存じます」と書かれています。アイヌのことを知ってもらいたい、そういう想いで生きてこられた。この映画、『カムイのうた』が、多くの方々にアイヌのことを知ってただく機会となり、歴史の紐をひも解いていただければ幸いです。
そして、私が願うのは、今、いじめを受けている若者たち、差別を受けている人々が、力強く生きていく力がこの映画が少しでも与えることができたら。世界の平和が一日でも早く訪れることを願ってやまない。そういう想いでこの映画を作っていきたいと思っています。
この映画の話を聞くまで、アイヌ文化やアイヌの方々の知識はあまりありませんでしたが、この映画のためにアイヌ文化を学び、例えば「もの一つひとつに神様が宿っている」という考え方や、「大切な自然の中で共に生かされている」というアイヌ民族の考え方が、今私たちが現代を生きていく中でとても大切な考え方なんじゃないかな、ということを感じています。
また、最近私自身19歳になりました。知里幸恵さんが同じ19歳の時に『アイヌ神謡集』を書かれたということを知り、とても大人で、素敵な考え方をもった女性だったんだなと感じています。そんな知里幸恵さんがどういう気持ちでこの本を書き上げて生きていったのかを、映画を通してみなさまに伝えていけたらよいなと思っています。
監督をはじめ、この映画の制作に関わる方々の強い熱い思いを感じているので、しっかりと背負って撮影に挑んでいきたいと思っています。
この作品は、東川町だけではなく北海道を挙げての映画作りだと考えています。
北海道には多くのアイヌ語の地名があり、私たちはアイヌ語と共生した暮らしをしています。さらに東川町には北海道で一番高い山、大雪山・旭岳があり、毎年「ヌプリコロカムイノミ(アイヌによる山の祭り)」を実施してきました。故・川村兼一さんが5,6歳の頃からずっと引き継がれているお祭りです。昨年、兼一さんがご存命のうちに、菅原監督によるドキュメンタリー映像である『ヌプリコロカムイノミ』を撮影しました。兼一さんは、その映像の完成とともに天国へ旅立たれました。そのなかで菅原監督と川村久恵さんと出会い、アイヌ民族の誇りを伝えようとした知里幸恵さんの映画化のお話になりました。今年は知里幸恵さんの死後100年、来年は生誕120年を迎えます。知里幸恵さんや川村兼一さんに思いを馳せ、本映画を製作していきたいと思います。
コロナ禍の中で「文化は不要不急」というような声もありましたが、着々とこの映画の準備を進めてきました。今、世界や国内を見渡すと、いじめ、差別、紛争が絶えない状況となっています。この映画を通じて、自らの言葉を大切にし、融和な社会を保つことの大切さを伝えたい。そして、多くの皆さんに北海道や東川町にお越しいただきたいと思っています。不要不急とされる中で製作されるこの映画が、不朽の名作なることを期待しています。
私は昨年より、旭川アイヌ協議会の会長を務めさせていただいております。また、川村カ子トアイヌ記念館の館長も務めております。
この映画の監督を務められる菅原監督とは一昨年初めてお会いし、昨年亡くなった記念館の前館長、川村兼一の映像『ヌプリコロカムイノミ』を作っていただいた時からのお付き合いです。『ヌプリコロカムイノミ』では何度も何度もお会いし、10時間以上におよぶ撮影から出来上がった映像は20分ほどで、そこには訴えたかった事が凝縮されていました。私もそれを見て涙が出るようなシーンもありました。今回の映画も素晴らしいものになると信じています。
この150年、あるいはそれ以上前からの、アイヌの辛かったことや楽しかったことが、すべて凝縮されてこの映画が出来ると思っています。それは他の方には、なかなかできないだろうと思います。近年ですと、アイヌの文化は注目されていますが、それは割とエンターテイメントに寄ったものが多いと思うんです。それはそれで、多くの人に知ってもらうという良い面もありますが、アイヌの本当の気持ちや本当の辛さが置き去りにされている部分もあります。
そうしたアイヌの想いを汲み取っていただける菅原監督と、素晴らしいキャストも決定しました。私たち旭川のアイヌも全面的に協力させていただきますし、大変希望を持っております。それは私たちのような今生きているアイヌだけではなくて、先人たちの希望であり夢でもあったと思います。
そして何より、知里幸恵さんが『アイヌ神謡集』の中に残していた通り、私たちの言葉が残って欲しい、私たちのことを知ってもらいたいという想いを伝える映画になると思います。長く長くみなさんに見ていただけるものになるだろうと信じています。
カムイのなげき(仮) : https://kamuy-nageki.jp/