収集した軽石


堀場テクノサービスでの分析の様子


共同研究活動のイメージ図


白い砂浜の一面が漂着軽石で覆われてしまった与論島の海岸(遠景と近景)

未来可能性のある社会の構築をめざす大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所(所長:山極 壽一 以下、地球研)と、堀場製作所のグループ会社で分析・サービス事業を担う株式会社堀場テクノサービス(代表取締役社長:千原 啓生 以下、堀場テクノサービス)は、軽石の分析に関する共同研究を2月1日より本格的に推進します。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/296349/LL_img_296349_1.jpg
収集した軽石

2021年8月に小笠原諸島の海底火山噴火により噴出した軽石は、沖縄県など日本各所に漂着し漁業や観光業に深刻な影響を及ぼしています。本研究では各所の海岸に漂着した軽石の化学成分(構成元素の種類や含有量)を分析して発生源を詳しく検証することにより、被害が及ぶ範囲を導き出します。さらに軽石の漂流日時などの情報も組み合わせることで漂流パターンの解明へとつなげ、今後世界で同様の問題が起こった際に迅速な復興を可能とする、長期的視野での災害レジリエンス強化における取り組みに貢献します。
地球研、堀場テクノサービスおよび、採集した軽石を提供いただく地域の方々も交えた「産学民」一体の体制で挑む、これまでにない連携を生かした実地的な活動として研究を進めていきます。

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共同研究活動のイメージ図

【共同研究開始の背景】
沖縄県をはじめとした日本各所に漂着し、漁業や環境に深刻な影響を及ぼしている軽石問題。36年前(1986年)や約100年前(1914年)にも同様の現象が起きており、歴史が繰り返されています。この問題の解決に向けて何かできることはないかと考え、地球環境問題を総合的に研究し、未来可能性のある社会の構築をめざす地球研と、小惑星探査機「はやぶさ2」が採取した小惑星「リュウグウ」の試料分析に参画した実績をもち、多種多様な分析依頼を承る堀場テクノサービスが手を組み、共同研究を実施することとなりました。

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白い砂浜の一面が漂着軽石で覆われてしまった与論島の海岸(遠景と近景)

【具体的な取り組み】
(1) 軽石の収集【地域の方々】
・全国の自然科学系博物館およびジオパークを束ねる事務局などを通して、関連施設に情報を拡散し、地域の学芸員などの協力により送っていただいた軽石のサンプルを地球研に収集します※1。

(2) 軽石の分析【堀場テクノサービス】
・HORIBA製品の蛍光X線分析※2装置を用いて、軽石に含まれる元素の種類や量などのデータを測定します。
・軽石を設置する治具は、高度なサンプルハンドリング※3技術をもつ堀場テクノサービスが独自開発。形や大きさが異なる軽石の上面を均一に固定するとともに、余分なX線の入射を防ぐ構造により、複数のサンプルを高い精度で同時に分析することができます。
・本装置を用いることにより、非破壊・非接触で、かつ1回あたり数分という迅速な分析を行うことで、円滑な研究活動を実現します。

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収集した軽石と独自開発の治具(左)/蛍光X線分析装置(中)/成分分析のイメージ図(右)

(3) 漂流パターンの解析【地球研】
・堀場テクノサービスが分析したデータを元に、過去に発生した海底火山噴火で噴出した軽石の化学成分(二酸化ケイ素、酸化カリウム、酸化ナトリウムなど)の含有量と照らし合わせ、収集した軽石が小笠原諸島由来のものであるかといった発生源を特定します。
・小笠原諸島由来の軽石を特定したうえで、漂流日時などの情報を組み合わせて流路のマッピングを行い、漂流パターンの解明へとつなげます。
・研究成果は学会や論文などで発表し、一般向けにも公開することを予定しています。

※1 現在軽石サンプルの収集は、地球研からの協力依頼を受諾した上記機関の方々から発送いただくもののみに限っています。
※2 X線を物質に照射すると、その物質がもつ元素による固有の光が発生します。蛍光X線と呼ばれるその光を捉えることで、測定対象物に含まれる元素の種類と量を特定することができます。
※3 運搬、保管、分析までサンプルを適切に取り扱うこと。堀場テクノサービスの分析ラボ「Analytical Solution Plaza(アナリティカル ソリューション プラザ)」では、安全なサンプルハンドリングを実現する治具を独自開発し、多種多様な受託分析を提供しています。


【期待する効果】
(1) 長期的な災害レジリエンス強化への貢献
・軽石はどのように漂流・漂着するのか、そもそも本当に今回の噴火による軽石なのかといった軽石の「プロフィール」を明らかにすることで、今回の小笠原諸島の海底火山噴火由来による影響の裏付けとなるデータを社会へ提供します。これにより、今後世界で同様の問題が起こった際に迅速な復興を可能とするためのより長期的な研究や対策の立案を行う、災害レジリエンス強化に関する取り組みに貢献します。また軽石の化学成分を分析することで、どのように再利用できるかを検討するうえでのアイデアにつながる可能性も秘めています。

(2) 自然災害や地球環境問題への関心・理解の深化
・「産学民」三位一体となって地域との交流を重視しながら研究活動に取り組みます。この研究をきっかけに、プロジェクトリーダーである地球研の新城 竜一教授が中心となり、セミナーや談話会といった場を通じて次代を担う子供たちを含む幅広い市民層に向けて、身近な地学現象、ひいては地球規模の自然災害・環境問題への関心や理解の深化へとつなげていきます。

(3) SDGs目標達成への貢献
・地球研とHORIBAグループは、SDGs(国連が提唱する持続可能な開発目標)の達成に向けて様々な取り組みを進めています。特にHORIBAグループは、SDGs17の目標のうち、「4.質の高い教育をみんなに」「11.住み続けられるまちづくりを」「14.海の豊かさを守ろう」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」における達成へ貢献することも見据えています。


【HORIBAのSDGsにおける考え方】
HORIBAとSDGs
https://www.horiba.com/jpn/company/social-responsibility/horibas-csr/horiba-and-the-sdgs/


【プロジェクトリーダー:新城 竜一】
■総合地球環境学研究所 研究部 教授
■琉球大学 理学部 物質地球科学科 教授
地質学・岩石鉱物学・地球化学を専門とし、今回沖縄県で異変が起こった際にもいち早く遠く離れた海底火山の軽石噴火に由来することを発信しました。また、36年前や約100年前の漂着軽石の研究を行った加藤 祐三・琉球大学名誉教授の研究室出身です。

画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/296349/LL_img_296349_6.jpg
プロジェクトリーダー:新城 竜一 教授
情報提供元: @Press