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「エッグイノベーション」の研究風景
図1:予備加熱の有無と温度による、卵白部の微細構造の違い(顕微鏡写真)
東京農業大学「エッグイノベーション」の研究員
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キユーピー「エッグイノベーション」寄付研究部門研究室
キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:長南 収、以下キユーピー)は、学校法人東京農業大学(理事長:大澤貫寿、以下東京農業大学)に、「キユーピー『エッグイノベーション』寄付研究部門」を2020年4月1日に開設し、現在2年目を迎えています。
開設の目的は、卵の物性機能に着目することで、より豊かな食卓の可能性を科学的に解明し、おいしい料理や食品の創出を行うことです。初年度は、卵の物性に関する研究を中心に、論文投稿3報、学会発表4件と、順調に成果につなげることができました。そのうちの1件は、日本食品科学工学会「令和3年度関東支部大会」にて、学生ポスター研究発表《優秀発表賞》を受賞しました。初年度の主な研究成果と、2年目となる2021年度の研究テーマ・展開について報告します。
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「エッグイノベーション」の研究風景
日本食品科学工学会関東支部大会(令和3年度)、学生ポスター研究発表《優秀発表賞》を受賞
https://www.nodai.ac.jp/news/article/4-5/
《研究概要》
おでんの具の一つであるゆで卵は、煮込むと卵白の部分が硬くなってしまうことに課題があった。そこで、まず90℃での本加熱の前の予備加熱の効果を調べたところ、66℃では卵白が硬くなり、74℃では卵白が柔らかくなることが分かった(図1参照)。さらに、74℃と90℃の二段加熱で調製した卵白を長時間煮込んでも、対照(本加熱のみ)と比べ硬化が抑制されることが分かった。今後は、この二段加熱の技術を商品化に生かすための実用性の検討をしつつ、ゆで卵のほか、卵白を利用した商品への活用も検討していく。
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図1:予備加熱の有無と温度による、卵白部の微細構造の違い(顕微鏡写真)
《研究概要》
卵白を殺菌すると、泡立ちが遅くなり、泡の容積が減少することが分かっている。添加物を使用せずに、この課題の解決に挑戦した。研究によって、卵白に含まれるタンパク質の一種「オボムチン」を除去すると、殺菌しても卵白の泡立ちの速度は落ちず、泡の容積も減少しないことを発見した。
今後はさらに、オボムチンを除去するよりも簡便な方法、すなわち、卵白をせん断してオボムチンの構造を変える方法の有効性を確認していく。
《研究概要》
卵白の泡沫(ほうまつ)は時間が経つと一体化して潰れてしまうため、なるべく長時間、泡沫として安定させる技術の開発が求められている。そこで、卵白にオクテニルコハク酸修飾した加工澱粉を添加することにより、卵白泡沫の安定性を向上させることを発見した。
今後は、冷凍・解凍しても安定する泡の開発に寄与する、一つの要素技術として活用していく。
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東京農業大学「エッグイノベーション」の研究員
「卵白のゲル・泡の制御技術に関わる基盤研究」を研究の核に据え、そこから派生したテーマを深掘りするとともに、新たな分野にも挑戦していきます。2021年度の主な研究テーマは下記の通りです。
《深堀りテーマ》
・殺菌しても起泡性が維持されている卵白の開発
・澱粉添加による卵白起泡の安定性向上
・酵素処理による卵白ゲル化性向上
・卵白タンパク質可溶性凝集体の性状把握
《新領域挑戦テーマ》
・メタボリックシンドローム抑制卵白の開発
・卵白タンパク質と植物タンパク質による新規素材開発
・卵黄の変性を利用したマヨネーズの物性改変
・人工消化システムを利用した卵白生理活性ペプチドの探索
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キユーピー株式会社 研究開発本部 プリンシパル・コーポレート・サイエンティスト 東京農業大学客員教授 半田 明弘
鶏卵は食卓には欠かせない大切な食材です。栄養価が高いだけではなく、加熱凝固性、起泡性、乳化性といった食品加工機能があるからです。我々のお客さまである、食品メーカーの皆さまは、それらの機能を求めて、原料として鶏卵を使用されています。しかしながら、そのご要望にまだまだ応え切れていない品質上の課題があります。本寄付講座では、企業単独では解決が難しい技術課題に対して、じっくり腰を据えて、タンパク質の分子レベルでの挙動をイメージしながら研究活動に取り組んでいます。加熱凝固した卵白や卵白の泡のテクスチャーをより安定したものにすることができれば、よりおいしい食品を消費者の皆さまに提供できるようになります。一つの商品は複数の要素技術の組み合せによって成り立っています。本寄付講座では、鶏卵の食品加工機能を向上させるために、一段とインパクトのある要素技術を開発し、食卓をより一層豊かにすることを目指しています。
■名称:キユーピー「エッグイノベーション」寄付研究部門
■設置期間:2020年4月1日から2023年3月31日の3年間
■目的:
卵の物性機能に着目することで、より豊かな食卓の可能性を科学的に解明し、おいしい料理や食品の創出を行う。そのための具体的な研究内容は、卵白の泡立ち性改質、ゆで卵の新しいテクスチャー創出、卵白のゲル化性向上など。
■研究者・研究員:
半田 明弘:キユーピー株式会社 研究開発本部 プリンシパル・コーポレート・サイエンティスト、東京農業大学客員教授
辻井 良政:東京農業大学 応用生物科学部 農芸化学科 食料資源理化学研究室 教授
小山 翔大:東京農業大学 博士研究員
キユーピーリリースNo.55_東京農業大学寄付講座「エッグイノベーション」初年度の研究成果と今後の展開.pdf
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