くるみイメージカリフォルニア州フォルソム(2021年2月9日)―日常的にくるみを摂取することでヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染による疾患の予防が期待できるとする研究(*1)が、『Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition』誌に発表されました。本研究はカリフォルニア くるみ協会の支援によるもので、韓国のCHAがん予防研究センターの研究グループが実施したマウス実験によって、くるみを豊富に含む食生活が、ピロリ菌感染による疾患を予防できる可能性があるとする予備的なエビデンスが示されました。
マウスによる実験でくるみが消化器がんのリスクを下げるとされたのは、今回が初めてではありません。『Cancer Prevention Research and Nutrients』誌には、食生活にくるみを取り入れることで、腸内細菌のバランスが変わって大腸での腫瘍発生が抑制されたり、がん細胞の増殖を促す血管形成が阻害されて大腸がんの進行が抑制されるといった動物実験結果が2件掲載されています。 動物実験は基礎的な情報を取得するのに非常に有用であり、その後のヒトを対象とした研究の基礎としても利用されています。くるみに関するこの研究を始めとする既存のエビデンスを考慮すると、ピロリ菌感染による炎症などの症状を和らげる食生活をしっかりとした臨床試験で検証することのメリットは、非常に大きいと考えられます。
参考文献: (*1) Park JM, Han YM, Park YJ, et al. Dietary intake of walnut prevented Helicobacter pylori-associated gastric cancer through rejuvenation of chronic atrophic gastritis. J Clin Biochem Nutr. 2021;68(1): 37-50. doi:10.3164/jcbn.20-103 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcbn/68/1/68_20-103/_pdf/-char/en
Hooi JKY, Lai WY, Ng WK, et al. Global Prevalence of Helicobacter pylori Infection: Systematic Review and Meta-Analysis. Gastroenterology. 2017;153(2): 420-429. doi:10.1053/j.gastro.2017.04.022
Fahey JW, Stephenson KK, Wallace AJ. Dietary amelioration of Helicobacter infection. Nutr Res. 2015;35(6): 461-473. doi:10.1016/j.nutres.2015.03.001
Nakanishi M, Chen Y, Qendro V, et al. Effects of walnut consumption on colon carcinogenesis and microbial community structure. Cancer Prev Res (Phila). 2016;9(8): 692-703.
Nagel JM, Brinkoetter M, Magkos F, et al. Dietary walnuts inhibit colorectal cancer growth in mice by suppressing angiogenesis. Nutrition. 2012;28(1): 67-75.
加藤元嗣ほか.Helicobacter pylori感染の疫学.日本内科学会雑誌.2017年第106巻第1号 p. 10-15 Asaka M, et al. Relationship of Helicobacter pylori to serum pepsinogens in an asymptomatic Japanese population. Gastroenterology. 1992;102: 760-766.