【4日目】BL18 千手での実習の様子。「この先端に試料を接着剤で付けます」
【2日目】J-PARC見学の様子。33.5m下のニュートリノの前置検出器を覗き込む。
【1日目】中性子・ミュオンの基礎から実験手法に至るまで、国内外の講師が熱血講義
【2日目】参加者に腕を組ませ、表層と中間層の安定性の違いを講義。
茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設(J-PARC)※の物質・生命科学実験施設(MLF)は、21本の中性子ビームライン(BL)と4本のミュオンBLがある大型実験施設です。このたびJ-PARCセンターと一般財団法人総合科学研究機構(CROSS)はMLFにおいて、人材育成とユーザー獲得を目標に、日本中性子科学会・日本中間子科学会など国内11組織と共催で、『第4回中性子・ミュオンスクール及びMIRAI PhD School 2019』を10月28日から11月2日の6日間にかけて開催しました。
今回は、日本・スウェーデン 国際学術コンソーシアム MIRAIプロジェクトの「MIRAI PhD School 2019」と共同開催だったこともあり、日本を含むアジア・ヨーロッパ各国から41名の大学院生や若手研究者が参加し、講義や実験装置を用いた実習を通じて中性子科学、ミュオン科学の理解と知識を深めました。
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【4日目】BL18 千手での実習の様子。「この先端に試料を接着剤で付けます」
■6日間で成長!
初日から3日目までは、中性子・ミュオンに関する講義などが行われ、中性子・ミュオンの基礎から実験手法に至るまで、国内外の講師に丁寧に講義していただきました。2日目の午後にはJ-PARCを見学し、MLF以外の施設で行われているハドロン実験やニュートリノ実験についても理解を深めました。4日目、5日目は実習として、J-PARC MLFにある実際の中性子装置(10台)及びミュオン装置(2台)を用いて装置担当者から実習を受けました。最終日は実習した内容をグループごとに発表する会がありました。
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【2日目】J-PARC見学の様子。33.5m下のニュートリノの前置検出器を覗き込む。
スクールはすべて英語で進められました。海外からの参加者は博士課程の学生やポスドクが多いのに対し、日本人の参加者は大学院修士課程に所属する学生が多かったので、英語でのコミュニケーションで苦労する姿が見られました。自己紹介ではぎこちない英語で自分の研究の説明をしたり、予め原稿を書いてそれを読み上げたりする日本人参加者もいました。成果発表会前日の練習時にも「もっと英語を練習しないといけない」と漏らしていました。
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【2日目】参加者に腕を組ませ、表層と中間層の安定性の違いを講義。
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【3日目】ポスターセッションでは参加者同士がお互いの研究分野について説明し合った
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【4日目】ミュオンS1での実習の様子。試料を取り付けた冷凍機をS1装置に挿入。
しかし成果発表会では、他のメンバーより多くのトピックを発表したり、前日の練習時とは別人のような流暢な英語で発表したりする日本人参加者の姿がありました。参加者の一人は「緊張しなかったのでうまく発表できた」と振り返り、6日間のスクールで成長した姿が見られました。
■プレゼンテーション賞を目指して!
参加者の専門分野は、生命科学や機能性材料から文化遺産の鑑定など多岐にわたりました。ビーム停止期間中なので実習装置で実際の実験はできませんでしたが、4日目、5日目は実習装置グループごとにそれぞれの経験を活かし、データ解析や成果発表会の資料作成を協力して行いました。参加者、講師、実習担当者などスタッフ全員の投票により、プレゼンテーション賞は1位から3位まで決まるため、どのグループも真剣に取り組んでいました。最終日の発表では、講義及び実習で学んだ内容を分かりやすく他の参加者へ説明していました。投票の結果、栄えあるプレゼンテーション賞1位にはミュオンのS1グループ、2位は中性子のBL01グループ、3位は同じく中性子のBL18グループが輝きました。
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【6日目】プレゼンテーション1位に輝いたミュオンS1の発表の様子。
スクール全体の取りまとめをしたCROSSの大石 一城氏は「今回初めてMIRAIと共催となり、スウェーデンの大学から4名の講師に参加いただきました。うち2名の方は全日程スクールに参加して、参加者と交流を図っていました。スクール期間中、参加者同士が交流を深めることはもちろん、参加者が講師と議論する機会を多く設けることも大切だと感じました。また次回に生かしていきたいです。」と話しました。
J-PARC MLFで実験するには半年に一度の課題公募に応募する必要があります。スクール期間中はちょうど2020A期の公募期間中に当たりました。成果発表中、BL18グループへの参加者が課題公募への応募を表明するなど、ユーザー獲得にも繋がったスクールとなりました。今回のスクールがきっかけとなり、参加者の誰かがJ-PARC MLFでの実験を元に、世界を一変させる革新的な発見や発明をする日が来るかも知れません。
※大強度陽子加速器施設 J-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)は、宇宙・物質の起源、生命の謎などに迫る研究を進める最先端の大型実験施設です。ほぼ光速まで加速した世界屈指の大強度陽子ビームを用いて、中性子、ミュオン、ニュートリノ、K中間子などの多彩な二次粒子ビームを作り出し、多種多様な実験を推進しています。世界でも屈指の大強度の陽子加速器施設であるため、国際協力はもとより、将来の研究者・技術者を育成する目的で国際貢献も行っています。このうち物質・生命科学実験施設(MLF)には、21本の中性子ビームライン(BL)と4本のミュオンBLがあります。
http://j-parc.jp/c/index.html
情報提供元: @Press