【ロンドン時事】ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナへの支援に熱心なジョンソン英首相が7日に辞意表明したことを受け、英政府の対ウクライナ政策に影響が及ぶ可能性がある。ジョンソン氏はゼレンスキー・ウクライナ大統領と個人的な関係を築き、欧米の対ロシア制裁や武器供与で主導的役割を担った。「ジョンソン後」も支援は続く見込みだが、首相交代により政府方針に微妙な差異が生じるのは避けられない。 辞意表明後、ゼレンスキー大統領は通信アプリで「ウクライナ人全員が悲しんでいる」と表明。英国のこれまでの支援に「特別な謝意」を表した上で、今後も同様の関与を継続するよう望むとし、欧米首脳の中でも特に支援に熱心だったジョンソン氏の退陣を惜しんだ。 ジョンソン氏は4月、先進7カ国(G7)首脳で最初に侵攻後のウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問。ロシア軍が周辺から部隊を撤収させたばかりで、戦禍の生々しい市内をゼレンスキー氏と歩く姿は英国の「揺るぎない」(ジョンソン氏)連帯の姿勢を印象付けた。同氏は6月にもキーウを再訪。軍事支援強化を強く呼び掛け、英国内でウクライナ兵の訓練を施すなど積極関与を続けてきた。 しかしジョンソン氏は秋までに首相の座を去る。有力後継候補に挙がっているのはモーダント通商政策担当国務相、スナク前財務相、トラス外相ら。ロシアに厳しい姿勢を取るトラス氏が後任に就けば、それまでの方針がある程度踏襲されるとみられるが、他の候補者たちのスタンスは不明だ。有力候補の一人とされ、ジョンソン氏と共にウクライナ支援に携わってきたウォレス国防相は9日、「現在の任務に集中する」として与党保守党党首選への不出馬を表明した。 ウクライナのメディア「キーウ・インディペンデント」は、「ジョンソン氏が提示してきたウクライナ関連のイニシアチブの多くにブレーキがかかる可能性がある」とする地元専門家の見方を伝えた。 【時事通信社】 〔写真説明〕ウクライナのゼレンスキー大統領(右)と首都キーウ(キエフ)市内を歩くジョンソン英首相=4月9日(ウクライナ政府公表)(AFP時事)