世界には、さまざまな種類の刺繍が存在します。国や時代ごとに異なる表現が編み出されてきた刺繍はどれも美しく、見ているだけでとても楽しいです。

今回は、そんな刺繍の中から、古来よりインドに伝わる伝統的な技法「ザリ刺繍」をご紹介します。

世界の刺繍から、その国の歴史や文化を紐解いていきましょう。

ザリ刺繍とはどんな刺繍?特徴と刺し方

ザリ刺繍は、インドに伝わる伝統的な手工芸です。

刺繍枠にピンと張った張った布に対して、釣り針のような少し変わった専用の刺繍針を動かすことで、コイル状のきらびやかなモール糸やカラフルな刺繍糸を縫いつけていきます。植物の蔦が絡まったような繊細な模様のほかに、花や鳥といったモチーフを刺繍することもあるそうです。

刺した模様には、さらに美しいビーズやスパンコールを縫い付け、よりゴージャスに華やかに仕立てていきます。かつて、インドで宮廷文化が栄えていた頃には、真珠や宝石といった高価なパーツや本物の貴金属、さらに美しい色をした甲虫の羽などが使われていました。金糸やモール糸も本物の純金や純銀が使われていたというから驚きですよね。

シルクやサテン、ベルベッドなどの高級感漂う布を使い、完成したらサリーやレヘンガをはじめとするインドの伝統衣装やウェディングドレスなどに仕立てられます。

フランス刺繍やリボン刺繍とは雰囲気の異なるエキゾチックなデザインと、マハラジャを思わせる豪華絢爛な仕上がりが魅力のザリ刺繍。ここからは、発祥地や歴史をさらに詳しく見ていきましょう。

ザリ刺繍を学ぶには?

ザリ刺繍を学ぶには、どうしたらいいのでしょうか?ザリ刺繍には、以下の道具が必要です。

  • 大きめの木の枠
  • シルクやベルベットなどの布
  • ザリ刺繍針
  • 金糸
  • 色とりどりのシルク糸
  • ビーズやスパンコール
  • ハサミ
  • 図案を写すための道具

針が指に刺さってしまう危険があるため、初心者がトライするには少し難しいようです。ザリ刺繍を教えているお教室はほとんど見かけませんが、インドの刺繍に興味がある方は「インド刺繍」「アリワーク」などで検索すると、学ぶ手掛かりが見つかるかもしれません。

専用の針はなかなか売っていませんが、普通の刺繍針で代用してモール糸やビーズを布に縫い止めれば、ザリ刺繍風の作品を作ることもできますよ。

ザリ刺繍が有名な地域

インドの伝統手工芸として知られるザリ刺繍ですが、もともとはペルシアが発祥の地でした。ザリ刺繍に似たエキゾチックな模様が素敵なペルシャ絨毯が有名なペルシアは、現在のイランに位置した国です。

日本ではザリ刺繍と呼ばれることが多いですが、現地で呼ばれる「ザルドジ(zardozi)」という名称は「金」を意味するペルシア語「zar」と「刺繍」を意味するペルシア語「dozi」を組み合わせたものだそうです。金ピカのザリ刺繍にぴったりの名称ですね。

ペルシアで生まれたザリ刺繍はその後、南アジアのパキスタンや中央アジアのタジキスタン、ウズベキスタンといったイスラム教国で広まりました。そうして16世紀後半、同じ宗教を信仰する国の繋がりでイスラム教国のムガル帝国(現在のインド)にへもたらされたのです。

現在では、インドのマディヤプラデーシュ州の都市ウジャインやウッタルプラデーシュ州最大の都市のラクナウ、グジャラート州、などにある工房が有名で、代表的な産地として知られています。

ザリ刺繍の歴史

華やかで贅沢なザリ刺繍は、当時の権力者たちからもとても愛されました。

かつて、インドの地に位置したムガル帝国には、マハラジャと呼ばれる統治者が存在しました。日本では、バブル期を象徴するディスコの名前として聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

そんなマハラジャたちが好んで身につけたのが、贅沢な作りのザリ刺繍です。金や宝石を全身に纏うだなんて、よほど裕福な人しかできませんよね。こうして、マハラジャたちは自分の人気や権力の強さを示すためにも豪華なザリ刺繍を利用したのです。

さらに、衣装だけでなく宮廷内の装飾品やインテリアをにもザリ刺繍を施しました。馬や象に乗る際に使われる道具にも刺繍が施されていたそうで、そのこだわりには驚かされます。当時の宮廷には、金銀や宝石が溢れかえっていたということですね。

19世紀、イギリスの植民地になったムガル帝国は、ヴィクトリア女王を皇帝とするイギリス領インド帝国へと変貌を遂げます。そうして、ちょうどその頃にイギリスで始まった産業革命の煽りを受けることとなりました。

科学技術の発展で機能的なものをより安価に大量生産できるようになった世の中では、これまで裕福な人しか楽しめなかったファッションやアートがどんどん大衆化していきました。かつて栄華を極めたマハラジャも権力を失い、高価なパーツや貴金属、人件費にお金をかけられなくなったため、贅沢で手間のかかるザリ刺繍も衰退するかと思われました。

しかし、金や宝石をビーズやスパンコールなどの手に入りやすい素材に置き換えることによって、ザリ刺繍は一般にも普及し、私たちにも手が届きやすい品へと進化していったのです。

インドで愛される伝統技法ザリ刺繍

かつては宮廷に住むような特権階級の人しか身につけることができなかったザリ刺繍ですが、現在では日本でもストラップやポーチ、ブローチなどの小物を購入することができます。本物の貴金属や宝石が使われた刺繍ももちろん憧れますが、こんなにも贅沢な歴史ある刺繍をリーズナブルに身につけることができるだなんてロマンティックですよね。

キラキラとしたデザインのザリ刺繍はインドの都市部に住むおしゃれな女性たちにも人気があり、現在も技術を継承した職人の方々が手作業で作品を作っているそうですよ。豪華な刺繍が施された洋服は取り扱いが難しいですが、ポーチやバッグなどの小物をを持つだけでも、ちょっとしたマハラジャ気分が味わえるかもしれません♡

古くからインドの貴族マハラジャに愛された、伝統的なザリ刺繍の魅力はお伝えできましたでしょうか?エキゾチックで気品溢れるザリ刺繍、興味がある方はぜひ挑戦してみてくださいね。


karin

余暇プランナー

針仕事をしながらお茶を飲むのが日々の癒し。 ビーズやスパンコールでキラキラなフランスのオートクチュール刺繍に魅せられて、そこからリボン刺繍やフランス刺繍にも手を出し…、手芸用品を見るとついつい財布の紐が緩んでしまうのが悩みの今日この頃。 不器用でも初心者でもハンドメイドを楽しめる、そんな記事を発信していきたいと思っております!

【ハンドメイド】インドの伝統的な技法「ザリ刺繍」って?歴史や特徴をご紹介~世界の刺繍~

情報提供元: YOKKA
記事名:「 【ハンドメイド】インドの伝統的な技法「ザリ刺繍」って?歴史や特徴をご紹介~世界の刺繍~