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川村元気監督、二宮和也主演で大ヒットゲームを実写映画化。 5月のカンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ミッドナイト・スクリーニング」部門では2300人の喝采を浴びるなど、今世界中で公開が待ち望まれている映画「8番出口」。8月29日の公開を前にした取材会で、二宮さんが映画の魅力と製作エピソードを語ってくれました。
「異変を見逃さないこと」「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」「8番出口から、外にでること」。謎の地下通路に迷い込み、壁に掲示された奇妙な「ご案内」を見つけた男は、出口を目指して次々と現れる”異変”を探し始める……。
2023年にインディーゲームクリエイターのKOTAKE CREATE氏が制作し、世界的大ヒットを記録した”異変”探し無限ループゲーム「8番出口」が実写映画化。その情報解禁とともに「物語のないゲームをどうやって映画に!?」と大きな話題を集めた本作。出演は“迷う男”に二宮和也、スーツ姿の”歩く男”に河内大和、小松菜奈ほか。今年5月に開催された第78回カンヌ国際映画祭において、独創的で常識を覆す作品が集まる「ミッドナイト・スクリーニング」部門に選出され、2300人からスタンディングオベーションを受けたことでさらなる話題に。現在30以上の国と地域で公開が決定するなど、いま世界中で最も公開が待ち望まれている日本映画と言えるでしょう。
二宮さんが演じるのは、無限の地下回廊に迷い込む“迷う男”。今回初めて脚本づくりから参加した二宮さんは「原作を知る人が多いほど、どんなものなのかわからない作品。だからこそ、映画としてどう成立させるかすごく興味があった」と振り返ります。
「最初に企画を聞いたとき、伝えたいことが一通りある映画だと感じて。出演者はほとんど僕一人で、見た目(風景)もループして変わらない。僕(主人公)が成立しないと成り立たない作品だと感じたんです。そのため、監督ほか少人数のスタッフで一つの”出口”を目指して進めるように、脚本から参加するというかたちを選びました」
監督・脚本は、「告白」「君の名は。」「怪物」など数々のヒット作を製作し、2022年の初監督作「百花」で第70回サン・セバスティアン国際映画祭の最優秀監督賞を受賞した川村元気氏。約2カ月間の撮影では、基本的にさまざまな”異変”ごとにパートに分けて撮影を行い、監督と少人数の撮影スタッフで意見を交わしながら進めたそうです。
「毎回異変のテーマが与えられて、みんなで何をするかを話し合って。物語のなかでどのように”波”を作るか、観る人が引き込まれるような展開を作れるか、何度も試行錯誤していましたね。日々台本が現場で変わっていくから、途中からみんな台本を読まなくなって(笑)。”新しいものを作っている”という感覚と楽しさがありました」
例えば映画の中盤で、無機質な”迷う男”が自分の感情を吐露するシーン。実は最初の台本にはないシーンだったのですが、現場で二宮さんが提案し、急遽小松菜奈さんを呼んで演じてもらったのだそう。こうした試みが観る者の心を揺さぶる”波”となり、強い印象を残しているのです。
さらに独自の世界観へ観客を引き込むのが、二宮さんの等身大の演技です。登場人物の名前や心理描写もほぼない脚本を前に、二宮さんは”迷う男”をどう捉え、どう演じたのでしょうか?
「すべての登場人物に名前がなく、僕は主役がいない作品だと思っていて。(主人公の)心情を深掘りするよりも、すべての登場人物を並列に捉えて、どう展開を作って全体が面白くするかをずっと考えていた気がします」。ほぼ一人の演技に最初は戸惑ったものの、自分の判断で”間”や展開を仕掛けられる良さに気づき、逆に数少ない共演シーンでは空気感の違いに戸惑うことも。「対人の芝居ってこんなに難しいんだと、改めて気づきました(笑)」と振り返りました。
また撮影で苦労した点を聞かれると、”タイミング合わせ”と答えた二宮さん。”歩く男”の河内さんとすれ違うタイミングを何度も合わせたり、次々と異変を出現させるタイミングにスタッフ全員で苦戦したエピソードを披露し、「恐ろしいほどのリテイクだった」と苦笑いも。
こうした一分一秒のこだわりが、独自の緊張感を際立たせ、まるで観客が地下通路に迷い込み、能動的に異変探しに参加するような、新しい映画体験を作り出していると言えるでしょう。
完成した映画は、カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ミッドナイト・スクリーニング」部門に選出され、海外の大手メディアからも絶賛されたことも話題に。二宮さんにとって初参加となったカンヌの感想を聞かれると、「スタッフの皆さんが喜んで興奮している姿を見て、手ごたえを感じました。全世界そして日本からも多くの作品が集まるなか、深夜の上映にも関わらず、尖ったものや映画が好きな人たちが観てくれて、拍手をいただいて。この特色ある映画がわかっていただけたのかなと感じて、嬉しかったですね」と、感慨深い表情を見せました。
撮影では約2カ月間に渡り、地下通路を彷徨っていたという二宮さん。普段から地下鉄を使うことはあるか?という質問に対し、「若手時代から移動によく電車やバスを使っていて、今でも現場や劇場に行くときに地下鉄を使うことがあります」と意外なコメント。複雑に路線が入り組む日本の地下鉄は、「今でも時々迷ってしまう」のだそうです。
「初めて行く場所、改修されて様変わりしている場所、どこ行っても同じような(風景の)場所、それこそ”異変”みたいな変わった出口があったり..。今回やってみて、改めて日本の地下通路と映画の世界観には共通するところがあると感じています」とコメント。同時に初めて足を踏み入れる場所にワクワクしたり、昔よく使っていた駅や出口を通って当時を思い出すなど、二宮さんにとってさまざまな記憶や感情にリンクしている存在でもあると話してくれました。
まるで迷路のようなありふれた地下通路は、先が見えない時代に不安を抱えて迷い、日々多くの選択に迫られる、そんな現代人の姿を映しているのかもしれません。映画を観たあとは、日常のありふれた地下鉄の景色も、違って見えてくるかも…?
映画「8番出口」は、8月29日(金)から公開。
データ
「8番出口」
原作:KOTAKE CREATE「8番出口」
配給:東宝
監督:川村元気
脚本:平瀬謙太朗、川村元気
音楽:Yasutaka Nakata (CAPSULE)、網守将平
キャスト: 二宮和也、河内大和、浅沼成、花瀬琴音、小松菜奈
脚本協力:二宮和也
公開:2025年8月29日(金)
©2025 映画「8番出口」製作委員会
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