日頃から健康を意識している方は、食事内容や方法を見直すといった、食から健康へアプローチすることを実践している方も多いかもしれません。この連載では、中国生まれの東洋医学のメソッドが入った「食養生」について、実際にその知識を取り入れている筆者が、基礎知識や効果についてご紹介します。第3回は、食養生の基本メソッド「身土不二」についての解説です。
「身土不二」とは
ようやく梅雨が明け、太陽がさんさんと照る真夏がやってきました。皆さんは、暑い夏に熱燗に根菜たっぷりのグツグツ煮込んだお鍋や、体が温まるコトコト煮込んだシチュー、熱々のチーズフォンデュが食べたい!と思いますか?あるいは、グラスまでひんやり冷えたビールに枝豆、氷が載っている冷たい麺類や焼きとうもろこしにスイカでしょうか?
筆者はお酒が飲めないので、冷えた麦茶に実家の畑で採れたトマトやキュウリなどの夏野菜を、冷たい川の水へくぐらせてバリッと丸かじりしたいと思っています。
食養生では、住んでいる(生まれ育った)土地で採れる季節の食べ物を食べることが健康に良いという考え方「身土不二」があります。その語源は、「身」(今までの行為)と「土」(身の拠り所としている環境)とは切り離せないという仏教用語です。
私たちが暑い季節に冬のメニューを食べたいと思わないのは、体が余計に火照ってしまうのと、その食事から摂れる栄養を今は欲していないためともいえます。反対に、寒い土地に住んでいるのに熱帯のフルーツを食べ続けることも体の熱を奪うことになってしまいます。
食養生の教えにも活用されている中国発祥の「東洋医学」では、汗は心臓から作られるという考えから、汗をよくかく夏は心臓や血液循環器系に負担がかかりやすいとされます。
その対処法として、血液に栄養を与え、五臓の「心」の機能を高めるために、目にも鮮やかな緑黄色野菜のなかでも特に「赤」色の野菜やマグロ、カツオ、牛肉、豚肉(赤身)などをいただくことを推奨しています。また、冷房による夏風邪や冷えを感じた際は、ネギや生姜で体を温めて、体を冷やす食材を控えるようにといいます。
生命の科学といわれるインド生まれのアーユルヴェーダでも、夏が最も胃腸の働き(アグニの炎)が弱くなり、体を冷やす食べ物ばかりを食べ続けていると消化力が落ちてお腹を壊しやすくなるとされているため、注意が必要です。
第1回でもご紹介したように、食養生が大切にすべき順番は【心→太陽→空気(呼吸)→水→食】です。食養生、東洋医学、アーユルヴェーダの3つには、共通する点もあれば異なる点もあります。食養生では心の健康が最も重要とされていますが、興味が湧いたり、すぐ実践できそうと思ったものからどうぞ優先して生活に取り入れてみてくださいね。
夏野菜をたくさんいただいたらその日食べない分はぬか床へ
夏になると、苦くなったキュウリにシワシワのカブなど、いつぞやの忘れられた旬の野菜が冷蔵庫の隅に転がっている…なんてことはありませんか?お手軽保存法として筆者がオススメするのはぬか漬けです。
ぬか床にお野菜を適当に漬けておくだけで保存にもなり、ビタミンB群、A、Eがアップして女性には嬉しい美肌効果が期待できます。さらに、ぬか床に含まれる植物性乳酸菌を餌にして腸内環境を整える善玉菌が増えるので、お通じ改善にも効果的。発酵食品になることで体を温める作用が加わる野菜もあります。
筆者もみずみずしさが失われてしまい、あまり食べたくないなと思ったお野菜を何度も無駄にしてしまったことがあります。近頃は手軽にぬか床を入手できるようになりました。日本伝統のぬか漬けにすることで食品ロスを減らしつつ、皆さんが住む場所で採れた旬の食材が持つ栄養や自然の恵みをありがたくいただいみてはいかがでしょう。
次回の記事では、現代の食養生についてご紹介します。
情報提供元: Tonoel