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9月は防災への意識を高める月として、全国でさまざまな取り組みが行われています。その一環として、ペットと人が共に安心して避難できる社会を目指す「ペット防災カレンダー2026」の配布が始まりました。
このカレンダーは、ペットを飼っている人だけでなく、飼っていない人にとっても災害時にどう備えるかを考えるきっかけになるよう工夫されています。生活の中で自然と防災を意識できるよう、各ページに情報やヒントが盛り込まれているのが特徴です。
今年は企業スポンサーの協力により2万部が無料で配布され、さらにクラウドファンディングを活用して合計5万世帯への配布を目指しています。単なるカレンダーではなく「家庭に防災を根付かせるツール」として、多くの家庭で役立てられることが期待されています。
2024年1月に発生した能登半島地震では、ペットがいるため避難所に入れず、自宅の納屋で避難生活を送っていた方が火災に巻き込まれて亡くなるという痛ましい出来事がありました。大きな災害のたびに、ペットと共に避難する難しさが浮き彫りになっています。
日本は地震や台風、洪水など自然災害が多発する国でありながら、避難所でペットを受け入れる体制は十分に整っていません。アレルギーや騒音、衛生面への懸念から断られてしまうこともあり、結果として飼い主が避難をためらうケースも少なくありません。
こうした現実は「人とペットの命をどちらも守るにはどうしたらよいか」という問いを私たちに突きつけています。その答えのひとつが、ペット同行避難を可能にする「動物避難所」の整備や、平時からの情報共有にあります。災害は避けられませんが、備えと仕組みがあれば守れる命は増やせます。
2026年版のペット防災カレンダーには、地域の防災イベントや学校で活用できるよう、ワークショップ形式のプログラムが盛り込まれています。防災を“知識”として知るだけでなく、実際に考え、話し合いながら身につけられる内容になっています。
これまで累計で19万部が発行され、10を超える自治体や150以上の企業、さらに3,600人を超える個人の協力を得てきた実績があります。こうした積み重ねが、多くの家庭に「ペット防災」を広めてきました。今回の2026年版は、その経験をもとにさらに実用性を高めた形となっており、防災を自分ごととして考えるきっかけになることが期待されています。
理事長の奥田順之さんは「ペットを理由に避難できず命を落とす事故をなくすために、行政や地域と連携し、ペット同行避難が当たり前になる社会を作っていきたい」と話しています。日常に防災意識を取り入れるためのカレンダーは、その思いを形にした取り組みの一つといえます。
防災の取り組みは、行政や団体だけでなく、一人ひとりの参加があってこそ力を発揮します。その思いを形にするため、9月10日には「ペット防災」に協力してくれる人を募る説明会が開催されます。
この説明会では、カレンダーの活用方法や防災の取り組みにどのように関わることができるのかが紹介される予定です。個人として参加できる方法、企業や団体として協力できる形など、多様な関わり方が用意されています。平時から備えを分かち合い、災害時にスムーズな支援につなげることが狙いです。
ペットを飼っている人もそうでない人も、防災に関心があれば誰でも参加できる活動です。人と動物が共に命を守れる社会をつくるために、協力の輪を広げていくきっかけとなりそうです。
ペットを理由に避難をためらい、命を落としてしまう悲しい出来事を繰り返さないためには、社会全体での意識の共有が欠かせません。ペット防災カレンダーは、毎日の生活の中で自然と「備えること」を思い出させてくれる存在です。
災害大国といわれる日本に暮らす私たちにとって、防災は特別なことではなく日常に取り入れるべき習慣です。人と動物が共に安心して過ごせる社会を目指す活動は、誰もが自分の身近な問題として向き合えるテーマではないでしょうか。
9月の防災月間は、その第一歩を考える良い機会です。カレンダーを手に取ることが、家族とペット、そして地域の安全を守るきっかけになるかもしれません。